第4話 玄関での立ち話
警戒心を解くどころか、位置的にも、玄関から一歩も前進出来てないこの現状……
これまでの自分のスムーズな仕事ぶりと、国からも称賛されてきた業績の数々が、あたかも幻だったように思わされてしまう。
自分は過去において、こんな玄関で門前払いのような扱いなどされた事は無かった!
自分は、この業界では、トップクラスの優良能力者のはずだ!
その自覚は有るものの、それをおくびにも出さない親しみやすい態度は、周囲から好感を抱かれていた。
いつでも、対象者の男女達は皆、僕の話をあっさりと受け入れて、惜しみない協力の色を示して来たものだった。
それが、このフォミィときたら……
本当に彼らと同じ人類なのだろうかと疑いたくなる!
初対面である僕に、いきなり敵意むき出し接して、僕が警戒を緩めようと話しかけても、全く態度を変えようとしない。
何か、僕に落ち度が有ったのだろうか……?
いや、僕は、今までの成功例と何ら変わり無く彼女にも接して来たはずだ。
だから、問題が有るとすると、フォミィ側に違いない!
彼女が平均的一般人の性格から、かなりズレまくっているんだ!
いや、もしかすると、単にタイミングが最悪だったのかも知れない……
多分、彼女に向けられた最初の能力者が自分で有ったなら、これほど難儀では無かったはずだ!
これまでのフォミィに向けた数々の失敗事例が、彼女の反感を最大限に引き出す事になってしまっていた。
こんな屈強な甲冑で覆われたような彼女の屈強な心を、どうやったら、
「利用だなんて、とんでもない誤解です! なかなか伝わりにくい事かも知れないですが、僕達が心がけているのは、あなた達の本来の幸せを掴む為の補佐的な役割という事だけですから!」
「私達の本来の幸せって、何? どうして、あなたにそんな事を提案されなきゃならないの? だって、私は……今のままでも、十分幸せです!!」
きっぱりと言い切ったフォミィ。
多分、それは、彼女の本心だろう。
今の彼女は、自分とペットのハムスターといる生活空間こそが、幸せの前提条件で、それ以上を望んでいないのだから。
「例えば、自分の理想の男性と出逢って、恋に落ちて、結婚するとか。可愛らしい子供達と楽しく過ごすというのは、考えた事はありませんか?」
「世の中には、それを幸せとする人々もいるかも知れないですが、私に限って言えば、それは無いです! ですから、私の事は放っておいてもらえませんか?」
今度は、懇願するような上目遣いのフォミィ。
今の生活を乱されたくない気持ちでいっぱいなのだろう。
こんな彼女の心が揺らぐ事が有るのだとすると、それは……
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