第37話 フォミィの揺らぎの理由

 フォミィは、どういう気持ちで臨んでいるんだろう?


 いきなり話に割り込んで来たノアシーへの当てつけのつもりだろうか?

 それとも、お花を持参して、再度、フォミィ宅へ足を運んだ僕への……同情心?


「フォミィさん、先ほども話した通り、ご本人が本当に同意していない場合には、知る事は出来ませんが……」


「私は……ちゃんと望んでいます! だから、ラーニさん、よろしくお願いします!」


 頭をペコリと下げたフォミィ。


 彼女の決意は、思ったより堅いらしい……

 だとしたら、彼女は一体、何に対して気後れしているのろう?


 何度も、意思を確認するのは、フォミィに対して失礼にあたるから、取り敢えず、気が変わらないうちに施行してみよう。


「それでは、まず、フォミィさんには出来るだけリラックスしてもらいたいので、ここで立ち話というのも……」


 ノアシーの元から2人で走り去って来た時のまま、僕達はまだ道端で立ち尽くしていた。


「そう言われてみれば、そうですね。どこか、この辺りに座れるような所は無いかしら?」


「喫茶店でしたら、そこの角を曲がると有るのですが、やはり、内容が内容で、とても個人的な事なので、フォミィさんは、周りに聞かれたくないですよね?」


 僕としても、周りに過去の対象者カップルや、これから対象者になりかねないような人々がいるような場所は、極力避けなくてはならない。


「ええ、もちろん、知られたくないです……」


 フォミィも同意を示し、ホッとした。


「でしたら、この先、歩いて少しの公園はいかがでしょう? 僕もたまに休憩時間などに、一人で羽を伸ばす所なんです」


「公園ですか……いいですよ。そこにしましょう」


 良かった……

 フォミィが、虫とかいるとイヤだからと室内限定してきたら、またノアシーの待つ家に戻るしかなくなる。

 僕の家に、対象者を連れ込む事は御法度で、バレた時にはクビにされてしまう!

 

 お昼前の公園には、人手も少なく、ちょうど日差しが木の陰で防いでいるベンチが開いていた。


「ここで、よろしいですか?」


「あっ、はい」


 仕事の時に、レディファーストは特に大事だ。

 フォミィが腰を下ろしたのを確認してから、僕は、人が一人座れるような距離を開けて座った。


「ここなら、周りは小鳥達くらいしかいないので、話しても聞かれる心配はありません」


「そうですね。小鳥達は、誰にも告げ口はしませんから、安心ですね」


 気を遣ってスペースを開けたつもりでいても、僕が横に座った事で、少し体が強張ったようになっているフォミィ。

 やはり、彼女の警戒心を解くのは容易では無さそうだ。

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