第8話 受け入れてくれると思いきや

 頑なだったフォミィの顔の表情が少しだけだが、明らかに緩み、僕の話術は、軌道に乗って来たのを実感していた。


 自分が生まれて来た目的に関心をこれほど示しているフォミィは、きっと、今すぐにでも、それについて知りたいに違いない!


 さてと、この後、僕は、彼女の家に通され、ゆったりとティータイムを楽しみながら、やっと職務に取り掛かれる事になるだろう!

 フォミィは、どんな飲み物を用意してくれるのだろう?

 多分、暖かいハーブティーのイメージだな……


 お茶菓子は、手作りだろうか?

 ハムスターに付きっきりだから、お菓子作りに没頭する時間なんて無さそうだろうから、出来合いの物を出されそうだな……

 

「私は、生まれて来た目的には興味有りますが……ここは、ひとまず、お引き取り下さい!」


 この成り行きからは、全く予測のつかなかった言葉が、フォミィの口から飛び出した。


「えっ、僕の方は、今すぐにでも取り掛かる段取りは出来てますが……」


「大事な事なので、心の準備も有りますし、私は、そんな早急に進めたくありません! まずは、あなたという人物を信じて良いかどうか、ハムハムと相談してから決めます! ハムハムも同意してくれて、あなたにお願いしたい場合は、こちらからご連絡を差し上げます。なので、名刺のようなものがございましたら、今、頂けますか?」


 ハムスターと相談……って、言っていたよな?

 どうやって、そんな小動物と会話するんだ……?

 僕らのような能力者なら、テレパシーで会話出来る者もいるが、彼女は能力者ではないはずだ。


 思い込みとか、何となくニュアンス的に感じられる程度だろうか?

 それなら、彼女の都合良い状態に、ハムスターも同意した事になりそうだ。

 こんな成り行きで良いのだろうか……?


「その顔は……私が、無能者だから、ハムハムとの会話が成り立たないと、疑ってらっしゃいますね! あなた達には分からないかも知れませんが、私と、ハムハムはちゃんと心で繋がっていて、会話出来ていますから、ご心配無く! 名刺はご用意出来ますか?」


 名刺か……

 まあ、この場で、二度と来るなと門前払いされる事に比べたら、まだマシなのかも知れないが……


 名刺を渡して退散したところで、フォミィから連絡が来る保障なんて有るのだろうか?

 

「僕は、断じて、あなたとハムスターとの対話の件について、疑っているわけではありません……はい、これが僕の名刺です」


 取り敢えずは、彼女の機嫌を損ねないように、良い印象で退散せねば!


「『М&Bカンパニー』、第一級能力者ローニ・テサムン……』


 フォミィが僕の名刺を見ながら、疑問そうに呟いた。

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