第6話 退出を願われても……
「すみませんが、そろそろ、時間なんです!」
左手首にしている骨董品のように古びた皮の腕時計に、目を向けてハッとした表情になってから、苛立つような言葉を向けたフォミィ。
「時間って……?」
「ハムハムをケージの外に出して、日光浴させながら、スキンシップする時間です! そういう事ですから、速やかにお引き取り頂けますか?」
ハムスターを日光浴させながら、スキンシップ……?
その事は日課になっているようで、時間をかなり気にしている素振りで、僕を追い払おうとしている。
僕との口論より、ハムスターとの触れ合い時間が優先なのは分かるけど、それじゃあまるで、フォミィの生活は、ハムスターを中心に回っているようじゃないか!
この世界に人間よりも動物愛好家が多くなっているのは気付いていたつもりだったけど……
犬や猫などの大きさのペットならともかく、そんな小さくて片手に乗るようなサイズのハムスターなどが、人間に取って代わるような対象として見る事が出来るのだろうか?
普通だったら、無理に違いない!
そんな普通でいられないくらい、かつて、彼女には、人間不信に陥るような出来事が有って、トラウマになっているのだろうか?
それとも、フォミィは、生まれつき狂信的なくらい、ハムスターにベタ惚れする趣向の持ち主だったのだろうか?
まさかと思うが、生前に決めて来た彼女の運命の相手というのが、そのハムスターだったのだろうか?
いや、まさか……!
これまでも、そんな前例などは無かったし、今回もそんな可能性は、有り得ないと思っていたいが……
今回の対象者、フォミィに対しては、今までの対象者達とは全く別のものが感じられる。
もしも、万が一、そんな事が有り得るのだとしたら……
僕がどんなに説得しても、応じなくても、それは当然だ!
運命の相手と一緒にいるのフォミィを何人たりとも、引き裂く事などは出来ないのだから……
ただ、残念ながら、それを確かめる
退行催眠が得意な仕事仲間がいるから、この際、彼に協力を仰ぐべきだろうか?
いや、いや、それは、今までの自分のモットーに反する!
これまでだって、全て自分だけで事を成して来たんだ!
僕には、この業界で常に、トップクラスの業績を達成し続けていたプライドが少なからず有る!
フォミィに対しても、誰かに依存する事無く、無理そうに思えるような状況でも独力で成し遂げたい!
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