第20話 そんなイーマンですら……

 イーマンから聞いた内容の真偽は、フォミィをカップリング成功に導けなかった結果によって、憶測が付いていた。


「一般人社会を十分に謳歌していたイーマンでさえ、フォミィをカップリング出来なかったという敗因は、何だったと思う?」


 疑問を投げると、顔色を変えたイーマン。


「いや~、それは、だってさ~、対象者があのフォミィだろう?」


 それまで得意気だった話し方も、あからさまに自己弁護の口調に変わった。


 あのフォミィ……


 自慢の営業用の口説き文句でも、つれなかったからといって、フォミィを端から見下している態度だ。

 なぜか分からないが、そのイーマンの口調で、唐突に不快感が募って来るのを抑えられなかった。


「そんな風に言うな、イーマン! フォミィだって、哀しければ、普通に泣くし、周囲の人を頼ろうとする事だって有るんだから!」


 あの日、その直前までは、距離感の開きまくっていた言い方しかされなかった僕ですら……

 急に、呼び止められて、フォミィからあんな風に頼られたのだから!


 イーマンに不満をぶつけながら、フォミィの絹のように柔らかな髪の毛と、見た目よりも柔らかい体の感触が蘇って来た。


「何だよ~? 急に、フォミィのサイドに付きやがって! らしくないぞ~、ラーニ! あの女に、妙に感情移入しているが、さては、訪問時に何か有ったのか、フォミィと……」


「まあまあ、聞けよ、イーマン。こいつは、なんと職務中に、事もあろうに、フォミィを抱擁したんだぞ!」


 大袈裟な口調でワーサルが、イーマンを小突きながら伝えた。


「おお~っ! そんな、マジかよ~! あのフォミィなんかを抱擁するとは! お前、どれだけ女に飢えていたんだ~! フツーは選ぶだろう、相手を!」


 信じられない表情を浮かべ、蔑んだような目付きになったイーマン。


「君達は、フォミィをただのハムスターオタクの堅物かたぶつとしか知らないから、そんな事が言えるんだ!」


「そりゃあ、俺らは、フォミィに関して、それくらいのイメージしか抱きようが無いよ! 精一杯説得を試みても、あんな無下に断られて来たんだからな!」


 イーマンを弁護するように、ワーサルが言った。


「で、お前は、俺らと違って、彼女の何が分かったんだ? 抱擁だけしかしていないんだろう?」


 ワーサルを味方に付け、強気に言葉を返したイーマン。


「イーマンのように恋愛経験を沢山踏んでいなくたって、伝わって来る事だって有るんだ! ハムスターを亡くしたフォミィは、どこにでもいるような頼りなげな感じの女の子でしかないって」


にわかには信じ難いが……けど、なんだ、フォミィが逆境にいるなら、お前にとっては最大のチャンス到来じゃん!  この機会をものにしなくてはな!」


 ワーサルが激励するように、僕の背中をバシンと叩いて来た。

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