第34話 国作り、その12
次の日に王城前の広場でアイオイ国王が挨拶をして復興祭が始まり、トムも皆と一緒にロラタ王都の街を見て回った。
屋台などが出てそれなりに賑やかで盛り上がっていたが、死霊から受けた被害は大きくまだ壊れたままの家が所々に残っており、復興半ばの様子だった。
ナナリーナが暮らしていた孤児院も崩れたままでナナリーナは亡くなった園長や孤児の冥府を祈って手を合わせていたのです。
バーバラが鉱山に詳しい知りあいに会いに行くので用心の為にバースを警護に付けてトムたちは王城に戻ったのだ。
その晩は王城の大広間で貴族たちを招いて復興を祝うパーティーが開かれトムたちも参加させられたのですが、トムの周りに着飾った貴族の令嬢たちが押し寄せて縁を結ぼうとした。
前世で女性に縁のなかったトムが困っているとジエルとナナリーナにローラン王女の3人が来てローラン王女がトムを取り囲んでいる令嬢たちに。
「ごめんなさい、トム様を陛下が呼んでいますので」
そう言ってトムを令嬢たちから救い出して応接間に連れて行きナナリーナが口を尖らして。
「トム様、綺麗な令嬢たちに囲まれて良かったですわね」
「ん?ナナリーナ怒っているの?俺は香水の匂いのする着飾った令嬢に胸が悪くなっていたから助かったよ」
ローラン王女が笑いながら。
「クスクス、ナナちゃん焼き餅焼いて女性の気持ちに鈍感なトム様には分からないわよ」
ジエルも。
「ナナちゃん、ローランの言う通りよ、トム様は朴念仁なのだから・・・・・・」
ローラン王女がナナリーナをひたし気にナナちゃんと呼び、ジエルがローランと呼び捨てで呼ぶのでトムは何時に間に3人が仲良くなったのか、と思い。
「何時の間に3人は仲良くなったの?」
ローラン王女が。
「私も協定の仲間に入ったのよ」
「ん?・・・・何の協定なの?」
3人は声を揃えて。
「ひ、み、つ」
訳の分からいトムなのです。
暫くして国王夫妻が来て国王が。
「トム君、お願いがあるのだが、復興したとは言え、見ての通りまだ道半ばで失業者が多く国の財源にも限りがあるので困っておるのだ。失業者を君の国で受け入れてくれないだろうか」
思いがけない事を言われて労働者不足のトムは。
「良いですが、どの位の人数ですか?」
「1万人と言いたいが、無理なら半分の5千人でも良いが」
ナナリーナが。
「トム様、住宅の用意もありますから、1カ月後なら2万人まで受け入れが可能ですが、大勢の人たちをどうして移動させますか?」
此の世界には移動手段が馬車くらいしかなく移転するには大勢過ぎて船を使った海上輸送を考えて。
「王都から海までは遠いのですか」
ローラン王女が不思議そうに。
「トム様は王都が海に面しているのを知らないのですか?」
「ええー! 知らなかったよ。そうか、それなら船で住民を運べるな、1カ月後までに何とかするか」
ローラン王女が国王に。
「お父様、トム様たちが帰る時、私も一緒に行ってフォーク国を見たいのですが良いですか」
シャルル王妃も。
「バーバラ姉さんから聞いて私も実際にキョウト街を見て見たいわ」
アイオイ国王が少し考えてから。
「分かった。短期間だから国の事はキーソンと宰相に任せて余も行くぞ」
何故か国王夫妻とローラン王女がフォーク国を見る為に同行する事になり、移転の間にいつでもライガー王国とフォーク国を移転して行き来出来るように3人に魔力を登録させたのです。
翌日にバーバラが鉱山の専門家を連れて来てフォーク国に移転して帰ったのだ。
キョウト街の城に着くと3人は屋上から街並みを見てローラン王女とシャルル王妃が。
「綺麗―! まるで御伽噺の国みたい」
アイオイ国王が。
「使者から聞いておったがこれ程とは・・・・・・見事な街並みだ」
トムが、ナナリーナが元は俺と同じ王都の孤児院で暮らしていた孤児で、建築士のスキル使い此の街を設計して作ったと言うと、国王が信じられない顔をして。
「な、何と! まだ少女ではないか、素晴らしい才能の持ち主だ。王都に住んでいたのに知っていたら余の元に引き取ったのに、残念だ」
ナナリーナが。
「私はトム様と出会って自分の才能を知らされて魔法の使い方を教えて貰い、このようになれましたが、トム様と出会わなかったら今の私は無かったと思います。ですから私はトム様から一生、離れる気はありません」
「そうであったか、やはりトム君の力か、おい、ローラン強力なライバルがいるぞ、ワッハハ」
ナナリーナの告白に近い言葉を聞いても他人事のトムを見てジエルが。
「全く、トム様はもしかしたら女性に興味が無い男色なのかしら」
と疑ったのは内緒なのです。
国王夫妻とローラン王女が城の中を見て回り、此の世界に無い照明、部屋の作り、お風呂、最後はトイレを使用して悲鳴を上げて驚き、ミンクの案内で街に出掛けたのです。
ミンクの案内で街を見て回った3人は興奮して国王夫妻がナナリーナに、別荘を作ってくれないかと頼みバーバラからいい加減にしなさいと怒られていたのである
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