第18話

あの箱はなんと、金貨500枚で売れた。ギルドの人もニコニコして買ってくれた。


ギルドの人は、こっそり僕を勧誘しようとしたけど、僕はアオイさんに雇われてるからアオイさん達がクビにしないならアオイさんの所に勤めたいと断った。でもちょっとしつこい。給料2倍とか言われたけど、衣食住満たされてるし、給料だって良いからこれ以上は要らないんだってば!


アオイさん達が気がついてくれて、みんな怒っていた。カナさんが特に怖くて、静かに抗議していた。


普段穏やかな人が怒ると、怖いね。


「マイスさんを黙って引き抜こうとするなら今回の取引は無かったことにします」


ただ静かにそう言っただけなのに、物凄く怖かった。


「すいません……すいません……」


ギルド職員のおじさん、小さくなって震えてる。


「分かって頂ければ結構ですよ。もちろん、マイスさんが望むなら移って頂いて構いませんけど」


「僕は出来たらこのままアオイさん達に雇って頂きたいです。まだ家も完成してませんし、冷蔵庫なども改良したいです。みなさんの知識は凄いので、ものづくりのアイデアも湧きます。それに、ご飯も美味しいし、休みもあります。みなさん僕を認めて下さるから、とても働きやすい職場なんです。だから、給料が高くても冒険者ギルドに移る気はありません。ごめんなさい」


「もちろんです! だから、また良いものを作ったら教えて下さいね。うちの職員が、大変失礼しました」


誰?! メガネをかけた、しっかりしてそうな女性が現れた。


「マリカさん! もーなんでいないのよ!」


レナさんが、耳をピンと立てて抗議の意思を示した。レナさんの耳がピンと立つ時は、周りの音を拾って警戒してる時なんだってアオイさんが教えてくれた。


「ごめんなさい、他の仕事があって。でも、任せるべきではなかったわ。今後は必ず私が対応するから、安心してマイスさんが作ったものを売りにきて」


そう言って、さっきのおじさんを下がらせる。おじさんは、マリカさんが来たら真っ青な顔をして震えながら退出していった。


「本当ですか?」


カナさん、まだちょっと怒ってるね。


「必ずマリカさんが対応してくれるなら今後もお付き合いをするわ。でも、許すのは一度だけ」


アオイさんも、実はかなり怒ってました?!


「もちろんです。先程は本当に失礼しました。マイスさん、はじめまして。支部長補佐と、受付を担当しておりますマリカと申します」


「はじめまして。アオイさん達に雇われている職人のマイスと言います」


「ナビという商品は、素晴らしいです。先ほど納品されたものを確認しましたが、箱は金貨1000枚の価値がありますね」


「「「えっ?!」」」


さっき、金貨500枚って言ったよね?!


「どうされました?」


「マリカさん、さっきのおじさんは金貨500って言ったよ」


「申し訳ありません。少々お待ちください」


あれ? マリカさんも怒ってます?

みなさん怒ると怖いんだね。僕は小さくなって、彼女達の怒りが収まるのを待つしかなかった。


マリカさんが戻って来たら、すぐに支部長と一緒に頭を下げられた。あのおじさんは、金貨500枚を横領した事が判明して、さっき官憲に逮捕された。仕事もクビだそうだ。


クビ……怖い。


お詫びも兼ねて箱は金貨1200枚で買って貰った。それでも、最終的にギルドは儲かるらしい。ギルド凄いね。ナビも追加を作った分も合わせて150個売ったから、材料費などの経費を引いて利益は金貨1500枚。


そのうちの4割が僕のものだから、金貨600枚が手に入った。


「あの……さすがに多すぎませんか?」


「契約通りよ!」


さっきから何度も多いと訴えたが、3人とも契約通りだと譲らない。


「お金はあって困るものじゃないし、私たちも魔法契約を破る事は出来ないんだから、受け取ってよ」


「分かりました」


これ以上ゴネたら迷惑だね。ありがたく受け取ろう。せっかくだから、ロッドさんのお店に行って気になってたものを購入しようかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る