第25話
「ふぅん、こりゃすげぇな。俺は大工は専門外だが、こりゃ立派なモンだ」
「でしょ! 中の家具も全部マイスが作ったんだよ!」
僕たちは、改めて自己紹介して家を案内している。なんだろう、親方に褒められる度にムズムズした気持ちになる。
「タンスは、マジックバッグ仕様なのでたくさん入るんですよ」
「何?! マイスやるなぁ! マジックタンスか! いや、なんか語呂悪りぃな。マジッククローゼットってとこか?」
「良いですね! ネーミングセンスありますね」
「タンスにつけるって発想はなかったぜ。けど、マジックバッグに全部入れりゃ良くねえか?」
ほ、ホントだ!
なんで僕は無駄にマジックバッグ機能をタンスにつけたんだよ!!
材料費だけでも金貨10枚くらいかかったのに!!!
「す、すいません……無駄な材料費がかかってしまいました……」
「マイスは、出来るんだけどたまに抜けてるよな」
「あはは、私たちも気がつかなかったし、気にしないで。冒険中に可愛い服なんて要らないし」
うう……アオイさんは気にしないでって言ってくれるけど、このままでは無駄なお金をかけただけになってしまう! なんとかしなきゃ!
マジッククローゼットは作ってしまったから、もう壊せない。壊しても材料は取り出せないから……。
……そうだ!
「親方! 転移の魔道具って、人だけじゃなく物も転移出来ますよね?」
「ん? そりゃ出来るけどよ」
「マジックバッグに、転移をつけましょう!」
「「「「えっ?!」」」」
「マジックバッグに、転移の機能もつけてマジッククローゼット同士やマジックバックと物のやり取りが出来るようにするんです。そしたらアオイさん達が冒険で見つけた物もすぐ僕が加工できるし、僕が食事を送る事も出来ます。冒険の時のごはんは不満だって言ってましたよね? 本当はマジックバックに時間停止の機能を付けて、作り置きのご飯をいっぱい持って行けるようにしようと思っていたんですけど、難しくてなかなか出来ないんです。でも、もうある転移の機能をつけるなら、親方から教えて貰えば出来るかなって」
時間停止機能、ちょこちょこ研究してるんだけどうまくいかないんだよね。
「マイス、オメェすげぇな」
「え?」
「俺はその発想力がねえんだよな。材料が揃ったらすぐに転移の魔道具の作り方を教えてやるよ。基本の魔道具を作れるようになれば、マイスなら応用できるだろ」
「ありがとうございます!!」
「え! じゃあ冒険中に、カツ丼食べられる?!」
「足りない物を送ってもらう事も出来る?」
「が、頑張ります! さすがにあれだけお金かけたのに無駄だったなんて残念過ぎますから」
「マジッククローゼットは貴族に人気になると思うぜ。豪華な飾りをつけりゃ金貨500枚で売れる」
「金貨500?!」
「ああ、マジックバッグはせいぜい取れても金貨10枚くらいだけど、クローゼットになりゃ家具としての価値もあるし、マイスの腕で装飾をつけりゃ金貨500枚どころか、金貨1000枚もいけるんじゃねぇか」
「無駄じゃなかったよ!」
「それどころか、膨大な利益を生みそうですね」
「ねーね、転移つけたらいくらで売れる?」
「転移の魔道具は材料高えし、あんまり流通すんのも良くねえから金貨1000枚以上は取るルールだ。転移付きのマジッククローゼットなら金貨1500から2000ってとこかな。あーいや、やっぱり3000は取った方が良いかもしれねぇ。嫁入り道具として喜ばれるだろうし、それでも売れるだろ。実家から援助の品を送ってやったり、嫁入り先で逃げたくなったらすぐ逃げられたり、便利そうだもんな」
「あ、これで人も移動出来るんだ」
「もともと転移は人の移動がメインだからな。まぁ、移動出来る人を限定したり、物は自分の物しか送れないように厳しめの防犯機能をつけりゃ販売許可下りるだろ」
「防犯機能なんてあるんですか?」
「でねーと転移の魔道具で簡単に誘拐事件や窃盗事件が起きちまうだろ。防犯機能をつけねぇと売っちゃいけない決まりだ。このナビってやつ、ちゃんと魔道具協会の審査受けたか? マイスにもまだ売り方は教えてなかったから気になってな」
え! そんなのあるの?!
どうしよう! そんなの受けてないよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます