第35話 フォミィの言い分

 ノアシーとフォミィの姉妹は、何だか、妙に癖が強く、僕にとって対象者としては、この上なくやり難い人材だったが……

 ノアシーに元婚約者を取られたフォミィの気持ちになってみると、今まで見せられてきた恋愛面への嫌悪感のような振る舞いも納得させられる。


 だが、そんなトラウマを抱えたフォミィをどうやったらカップリングにまで、上手く誘導できるだろう……?

 そんなトラウマが有る対象者を担当した事が無いから、どう説得すると頷いてもらえるのか、見当も付かない……


 いや、そんな風に弱気になったら、僕の不慣れさをフォミィに勘付かれ、せっかくの528hz音声も役に立たなくなる!

 あまり気を張らずに、自然に対応してゆかねば!


「あの通り、姉は、もしも私より先に、生まれて来た目的に遡って、本当の相手を知った途端、きっと今までの生活を捨てて、そこに飛び込もうとするような人だから……私は、そうさせたくなかったのです!」


 ノアシーが今までの生活を捨てるという事は、もしも、フォミィが、元婚約者に対し、未練をまだ抱いているとすると……

 彼女にとって、それは有る意味またと無いチャンスなのでは……?


「もしも、そうなった場合、フォミィさんは、元の婚約者の方とやり直したいという想いは有るのでしょうか?」


 そこをハッキリさせておかないと、前に進めない。

 質問しながら、その件をフォミィが否定してくるよう願わずにいられなかった……

 

 その願ってしまうのは、そのせいで、仕事がスムーズに行かなくなるから?

 それとも、僕の個人的な願いだろうか……?


「彼とは、終わってます! 私が、どんなに辛い想いをして乗り越えたかは、姉も元婚約者も知らないでしょうけど……だから、今更、その後釜を引き受けるつもりなんて、私にはありません!」


 今はそう言い切っても、もしも、この後、彼女の運命の相手が、彼だったと分かったら、フォミィは、その方向に流されて行くのだろうな……

 

 僕は決して、そうなる事を望んでいるわけではなく、むしろ、そうならないで欲しいのだが……

 これは、自分の希望が通じるような世界ではなくて、もっと複雑なんだ。


「でしたら、姪っ子さんが不幸にならない為にも、ノアシーさんと御主人には、そのままでいてもらいたいのですね。確認しますが、フォミィさん、あなたは、あなたの生まれて来た目的と、運命の相手を知る事を本当にお望みですね?」


 生まれて来た目的=運命の相手との出逢い


 となっている場合、カップリングは、他のパターンより成功率が高くなる。


 フォミィの場合は、どうだろう?

 ここまで来るまでも時間が随分費やされたのだから、これから先くらいはスムーズに行ってもらいたい気持ちも有るが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る