第17話 溜め息の理由
「はぁ~っ!」
ワーサルとイーマンから解放されて、しばらくして気が付くと、また溜め息を声ごと漏らしていた。
ヤバイ、しっかりしろ!
その溜め息は、少し離れた位置でPCを打ち込んでいた、ワーサルにも当然のように気付かれた。
「ラーニ、どうした? お前が、溜め息ばかり漏らしているなんて、今まで無かったような? よほど、フォミィとのやり取りで気持ちを削がれてしまったのか?」
PC作業を止めて、再び、椅子ごとラーニの方へ移動させたワーサル。
「気持ちを削がれたというか、持って行かれたというか……」
「持って行かれた……とは?」
予想外の返答に、ワーサルの目が大きく見開かれた。
「ワーサルは、女性を抱き締めた事って、有るか?」
ワーサルもモチロン、自分と同様、独身男性だ。
能力者という事で、結婚はもちろん、それに結び付く可能性が有る恋愛自体も、相手は、能力者女性だけに限られていた。
「憧れてはいるが、なかなかそういったチャンスは、訪れた事は無いんだな~!」
一見すると、僕に比べ明らかに、女性に手が早そうなワーサルですら、抱擁の経験が無かったとは……
何か、今後の参考になるかも知れないと思って、尋ねてみたが、無駄だった……
「そうか……そういうものだよな、僕にしたって、今までは……」
ここで、発言して良いものか、ためらわれた。
「今までは……? って事は、お前は、まさか経験済みって事なのか?」
「ああ、まあ、はずみのような感じで……」
そう、あれは、決して、あのタイミングを狙っていたわけではない!
ほんのはずみだったんだ!
「はずみとはいえ、抱擁を経験済みとは!! これまた、恐れ入ったな~!! 相手は誰なんだ? まさかと思うが、フォミィではないよな?」
有り得ないと思っている様な口調で一応、尋ねたようなワーサル。
「そのまさかで、フォミィなんだ。けど、本当にはずみってだけで……他の感情は、全然無いから!!」
慌てて、それを強調した。
「まあ、そりゃあ、はずみじゃなければ許されないだろう! 相手は、能力者女性どころか、今回の対象者なんだからな! 規則は、分かっているだろう?」
対象者に恋愛感情を抱かない!
対象者に恋愛感情を抱かせない!
それが、僕らの仕事の2大鉄則。
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