平清範の事件簿① 赤羽殺人事件

鷹山トシキ

第1話

 清範、蘇生させる度に様々な魔法を覚える


 小樽市のナイトクラブでピアニストを務める平清範は、歌手の明野和美と交際している。しかし、さらなる成功を目指す和美は彼のもとを去り、東京へ渡る。彼女のことを諦めきれない清範は、カシオペアに乗って東へ向かう。


 電車賃を浮かすために宇都宮で降りた。

 清範は、駅前で佐山達也のオープンカーに同乗する。達也の腕には引っ搔き傷があり、それは女につけられたものなのだという。夜、眠りにつく達也に代わって清範が車を走らせていると、大雨が降り出す清範は、車の屋根を閉じるために達也を起こそうとして助手席のドアを開けるが、達也は地面に倒れ落ちる。心臓発作により息絶えた達也を草陰に移動し、清範は蘇生の魔法を使った。達也が蘇った。  

 蘇らせた代償として清範は達也になりすますことにした。


 清範は、コンビニに立っていた夏木遥を車に乗せる。しばらく助手席で眠っていた遥は、目を覚ますなり、達也はどこにいるのかと清範に問う。達也を引っ掻いた女とは遥のことだったのである。清範は、これまでの経緯を遥に話す羽目となる。遥は、清範が自分の言いなりにならなければ警察に全てを話す、と彼を脅迫する。2人は佐山夫妻を名乗り、赤羽にアパートメントを借りて共同生活を始める。


 達也の車を売るために、清範と遥は中古車店へ行く。清範が店員に自動車保険のことを聞かれて口ごもっていると、遥が事務所へ入ってきて、車を売るのは止めたと告げる。遥は、車の小物入れを開けて、達也の父が死亡したことが分かるメモ帳を見つけていたのである。


 2人はアパートメントへ戻り、口論を始める。遥は、清範が達也になりすまして達也の父親の遺産を手に入れるべきだ、と主張する。達也のことを十分に知らない清範は、遥の提案に反対する。

「達也は生きてるし、うまくいきっこない」

「殺しちゃえばいい」

 遥は、清範が窓を開けに行った隙に、電話を抱えて寝室へ閉じこもる。清範は、ドアの下から伸びている電話線を全力で引っ張り、遥が警察へ電話するのを止めようとする。彼は体当たりでドアを開けて寝室へ入るが、電話線で首を締めつけられた遥は窒息死していた。清範は遥の死体をその場に残し、アパートメントを立ち去る。


 清範が再びヒッチハイクを続けていると、パトカーが彼の前で停まる。警察官の言われるがまま、清範はパトカーに乗り込む。清範を乗せたパトカーは夜道を走り去って行く。

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平清範の事件簿① 赤羽殺人事件 鷹山トシキ @1982

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