第22話

「すごい! すごい! この部屋最高!」


レナさんが大喜びで、部屋を駆け回っています。広くなった部屋を全てお披露目するのは初だからなぁ。喜んで貰えたみたいでよかった。マジックバックと同じように無限に入るタンスを作って各自の部屋に設置したら喜んで貰えた。


あと、僕の家……と言うか小屋を建てた。休日は自分の家を作る事に専念したら、結構良い物が出来た。材料を買うお金もあったしね。利便性も考えて、廊下で繋がってるけどやっぱりひとつ屋根の下で3人と寝るのは緊張するから、みなさんの住む所が母屋で僕の小屋が離れって感じにさせて貰った。


なんて言うか……女性がお風呂上がりに寛いでる姿は目の毒なんだ。レナさんなんて男嫌いなんだから、お風呂上がりに僕が居たら嫌だと思うし少し離れる事にした。


僕の小屋にも小さなお風呂とシャワー、台所とトイレをつけたから、母屋に行かなくても生活は出来る。お風呂とトイレの為に、登り窯を作って陶芸をした。お風呂を陶器で作るのは大変だったけど、勉強になった。さすがに何度か失敗したけどね。


せっかく陶芸をやるようになったから、お皿なんかも作った。料理を始めると色んな器が欲しくなるんだよね。前は器なんて気にならなかったのに。お皿をさっきお披露目したら、褒めてもらえた。


この辺の土は、陶芸に向いてるから助かる。


もちろん、僕の小屋のお金とか登り窯や炉のお金は僕が出したよ。炉と小屋の基礎はアオイさんを頼ったけど、あとは買い出しの時に資材を買っておいたんだ。


本当に、お金あるって良いよね!


「マイスの部屋と作業部屋は?!」


「僕の部屋は別の小屋にしたので、その分みなさんの部屋を広くして、キュビさんの部屋と、化粧室を作りました。作業場に指定された場所と同じ広さを取ったから仕事するのに問題はありません。ちゃんと廊下で繋いであるから、用があればすぐ出入り可能ですよ」


それぞれの部屋にドレッサーは作ったけど、3人とも仲が良いし、お互い化粧をしあったり服を交換したりしてるから、共通の物を置ける部屋があると良いと思って化粧室を作った。


部屋にあるものと同じドレッサーと、大きな姿見とタンスを3つ置いてある。


化粧室の説明をしたら、みんな大喜びしてくれた。


「嬉しい! ありがとう!」


「マイスは部屋離れて良かったの?」


「僕は集中して作業する時は篭りたいんです。ワガママ言ってすいません」


さすがに、お風呂上がりのみなさんが眩し過ぎるとは言えません。


「そっか、マイスが良いなら良いよ。でも、小屋のお金は出すよ」


「僕の小屋なので! 土地をお借りしてるだけで充分です! お金を出す方が好きに出来ますし」


「そっか、そうだね。でもお仕事で使うのものはお金出すからね!」


「はい、分かりました」


相変わらず、優しいなぁ。お金僕が出してラッキーじゃないところがすごいよね。


次の日、新居のリビングに全員が集まり今後の打ち合わせが始まりました。


「よし、じゃあ始めるわ。今後の事なんだけど、ナビの注文が定期的に入りそうなの。やっぱりかなり便利みたいね。例の箱も、冒険者ギルドの各支部に置きたいそうよ」


「すごいね! めちゃくちゃ儲かるじゃない」


「儲かるってレベルじゃないわ。マイス1人じゃ明らかに無理。だから、外注したいんだけど、マイスの作ったものを作れる職人さんって居るのかなって思っててさ」


「あー……確かにね」


「ロッドさんにナビを見せたら、かなり高度な技術が使われていると仰っていました。作れる方は限られるのではないかと思います」


「ミクタなら作れる人が居るんじゃないって言われたけど、マイスを使い捨てようとするようなヤツらに腕があるとは思えないし、腕があってもお断りよ」


「そうですね。この間行ったらギルド長が詐欺で捕まってましたしね。新しいギルド長もうまくまとめられないみたいで、ミクタが職人の街というのは過去のものになりつつありますね」


「まぁそれでも、たくさん職人さんは居るんだし真面目にやれば持ち直すとは思うけどね。でも、マイスレベルの職人さん少ない気がするんだよね。店を見に行ったけど、あたしでも出来るんじゃって品を高額で売ってたもん。ミクタに行くといっつも新商品がどっかで売ってたから商人も定期的に立ち寄ってたんだけど、最近は新商品もないから人の往来は減ってるみたいだよ」


「レナも器用だから比べるのはどうかと思うけど、確かに品質は悪かったわ。まぁ、マイスの作るものが凄すぎて私達の感覚が麻痺してる可能性はあるけど」


「食器は絶対マイスの作る物の方が良いよ!」


「そうですね。素晴らしいです。食器も売ります?」


「それもありだけど、まずナビの注文を何とかしよう。冒険者ギルドにも、うちは職人は1人しか居ないんだから紹介してって言ったけど、紹介された職人さんの名前をリタ親方に伝えたら、腕は良いけど素行が悪い女好きなんだって」


「え?! そんな人ダメですよ! 危ないじゃないですか! それなら僕が徹夜で作る方がマシです」


「大丈夫、もう断った。でも、冒険者ギルドも他に腕がある職人は居ないって言うの。だから、マイスに心当たりがないか聞こうと思って。どうかな?」


1人だけ確実に僕より出来る人を知ってる。今なら自信を持って挨拶に行ける。


「魔道具なら、僕の師匠が僕の倍のスピードで作れます。今はミクタに居ませんが、連絡先は聞いています。ダン親方の協力を得られれば、注文を捌けると思います」


「ああ! なるほどね!」


「待って! マイスの倍のスピードって、どんな超人?!」


「……想像出来ませんね」


「僕はまだまだ未熟な職人ですよ。リタさんの方が家づくりは上手ですし。実は、ドレッサーもリタさんに相談したんです」


「そうなの?」


「ええ、アオイさんにも怒られましたから、しっかり周りを見るようにしたんです。そしたら、色々見えてきました」


「そっか、自分の実力は分かった?」


「そうですね、僕はまだまだですが、中の上くらいの腕はあるかなと思います。少なくとも、見習いより仕事は出来ますね」


「まだまだ自分を過小評価してるねぇ」


「そうですか?」


「リタ親方は、マイスは一流の職人だって褒めてたよ!」


「ええ、出来れば引き抜きたいとも言われました」


「もちろん断ったけどね。どう? リタ親方のとこに行きたい?」


「いいえ、僕の雇い主はアオイさんですから」


どんなに待遇が良くても、どんなに良い人でも、僕はここから離れたくない。恩もあるし、なによりみなさんと働くのは楽しい。ダン親方と仕事をするのも楽しかったけど、それ以上に今の方が楽しいんだ。

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