イケ女でも恋がしたい!

勇者れべる1

第1話イケ女でも恋がしたい!


「お願いします、私と付き合って下さい!」


「ごめん、私そういう趣味はないから…」


唐突に始まる失恋シーン。

告白されているのは“イケメン風”の高二の“少女”、四条令だった。

告白しているのは後輩の少女である。

令は百合やガールズラブに興味はないのでお断りする事となった。


「ふぅ…これで何回目だろう」


通算100回目の告白お断り…嬉しくない記録だ。

女が女にモテると言うのはこんなにも苦しい事だったのか。

無論令が男子に告白した事もある。

その反応はというと


「友達ならいいけど、男みたいだから彼女にするのはちょっと…」


とあからさまに嫌そうな反応をされた。

どれだけ化粧をしても女の子らしい服装をしても女性らしくはならない。

だから今は長かった髪を切り、見た目に釣り合わない若干大きめの胸もサラシを巻いて小さく見せている。

これで男と恋をする事は諦められたが、女性のファンが急増してしまった。

しかたなくモテる原因の一つであった女子バスケ部も辞めた。

空いた時間は暇なのでバイトにあてる事にした。


「うーん、働くなら女の子らしいバイトがいいなぁ」


女らしさを捨てたつもりが未練たらたらな令。

こういうのが好きなんだ、仕方がない。

令は次々と求人雑誌をめくっていく。

花屋さん、ケーキ屋さんと小学生女子の夢の様な仕事を探していたその時である。

そのページを見た時に令の脳裏に電流が走った。

それはメイド喫茶のバイトであった。

メイド喫茶で可愛いメイドさんになれれば、自分の女らしさを取り戻せるかもしれない。

令は失われつつあった青春の女心を胸に秘め、バイトの面接に向かった。



「うーん、メイドは足りてるのよねぇ…(この顔でメイドは無理でしょ)」


「そ、そんなぁ…」


店長との面接で残酷な現実を突きつけられる令。


「厨房見習いなら空いてるけど」


「それってメイド服でやるんですか!?」


「そんな訳ないでしょ。あなたそんなにメイド服着たいの?」


「はい…。あのひらひらしたのがたまらなく可愛くて…」


「じゃあヘルプの時ならメイドになってもいいわよ、どう?」


「それでいいです!お願いします!」


変わった子だなぁとしみじみ思う店長であった。



「幸せオムライスお願いしまーす」


「はい!」


元気よく注文を受ける令。

厨房の先輩(女性)の手伝いで卵を割ったり、チキンライスを炒めたりしていた。


「あなた中々手際いいわね。本当に素人?」


「兄弟が多くて、料理する事が多かったので」


と他愛の無い会話をしていたその時である。


「やめて下さいお客様!当店はそういうお店じゃありません!」


「そこはご主人様だろ?そんな丈の短いスカートふりふりさせて言う台詞か?」


客の男は気弱そうなメイドの娘に絡んでいる。

今は丁度店長もいない。

令はいてもたってもいられなくなり、厨房からフライパン片手に出て行った。


「お客様、何か問題でも?」


長身の令が男をじろっと睨みつける。

すると今まで強気だった男が一変として弱気になった。


「じゃ、じゃあ料金払って帰るから…」


「お金は結構ですからお帰り下さい、ご 主 人 様」


男は逃げる様に店を出て行った。

一方脅されていたメイドの少女は顔を赤くして令を見つめている。


「あ、あの…!助けて頂きありがとうございました!」


「いや、別に…大した事じゃないから」


令が謙遜していると周囲のコックやメイドや客達から拍手が送られてくる。


「あなた達、何やってるの?」


「あ、店長」


事と次第を店長に説明する令。


「まあ今回は穏便に済んだからいいけど、逆上する客もいるから今後は私に電話してね?」


「は、はい…」


「まあそれはそれとして、はいメイド服」


店長の手にあったのは、令のサイズに新調されたメイド服だった。


「あ、あの、着てもいいですか?」


「仕事が終わったらね」


「あ」


厨房仕事をそのままにしてきた事を思い出した令はそそくさと厨房に戻った。


―そして数週間後


「令様、紅茶が入りましたわ」


「あ、ずっるーい。令様、隣に座ってもいいですか?」


「え、ええ、ありがとう」


今日はバイトがオフの日なんだけど、客としても来てみたくて来店した。

メイドさんとしての仕事を彼女達から学ばなくては…

しかしあの厄介な客の一件からどうもメイドのみんなから視線を感じる。

今だってお客様が他にもいるのに私の所に何人もメイドがいる。


「令様、ご注文は?」


「じゃじゃあ、この愛情100%オムライスで」


「100%?いえ、120%でお届けします!」


そう自信満々に答えたのはこの間助けた気弱なメイドだった。

令がその娘の顔を見ると少女は頬を赤らめ、厨房の方へ去っていった。



「あなたクビね」


「え!?どうしてですか店長!?」


「あなた自身の仕事には問題ないわ。ただ仕事中でもオフでも他の娘があなたに集中して仕事にならないのよ」


「ううう…分かりました(もっとメイド服着たかったな…)」



「令様、辞めちゃうんですか!?」


以前助けた気弱なメイドが詰め寄って来る。



「うん、そうみたいだね」


「わ、私店長に抗議してきます!」


「いや、いいよ。こういうの慣れてるから」


「じゃ、じゃあせめて連絡先を交換致しませんか?」


「うん、それくらいならいいよ」


「やった!」


気弱なメイドは令に抱き着くとその顔を令の胸にうずめていた。


「令様の胸、どくんどくんしてる」


「そ、そうみたいだね」


「令様、もう少しこのままでもいいですか?」


「ええ、私も…嫌いじゃないみたいだから、こういうの」


不思議といつの間にか同性とこういう感じになる嫌悪感もなくなっていた。

こうして二人の内緒のお付き合いが始まるのであった。

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