第40話 見えて来たのは……

「あっ……」


 目を閉じて、ゆっくりと静かに深呼吸を繰り返して来たフォミィが、突然、声を上げた。


 やっと、何か、反応が有ったのか?


 いきなり、生まれて来た目的を知るのを通り越して、運命の相手とか見えて無いといいが……

 もしも、その相手が、まさかと思うが、フォミィの元婚約者であるノアシーの夫という人物だったら、この先どう考えても修羅場が待っていそうだからな。


「フォミィさん、何かヒントのようなものが見えましたか?」


 僕の声が、自分でもしくじったように感じられるほど、知りたい衝動を丸出しの勢いだったように感じられる。

 こんな調子で尋ねていると、せっかく話に乗って来たフォミィに、ふざけているように感じられて、見えて来たものを偽られる可能性が有る!

 

 くれぐれも慎重に、慎重に……


「これが、生まれて来た目的なのか、分からないですが……、何だかぼんやりと暖かそうな雰囲気が感じられます」


 ぼんやりと暖かそうな雰囲気……?

 それは、また随分とまあ抽象的な……


「その調子です! 良い傾向です! そのまま深呼吸を続けて下さい!」


 本当に、良い傾向なのかは分からないが……

 取り敢えず、何も見えない所からのそのぼんやりでも、かなりの進歩だと受け止めねば!

 

 生まれて来た目的を知るというのは、そんなに難しい事だったのだろうか?

 他の対象者達は、難無くこなしていたというのに……


 僕自身が能力者だから、自分には試す事が出来ないが、こうして目を閉じて、深呼吸しているうちに、ビジョンが浮かんで来るはずなんだ……


 あれっ……!

 

 確かに、漠然としているけど、何か暖かそうな気配の人だかりが見えている!

 これは、フォミィの見えているビジョンを僕に転写させたものなのだろうか?

 

「あっ、さっきのが、だんだんとハッキリして来たような感じです。よく見ると、人が集まっています! 沢山の人々がいます! 皆、笑顔で……」


 沢山の人々……

 やっぱりそうだ!

 僕に見えているビジョンでも、人々が皆、笑っている……


 不思議だが、やっぱり、フォミィの見えているものが、僕にもシンクロして見えているような気がしてならない。

 今まで、こんな状態を体験した事など無かったというのに、いつの間に、僕は、そんな能力を習得出来たんだ?


 フォミィとの一件が試練となって、それをクリアしつつある今だから、僕自身のの威力がレベルアッフさせてもらえたのだろうか?

 

 それとも……


 この現象は、まさか、フォミィによるものだろうか?

 だとしたら、フォミィは、もしかして、隠れ能力者……?

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