第27話 善意のつもりが……
「僕は、決して、そのような不純な動機で、フォミィさんを抱擁したわけではありません! ただ……」
「ただ……とは? 一体、どのような気持ちで、あのような行動を取ったのか説明してもらえますか?」
フォミィは、ノアシーの剣幕に圧倒されて、何か言いたそうだが、なかなか口を挟めずにいる様子。
「ハムスターを亡くして失意のフォミィさんが気の毒で、何か、自分が彼女のお役に立てたらという善意の行動でした……」
抱擁なんて行動に出るまでは、本当に、善意のつもりでいたんだ……
ただ、その行動を取った事によって、僕の中でフォミィに対する何かが覆されただけで……
そう、僕の心の中だけでだとぱかり思っていたけど……
フォミィの言動をみると、それは、僕の心だけの変化じゃないかも知れないなんて、つい期待してしまっている。
「お姉さん、多分、ローニさんの言っている事に偽りは無いと思います」
フォミィが、また庇ってくれた……
「また、この人を庇うの、フォミィ……?」
解せない様子で、フォミィを見たノアシー。
不思議なんだが、僕を庇うフォミィの言葉をどうして、こんなに嬉しく感じられるんだろう!
不覚にも、涙が溢れそうになるくらい……
フォミィの弁護と、そんな僕の様子を目にして、ノアシーもやっと表情を緩めた。
「分かったわよ! 取り敢えず、そういう事にしておきましょうか! でも、疑問はまだ有るわ!」
「どういった事でしょうか?」
ここにいるのが、フォミィだけなら彼女の許容しかいらないが、身内であるノアシーも同席している以上、2人から許容される必要が有る。
フォミィが僕の側に付いていそうだから、尚更、ノアシーはキツイ口調を続けて、隙あらば、僕の粗探しをしている。
こちらも、余計なお世話だと苛立つ気持ちや、これほどフォミィの身内から反感を買っている状態で、カップリングまで辿り着けるか不安になる気持ちをノアシーに悟られないように、慎重に事を進めて行かねば!
「あなたは、フォミィを抱擁したまま、朝までここに滞在していたそうではないですか! それは、一体どういうつもりでいるんですか? あなたの会社は、そんな風にして相手をそそのかしてまで、契約にこぎつける事を勧めているのですか?」
確かに……あの時、気付くと、もう翌朝を迎えていた。
自分が、これまで対象者宅で、夜を明かした事など一度たりとも無い!
対象者以外の女性宅でもだ!
僕は今まで、確実にとまではいかなくても、ある程度は時間の流れを認識しながら、生活が出来ていた。
それが、なぜか、あの時に限って、それが麻痺していたような、自分が自分で無いような感覚だった……
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