第32話 フォミィの反抗

 ノアシーが自分本位に僕が提供する順番を決めている時、フォミィはというと、姉に同意出来ずにいるような、微妙な表情を顔に浮かべていた。


 ノアシーが望むのは、カップリング以前の、僕の能力を使って、彼女の生まれる前に決めて来た目的を知るという事。

 それは、フォミィの為に使う取って置きの能力であり、残念ながら、僕の能力は無尽蔵に湧き上がって来るものではない!

 第一、複数に対し一度に影響を及ぼせるのは無理だと、少し前に悟らされたばかりだ。


 その能力を、自分の対象者であるフォミィの為ではなく、ノアシーに使用し、その後、運良くフォミィ自身も望んで来た場合は、どうする……?

 僕は、それを通常のように施行出来るのだろうか?


「カップリングではなく、対象者のフォミィさんよりも、ノアシーさんの施行を優先というご提案ですね……」


「そうよ! 自ら実験台に志願してあげるという、とっても有り難い申し出なんだから、ラーニさんは、もちろん、断ったりしないわよね?」


 当然の如く、僕にそれを実行するように強いて来るノアシー。


「いえ、あのですね……その申し出は確かに、大変有り難いものですが……申し上げにくいのですが、僕の能力は、そこまでけたものではないのです。つまりですね、ノアシーさんに施行後、フォミィさんにもというには、残念ながらパワー不足なんです」


「あらっ、そうなの? でも、まあ、構わないわ! ねっ、フォミィ? あなただって、私の様子を見てからの方が、断然安心でしょう? なんといっても、あなたはまだ嫁入り前の大事な身体なんだから!」


 嫁入り前の大事な……という事を毎度強調して来るノアシー。


「私は……お姉さん、ズルイわ! 私の話に乗っかって、自分で試そうとしているなんて! お姉さんは、いつもそう! 私に関するものに興味ばかリ持つの! ほらっ、ラーニさんも困っているじゃない!」


 フォミィが僕のサイドで反論してくれるのは、528hzの声の効果だろうか?

 それとも、それが彼女の本心……?


「えっ、そんな事は無いわよね? 別に、ラーニさんは、今日中に、全ての段取りを終わらせるとかっていう、せっかちな仕事をしたいわけでは無いのでしょう? だったら、時間かけて丁寧に対処すべきでしょう? どう考えたって、それには、それだけの価値の有る事なんだから!」


 ノアシーの言葉にぐうの音も出なくなる……


 自分としては自分の業績を優先させ、今までの対象者のように、さっさとカップリングを終えて退散し、次の対象者に移りたい気持ちも有るが……

 確かに、そんなに早急に事を進めては、フォミィにも、不信感しか抱かれない気がする……

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