第31話 フォミィを差し置いて

 話題がいつの間にか、対象者であるフォミィではなく、その姉であるノアシーに完全に移ってしまっている!


 もちろん、それに則って、ノアシーを味方に付けた方が、その後のフォミィに対しても話を進めやすくなる事くらい分かっている……

 

 だが、僕の今回の対象者はフォミィであり、ノアシーをカップリングに成功したところで、僕の業績には一切反映されない。

 それ以前に、既婚者のカップリングは、我が社では堅く禁じられている。


 ここで、ノアシーに対して良い顔を続けて、彼女のカップリングを期待させるわけにはいかない!

 僕の528hzの声によって、ここまで、ノアシーの理解を得られたのは有り難いが、丁重にお断りする方向へ話を持って行かねば!


「せっかくですが、ノアシーさんは既婚者ですので、当社では、カップリングをお引き受けする事が出来ないのです」


「既婚者はダメだったら、離婚した時点でOKって事なの?」


「お姉さん、縁起でも無い事を言わないで!」


 ノアシーの発言がエスカレートしている事に驚くフォミィ。

 ここで承諾したら、即、離婚しそうな勢いを感じられるノアシー!


 どうして、こんな流れになるんだ!!


 僕は、フォミィのカップリングが目的なだけで、ノアシーの家庭を壊すつもりなど全く無いというのに!


「いえ、あの……、子供を産める事が条件ですので」


 咄嗟にそう答えた後、ノアシーの表情の変化から失言だったと気付いた!


「えっ、何? 私が、もう子供を出産出来ないような身体だとでも言いたいの? すごく失礼じゃない?」


 ノアシーの剣幕に、気丈なはずのフォミィですら、目を丸くして困惑していた。


「申し訳ございません、答え間違えました! 初婚の男女のカップリングを最優先にしておりますので、それ以外の枠は、今のところ、我が社では設けておりません」


「初婚者オンリーって事なら、最初っからそう言ってよ~! でも、会社の方針と、あなたからの誠意というのは、別物と考えても良いのでしょう? 私だって、何も唐突に、カップリングして再婚なんて事は望んでいないわ! まずは、その生まれてくる前の目的を知るというのを私から試してみたいだけよ! そうしたら、その結果次第で、フォミィも便乗する事になるかも知れないし、それで、丸く収まるのでは?」


 あくまでも、自分を優先させる姿勢を崩さないノアシー。 

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