第30話 ノアシーの要望

 イヤな予感がする!


 僕の自慢の528hz声は、フォミィではなく、ノアシーに効果を発揮してしまったようだ!

 対象者としてフォミィを意識していたつもりが、ノアシーがあまりに頑なに反対する姿勢を崩さないから、ついノアシーの説得の方に意識が向いてしまっていた!

 今までそんな境遇になった事が無かったから分からなかったが、僕の能力は2人同時には、不可能らしい。


 フォミィに言って欲しかった発言をノアシーの口から出て来る事になるとは……!

 今回の仕事は、本当にとことんスムーズな展開から見放されているとしか思えない!


「フォミィも見ていて分かるでしょう? 今の私は、お世辞にも幸せそうに見えるなんて言えないでしょう?」


 今まで気付かなかったが、どうやら、ノアシーは今の生活に、かなり不満を抱えているらしい。

 そんな姉の様子を見ていたら、フォミィはますます結婚に対する憧れなんて抱き難いに違いない……


「まあ、お義兄さんに対しては……でも、メリエちゃんの成長が、楽しみな気持ちは有るでしょう?」


 お義兄さん……?

 ああ、きっと、仕事が忙し過ぎて、家庭を顧みないとか、仕事のふりして浮気しているとか、その辺りだろうな……

 身近な姉夫婦がそんな状況だったら、フォミィは、結婚相手の男性に対して、不信感を拭えないかも知れない。


 ただ、まだ小さいと思われる姪っ子に関しては、2人ともその成長過程を微笑ましく思っている感情は強い状態なのだろう。

 

「メリエは、私の大事な大事な天使だから! あの子がいなかったら、とっくに、我が家は崩壊していたわ!」


「どういう事情かは分かりませんが、もしかしたら、ご主人の行動も一時的なものかも知れないですし……」


 いつでも、ポジティブな提案をしなくてはならない立場の僕は、当たり障りのないような感じでアドバイスをしてみた。


「それは、どうかしらね! とにかく、私は、今の生活には失望しかないの! きっと、私の生まれる前に決めて来た相手は、今の主人とは別人だったに違いないわ! だから、出来る事なら、私だって出直したいわけよ!」


「えっ、お姉さん、出直すって……?」


 僕はもちろん、ノアシーのその気持ちに関しては、初耳だったファミィも驚いた!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る