第23話 国作り、その2


 船を作るのに時間が掛かり街を作っている場所に行くと何と、整地された大地に広い綺麗な公園を中心に放射線状に煉瓦創りの家が碁盤の目のように立ち並んでいたのだ。


 驚いて街並みを眺めているとナナリーナとジエルが来て。


「どうですか?見た目は煉瓦創りの家ですが、中は鉄筋と木造で頑丈な家なのよ。トム様の家に案内するわ」


 案内されてトムの為の家に行くと街の一番奥の高台で街を眼下に見渡せる場所で、そこには、前世のヨーロッパ風の屋根に塔がある城のような建物が建っていたのだ。


 ナナリーナがトムの手を引いて家の中を案内してくれたがトムは驚きすぎて声にならなかった。


 家の中は綺麗なシャンデリアがいくつもあり玄関、皆が集まるリビングには大きなシャンデリアが下がっていた。


 驚いたことに家に中は前世の近代的な装備で何とトイレは水洗で此の世界ではシャワーはあるがお風呂が無かったのにお風呂もあったのだ。



 トムが驚いて目を白黒させているとナナリーナが少し大きくなった胸を張って。

 

「驚いた? ウッフフ! 私が1級建築士だったのが分かったでしょう」


「うん、ナナリーナは天才建築士だよ」


「褒めてくれて、ありがとうございます。でもトム様が教えてくれた魔法のお蔭よ、前世なら5年は掛かるのにたった3か月で出来たのよ、凄くない」


 それから建物の説明をして今は3階建ての王城だが、将来は10階建ての王城に建て替えるつもりだと言いい、1階は会議室、大広間、応接室、来客の部屋が5部屋、2階は、ジエルとナナリーナの部屋に将来に備えた空き室が3部屋、

3階が王のプライベートルームで執務室、応接間、他に前世の3LDKに大きな寝室があったのだ。


 トムはナナリーナの説明を聞いて。


「此処は王城で王様が住むのだよな? 王様がいるのか」


 ナナリーナとジエルがキョトーンとしてジエルが笑い出して、


「アッハハー! 何を言っているの、王様はトム様でしょうに」


 ナナリーナも。


「わざとボケているのですか?トム様以外にこの国の王様になれるような人がいないでしょうに」


「え?俺が王様か! ・・・・・・この森の主で神木のラガーが王様になると思っていたよ」


 ジエルが呆れた顔で。


「ラガーはトム様の従者でしょう。トム様を差し置いて王様になれるはずがないでしょうに」


 ジエルとナナリーナに呆れ返られてトムは正直に。


「ゴメン! 俺、本当は、新しい国を立ち上げると言っていた癖に又、耳が聞こえなく話せなくなったらと思うと怖かった。自信が無くて・・・・・・自覚がたりなかったよ。でも、もう大丈夫だ。ジエルやナナリーナに仲間が沢山出来たから助けてもらえるから頑張れるよ。ありがとう」


 ジエルとナナリーナがトムに抱き着いて。


 ナナリーナがトムに。


「トムなら絶対凄く良い国を作れるから大丈夫よ」


 ジエルも。


「そうよ、トムには私たちが付いているし、仲間も沢山いるから皆で立派な国をつくりましょう」


 孤児院の兎獣人族の園長が今のトムを天国から見て微笑んでいる気がして空に向かって。


「園長先生、俺を拾って育ててくれてありがとう、いま俺は幸せだよ」


 と心の中で感謝したのです。


 次の日から新しい街の総仕上げに掛かり、トムは街を敵から守れるようにと、森にいる凶悪な魔獣から守る為に高さ10メータ、幅3メータの外壁を想像の魔法を使い1日で作り。



 ナナリーナは街の所々に公園や小川と農作地を作り街は完成したのです。


 完成した街を王城の屋上から眺めるとナナリーナが。


「我ながら良く出来たわ。広大な深淵の森に囲まれた御伽噺に出て来るような街が出来て頑張ったかいがあったわ」


 トムとジエルが同時に。


「ナナリーナ! ありがとうー」


 ジエルが気が付いて。


「アッ! フォーク村の大勢の住民たちをあの絶壁の崖からどうして街に下ろすの?」


 

トムとナナリーナも顔を見合わせて。


「本当だ。どうしよう」


 階段を作る案も出たが、子供たちもいるので森を移動中に魔獣が出る恐れもあり、空間移転魔法を使えるトムが何回にも分けて運ぶ事になったのだ。



 フォーク村に帰り住民を集めると最初は100人だった住民が今では、千人近くに増えており住民に村を新しく作った街に引っ越す事を伝えて荷物をなるべく少なくするように言い、荷物はマジックバックに入れて1度に運べるが住民を移転させるのに大変だと思ったのだ。


 移転するので1週間で荷物をまとめるように言い移転させる当日に眠そうな顔で、あの魔人のサリーが小屋から出て来て。


「ダーリンおはようー、久しぶりね。私も空間移転魔法を使えるから手伝おうか」


 トムは手伝って貰うと1日で終わるので嬉しくなり。


「おうー、おはよう、手伝ってくれるのか。ありがたい」


「まぁ~、ダーリンの為だから頑張って手伝って、あ、げ、る~」


 相変わらず恩着せがましい言い方だが楽になるので。


「ありがとうー、宜しく頼む」


 サリーは何故か物凄く嬉しそうに。


「頼まれてあげるわ」


 それから魔人のサリーはテキパキと動き住民を20人のグループに分けてトムと一緒に運び出し何と、午前中で住民の移動を終わらせたのだ。

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