第26話
親方から話を聞いて、急いで魔道具協会の本部に行く事になりました。本部は、親方の住んでるイェンの街にあるそうです。アオイさんとダン親方と3人で来ています。
僕は既に胃が痛いです。
「ナビの機能は人を貶めたりするような悪いモンはねぇし、問題ねぇと思うけどな。俺も一緒に謝ってやるよ」
そう親方は言ってくれたけど、どうしよう……。めちゃくちゃ怖い。
前にギルド長に怒られた時の恐怖が蘇る。
でも、これは僕のミスだ。
魔道具協会のことは、親方から少し聞いていた。申請や登録が要るとまでは聞いてなかったけど、協会があるのは知ってたから、魔道具を作ったり売ったりするなら確認しなきゃダメだったんだよね。
自分で販売までしてる職人さんなら知ってて当然なんだけど……はぁ、見習いしかしてない弊害がこんなところで出るなんて。
「アオイさん、ごめんなさい」
「ううん、マイスは悪くない。マイスは作るまでが仕事、そこからは私の仕事だから」
そうは言うけど、魔道具作りは僕しか出来なかったんだから、アオイさん達が協会の存在を知る訳ない。
はぁ、迷惑かけちゃったなぁ。
「協会長は俺もよく知ってるから大丈夫だ。たまに申請が遅れる奴は居る。悪気がなきゃ注意される程度ですむから安心しな。俺もマイスに教えてなかった責任があるからな」
普通見習いには教えません。親方は悪くないよ。
「冒険者ギルドにも、迷惑をかけてしまいました」
「そっちは、カナとレナに任せよう」
冒険者ギルドにも説明に行って貰ってる。どうしよう、2人が怒られてないかな。心配で仕方ない。
「うぉーい、ダンだ。久しぶりだな」
「ダンさん、お久しぶりです」
「ちょっと俺の弟子がミスしちまってな。魔道具売ったんだけど申請してなかったんだ。協会長に説明と謝罪に来た」
「そうなんですね。たまにありますよね。今協会長居ますから、お部屋にどうぞ」
「ありがとな」
顔パスなの?!
ってか、思ったより軽く言われた。
それともダン親方のおかげかな。
「あ、あの……ここにはよく来るんですか?」
「ああ、以前は半年に一回は来てた。協会長は同じお師匠様の下で学んだ仲だからな、たまに昼メシ食ったりするんだよ」
「親方……すごいですね」
「おっ、見直したか?」
「もともと尊敬してましたよ!」
「お待たせ、ダン久しぶりだね。で、君の弟子が何をやらかしたんだい?」
この人が協会長さんかな?
優しそうな、男の人だ。でも、怒られる前に謝らないと!
「ご、ごめんなさいっ!」
「何?! この子? めっちゃ頭下げてくるんだけど。単に申請遅れただけでしょ? よくある事じゃん。ダン、どんだけ脅したの?」
「脅してねぇよ。マイスは気が弱いんだ」
「マイス?! まさか、ナビを作ったマイスさんですか?!」
「は、はい、ナビは僕が作りました。冒険者ギルドにいっぱい売りました! 申請してなくてごめんなさいっ!!!」
「マイスは悪くありません。売ったのは私です。確認不足で申し訳ありません」
アオイさんと2人で必死に頭を下げる。だけど……。
「あの、ナビ以外にもすごい物を作ったんですか? ナビと、ナビ用の箱の申請は済んでいますよ」
とんでもない答えが返ってきた。
なんで?!
「申請済んでるってどういう事だ?」
「冒険者ギルドから、ナビもナビ用の箱も販売申請が済んでいます。許可も下りているから、売って頂いて問題ありませんよ」
「……うそ」
「そ、そうなんですか?」
アオイさんは、断りをいれてから慌ててカナさんと通信を始めた。その姿を見て協会長さんがニコニコ笑っている。
「それがナビですね。道案内の魔道具に、通話の機能を付ける発想が素晴らしいです。私も研究用に買ったんですよ。金貨6枚となかなか高額でしたが、素晴らしいものですね。良い物を買いました」
結局、ナビは金貨6枚でギルドが売ってるらしい。僕たちは、金貨5枚で卸している。
「おう、ナビは俺も見たけどすげぇよな」
「さすがダンのお弟子さんですね」
「マイスは自慢の弟子だからな。まだちょっとしか教えられてねえんだけど、これからもっと俺の技術を伝えていくつもりだ」
「人にも自分にも厳しいダンがそこまで褒めるなんて珍しいですね。まぁ、こんな物を作れる方なら納得しますけど」
「しかも、マイスは真面目なんだ。遅刻なんてした事ねぇし、仕事も丁寧、一度教えた事はちゃんと覚えるし、言動も柔らかいから客の評判も良い」
「優秀ですね」
「俺とは大違いだな」
「ダンは腕は確かでしたが、不真面目でしたからねぇ。しょっちゅうお客様と喧嘩していましたし」
「うっせぇ! 一回貴族に喧嘩売っちまって捕まりかけてから、めちゃくちゃ反省したっつうの!」
「たしかに、あれから遅刻もなくなって真面目になりましたから、得た物も大きかったですね」
「まぁな。で、結局ナビは冒険者ギルドが申請してくれてたのか?」
「ええ、そうです。製作者はマイスさんになってますよ。販売者は冒険者ギルドになってますけど、マイスさん本人であれば冒険者ギルド以外にナビを売る事も可能です」
「はぁ……良かった……」
僕はホッとして、床にへたりこんだ。けど、アオイさんは険しい顔で呟いた。
「良くない!」
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