第24話 国作り、その3


 新しい街に移転した住民たちを独身者は前世の公団の団地のような3階建ての建物に、所帯者は家族の人数に応じて1戸建ての家を与えられて。


「凄く綺麗な街と家で嬉しいわ」


と言いながら荷物の整理をしていた。


 トムは住民たちを遊ばせておくわけにはいかないので、1番多い300人のゴブリン族は農作業を、オーガ族と白銀狼には警備隊として街の警備を獣人族は農作業と衣服を作る班に分けて仕事に就かせる事にした。

 勿論、お金は冒険者で貯めたお金と王都を襲った死霊を全滅させた莫大な報奨金があるので毎月賃金を支払う。


 街は清潔で水道、下水管も整備されて前世以上に清潔なのだ。

すべてスライムのお蔭だ。スライムは汚物処理能力に優れていて河の水を細菌迄食べて綺麗な飲み水に変えてくれ、汚水も飲み水に変えてくれる。


 住民は水道や水洗トイレに驚いていた。



 移転が終わり1週間後に建国祭行う事になり、今日は国と街の名前を皆でかんがえている。


 候補は今までのフォークを国と街のどちらに使うかで揉めていたが国名はトムの決断でフォーク国に決まり、街の名前はナナリーナの提案した前世の生まれ故郷京都を提案してキョウトに決まったのだ。


 1週間後の建国祭の時に使う食料品などを仕入れる為にダビデ街に行く事にして、試運転を兼ねて船で行くことにした。


 船にはトム、ジエル、ナナリーナ、ラガー、バース、ドガの6人が乗り、トムが運転して船を進めると結構速くオーガキングのドガが。


「うわー! 早すぎて目が回る~」


 と言って巨体を丸めて甲板に横になり青い顔をしていたのでナナリーナが笑い。


「アッハハ、ドガは大きい身体をしている癖に船が怖いの?もしかして船酔い」


 どうやら船酔いらしく普段は、凶悪な魔獣を簡単に倒すドガも船酔いには勝てずに青い顔をして甲板に横になっている姿に皆は、同情していたのです。


 河には3~5メータ位の魚や鰐の魔獣もいたが、船を巨大な魔獣と思ったのか、襲い掛からずに逃げてしまい、ジエルが。


「捕まえて食べたら美味しいのに・・・・・・」


 そう言って恨めしそうに逃げていく魔獣を見ているとナナリーナも。


「刺身にしたら美味しそうね」


 刺身と聞いてトムも前世の食べ物が恋しくなり、食生活を改善しなくては、と思い始めたのです。


 ダビデ街までは陸地を歩けば2日かかるのにその日の昼過ぎには目的地に着いてしまい、河を船が通れるようにした時に作っておいた船着き場に着いて錨を下ろして船を止めた。


 船と船着き場を隠蔽の魔法で隠して、ドガをダビデ街に連れて行くとS級魔獣なので大変な事になるので船の警備を頼んで船に残し、ダビデ街までは近いので歩いて行く事にしたのだ。


 


 1時間くらい歩くとダビデ街の入り口に着き、門を警備していた5人の門番がトムを見て。


「英雄のトム様―だ! 」


  そう言うと1人の門番が街の中に走り出しながら住民たちに叫んで。


 「トム様が帰って来たぞー! 英雄のトム様が来たぞー!」


 もう1人の門番が。


「大変だ! 俺は領主様に知らせなければ」


 2人の門番が走り去り、トムたちが唖然としていると、住民たちが集まり出して。


「トム様! お帰りなさい」 「死霊から街を守った英雄のトム様だ」「トム様、ありがとう~」


 など色んな声が飛び交いトムを一目見ようと住民たちが押し寄せてトムたちは驚いて門の前の人だかりで前に進めなかったのだ。


 残っていた門番が大声で


「おーい! トム様が街に入れないだろうー! 道を開けなさーい」


 住民たちが道の両側にどいて、ようやくトムたちは街に中に入りギルドに向かって歩き始めると、豪華な馬車が前方に止まり、馬車の中から妖艶な女性が出て来たのです。


 馬車を降りた妖艶な女性がトムに近づき。


「トム様、初めまして。この街の領主のダビデ街の領主バーバラ・ライソンでございます。ご挨拶が遅くなりましたが、ダビデ街を死霊から救って頂きありがとうございました」


 ダビデ街に領主がいる事さえ知らずに、ましてやこんなに若くて綺麗で妖艶な女性が領主だと知ってトムは慌てて挨拶を返し。


「初めまして、トムです。」


「フフフ、トム様はどんなに凄い人かと思ったのに、初心な方でしたのね。良かったら少しお話をしたいので私の屋敷に寄って頂けませんか」


 領主からの誘いを断る事も出来ないので領主の馬車に乗せられて屋敷に行くと、屋敷はそんなに大きく無く綺麗な洋館で、庭が広く噴水のある手入れの行き届いた綺麗な庭だった。


 応接間に通されて領主のバーバラが改めて。


「領主として死霊から街を救って頂いた後、直ぐにもお会いしてお礼を言おうと思ってギルドにいったのですが、王都に旅立たれた後でお会い出来ずに・・・・・・でも王都を襲った死霊をそれもドラゴン死霊を倒したと聞き驚きました」


「危なかったですが何とか倒せて良かったです」


「王都を出た後、ダビデ街に戻ると思っていましたのに長い間どうしていたのですか?」


 トムは王都を出てからの事を話すとバーバラが。


「新しく国を興しても今ある国から承認されないと交易も難しいのよ。トム様は此の大陸の情勢を知っていますか?」


「領主様も知っていると思いますが俺は、去年まで耳が聞こえず話す事も出来なかったのでまだ勉強不足で大陸の情勢などは知りません」


「あっ! そうだったわね。それで今回ダビデ街に来た目的は建国祭に使う食糧品を買いに来たの?」


「はい、そうですが」


「食料品は私の領地を死霊から守ってくれたお礼に私が用意させるから、トム様は私が大陸の情勢や付き合い方を教えるから今晩は此処に泊まりなさい」


「えっ! 良いのですか」


「その位は私の顔を立てる為にさせなさいよ」


 ジエルが領主の侍女に付いて買い出しに出掛け、トムとナナリーナは領主のバーバラから此の大陸の情勢や付き合い方の講義を受けたのです。

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