第21話 待っているべきか、否か……

 名刺を手渡していたが、あんな事が有って、フォミィから連絡が来るという自信は無かった。


 確かに、このタイミングでのハムスターの死は、僕に有利に働いてくれそうな気もしていたが……

 そんな風に、フォミィの逆境のタイミングを利用するのも、何だか気が進まなかった。


 この国では、喪に服すのは、個人差が有り、気が済むまで喪服を着ていても、公けの事に参加しなくても、誰一人、文句を言わない。

 ペットに関しても、人間の死と同等の弔いが必要な人々も大勢いた。

 

 フォミィの場合、あれほど執心だったのだから、きっと、他の動物愛好家達よりも、気持ちを持ち直すのに時間を要していても当然だ。

 

 問題は、そうして喪に服している期間が長ければ長いほど、その直前に訪れていた僕の話などは、遠くに行ってしまう可能性が有る事だ!


 あれからまだ数日しか経過していない今の時点でも、フォミィに覚えていてもらえている可能性は、かなり低いかも知れない。

 渡した名刺が、たまたま目に入ったとしても、僕の事を思い出せないかも知れない!


 ただ、こうしてフォミィからの連絡が来るのを待っていても、待てば待つほど、カップリングからは遠ざかっていくような気がしてならない!


 また、素知らぬふりして、僕の方から訪問すると良いだろうか?

 

 もう忘れてしまっているなら、それも有効かも知れない!

 

 ただ、前回の事を覚えられていた場合は、かなり気まずい!

 向こうからの連絡を待つと言って、僕は去ったのだから……


 それを待ち切れず、姿を現した場合、急かされていると思い、良い印象は無くなってしまう!

 

 いや……元々、フォミィは僕に対し、好印象が有ったのかすら、確信が出来ない……


 今までは、何もかもスムーズな展開しかなかった僕にとって、この待つという期間は、果てしなく長く不安に感じられる。

 この状態が、これからもずっと続くとしたら、もう辿り着くのは、絶望しかなくなりそうな気持ちにさえさせられている!


 ああ、どうすればいいんだ!!


 そんな時だった……

 電話の音が、会社に残った能力者達の注目を集めたのは……


「Rrrrrrrrr……」


 鳴っているのは、紛れもなく、僕の机の電話だった!


 もしや、フォミィからだろうか?

 期待で心臓が、バクバクと高鳴っている!


「はい、М&Bカンパニー、ラーニ・テサムンです!」


 周囲は、興味津々に聞き耳を立てていた。


「フォミィです……お話したい事が有ります……」

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