第28話 言い訳にしかならなくても

 そんな感覚をこの御立腹状態のノアシーにどうやったら、分かってもらえるだろう?

 

 独身の男女がひとつ屋根の下で夜を明かすなんて事は、騒ぎ立てられても仕方の無い風潮だというのに……

 まして、その相手であるフォミィは、自分の今回の対象者という間柄だ。


 どんなに上手く説明しようとしても、ただの言い訳にしかならなそう。


「それは……つまり、フォミィさんが落ち着くまでと思っていたら、いつの間にか、朝になっていたというか……」


「何をバカな事を! 学生ならともかく、いい年して経験を積んだ社会人なのに、そのように単純過ぎる言い訳が通用すると思ってるの? 能力者達は卑怯なんだから、どうせ、最初っから、そういう下心丸出しで、妹に近付いたのでしょう?」


 下心丸出し……?

 とんでもない言いがかりだ!


 そりゃあ、僕だって、恋愛に全く関心が無いわけでは無いし、カップリングが成功して、幸せなカップルを目にしていると、羨ましい気持ちが募る事だって有る!


 だからって……

 一応、自分なりにパートナーに対する理想像みたいなものくらい有る!

 悪いが、フォミィは、自分の理想の相手からはかけ離れた外見と性格をしている!

 それなのに、僕の方から、危険を冒してアプローチする価値など、どこに有ると言うのだろう?


「それは決して有りません! 僕は、そういった下心を抱いて、仕事を口実にフォミィさんに接近したわけではありません! その事だけは断言できます!」


 僕の仰々しいくらいの否定で、せっかく庇おうとしてくれているフォミィの御機嫌を損ねないといいが……

 カチンとなって、ノアシーの側に付くような事になったら、僕は、こんな手強そうな女性2人を相手に、太刀打ち出来ないに違いないから。


「お姉さん、この人の言った事は、多分、本当だと思うわ! 第一、朝になるまで、私は、抱擁以外は何もされていなかったのだから。下心が有ったら、とっくに……」


 少し言い難そうな様子でフォミィが答えた。

 良かった!

 僕の発言で、ヘソを曲げていないようだ!


「そうね、下心が有ったなら、とっくに、フォミィは傷物になっていたかも知れないわね。でも、例え仕事上の特権利用したとしても、その抱擁自体が禁忌だって事くらい、あなたもラーニさんも、認識は有ったのでしょう?」


 フォミィが僕の側に付いた事で、ターゲットが僕だけではなく、フォミィにまで移ってしまった?

 これでは、言い難い事まで言ってもらったフォミィに対して、申し訳無い。

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