第9話 名刺の会社名

 僕の予想では、僕の名刺を渡した時点で、『はい、さよなら』のような流れだったが……

 フォミィのいぶかし気な顔付きを見ると、これは、名刺に記載されている事について、何か尋ねようとしている雰囲気。


 僕の名前……?


 いや、そうではなく、名前などは別にどんな名前であっても、彼女に気には止まらないだろうから、多分、という肩書についてだろうか?

 

 というと、いかにもかなり上級な能力の発動が出来るようで、表向きの聞こえが良いかも知れないが……

 実際には、その本人の能力レベルというより、ただ業績に比例しているだけの肩書。

 僕の場合、今まで失敗例が無いだけに、一応はトップクラスの称号を得ているものの、実際の能力レベルでは、むしろ低い方かも知れない。

  

 ただ、そんな努力の賜物たまもののような記録も、このフォミィのせいで、塗り替えられる事になるかも知れないのだが……


 フォミィが、これほどまでに強敵だと、分かっていたら、引き受けずにいた。

 他のもっとお手軽な対象者を3-4人成功させた方がラクに僕の業績をアップさせられるのだから。

 今まで順調に来ただけに、こんなところで、選択を誤るとは遺憾でしかない……


「『М&Bカンパニー』って、会社名の意味は何ですか?」


 まさか、フォミィがこの会社名に対して、疑問を抱くとは思わなかった!


 М&Bは、marriage《結婚》とbirth《誕生》だが、その事をストレートに伝えると

また有らぬ誤解を生みそうだからな……


「М&Bは、単に創始者夫婦のイニシャルで命名しただけです』


「創始者夫婦のイニシャル……?」


 それが予想外だったのか、フォミィはオウム返しした。


「ええ、Мはマーカス、そして、Bはベネットという名前の御夫婦です」


 思わず、適当にでっち上げてしまったが、フォミィに通用するだろうか?

 目の前で、会社に電話されて、確認されたら元も子もないが……


「そうですか……私は、てっきり、Мはmind《精神》で、Bはbody《肉体》だと思っていました。つまり、その会社の能力者によって、私達、無能力者を変革しようとしているのだと……」


 mind&bodyと捉えていたとは……!


 そんな会社にいる第一級能力者なんて……

 勘違いされたままでいたら、僕は、相当ヤバイ奴だとフォミィから思われて、ますます警戒されてしまうじゃないか!

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