第27話
「アオイさん?」
「今、冒険者ギルドに説明に行ったら、ギルド長に問題ないですって言われて追い返されたらしいわ! それより早くナビを納品しろって言われたそうよ。マリカさんは1週間前から留守のまま! 絶対おかしい! 販売者は、なんで冒険者ギルドになってるのよ! マイス本人なら他のとこにも売れるらしいけど、マイスは販売担当じゃないわ。売るのは私達よ。このままだと、ギルドにしかナビを売れない。もともと、面倒だし冒険者ギルドに販売を委託するつもりではいたけど、販売を独占させるなんて契約してないわ。私が知らずにナビを他の人に売ったら、私が捕まる」
「えっ?!」
「協会の申請は、大陸全土に広がる魔法契約なので違反すれば分かります。たしかに、販売を冒険者ギルドと限定しているのでマイスさん以外が商売として売れば捕まります」
複数個売るとか、条件はあるらしいけどアオイさん達が気がつかずに売れば確実に捕まる。僕は、発明者兼製作者だから、問題ないそうだけど。
「普通は街単位の魔法契約だけど、大きなところなら大陸全土の魔法契約ですものね」
魔法契約は、範囲が決まっている。親方や僕がした魔法契約は、契約した場所から半径50キロくらいに効果があるもの。だから親方は僕に事情を説明できた。ミクタから出てしまえば契約は関係ないからね。
大陸全土に効果がある物もあるけど、高価だし滅多に使わない。魔道具協会は、魔法契約の用紙を自分達で作ってるからふんだんに使うそうだけど。
「マイスさんが冒険者ギルドに販売を許可する形で申請したんじゃないんですか?」
「たしかに、冒険者ギルドがナビを売るとは聞いていました。でも、協会に申請までしたなんて聞いてません」
「そもそも、マイスは申請してねぇから慌てて謝罪に来たんだろ?」
「たしかにそうですね……これは、由々しき事態です。すぐに申請書類をお持ちします! 確認しましょう」
「親方……僕また騙されました?」
今までの嫌な事が、思い出されて涙が溢れてくる。
「落ち着け、ナビの発明者と製作者はマイスだ。マイスの権利は、かなり手厚く保証される。そもそも申請書類は、マイスが書いていないなら無効だ」
「冒険者ギルドと魔法契約しましょって言ったら商品を買うだけだし、その場で代金を全額渡すからそこまでしなくて良いって言われたんです。マリカさんは魔法契約を勧めてたんだけど、ギルド長は他の支部に書類を回すのが面倒だって、嫌がったの。無理矢理契約すれば良かった!」
「売るだけならそんなもんだ。普通は魔法契約までしたりしねぇから、面倒がる奴なら違和感がない申し出じゃねぇか?」
「みなさん! 書類がありました! 申請日は、3日前で書類を持ってきたのはマニチの冒険者ギルドの支部長です!」
「3日前って……私たちがナビの追加注文受けた日……」
「って事は、ナビを売った時に申請した訳ではないんですね」
「そうなるな。そのマリカさんって人が居ねえ時を狙った感じだな。もしくは、マリカさんが黒幕か……」
「そうは思いたくないけど、一旦全て疑う方が良さそうね」
親方も、アオイさんも険しい顔をしている。代行申請は、委任状を書くんだけど僕の委任状は書いた覚えがない。見せて貰ったけど、サインは僕の字じゃなかった。
「マイスさん、申請をやり直しませんか?」
協会長さんが、そう提案してくれた。
「え?! そんな事出来るんですか?」
「マイスさんがナビの製作者である事を確認する為にいくつかテストをします。まぁ、ダンが連れてきてる時点で問題ないでしょうけど、こちらもきちんと確認しないといけませんので。もともとこちらのミスです。本当に申し訳ありません。冒険者ギルドからの申請はよくある事だったので、代行しているとばかり……」
「今までもそうだったなら、疑わねぇよな。けど、代行申請はちょっとやり方を見直した方が良いぜ」
「そうですね。ダン、代行申請されたものは全て本人に確認を取って、問題があれば再申請するので、手伝って下さい」
「うぇ! やだよ! 無理無理!」
「ダンならできるでしょう? 通常業務をやりながら捌くのは無理なんです。お願いします」
「……はぁ……しゃあねぇか。ただし、マイスの申請をきっちり訂正してくれ」
「もちろん、確認が取れればそうしますよ」
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