第22話 国作り、その1
谷底を流れる河を見ていたナナリーナが地面に棒で何やら描き始めトムが覗いてみると大雑把な街の図面で、描き終わるとナナリーナは。
「う~ん! やっぱり、早く魔法を使えるようにならないと・・・・・・・・」
「ナナリーナ、どうしたの?その図面は街の図面みたいだが」
「はい、そうですが、此の世界には建設機械が無いので、魔法で出来ないか考えていました。魔法が使えたら、建設機械を使うより早くて難しい事も出来る気がします」
「この荒れ地に?・・・・・・出来るのか?」
「はい、出来ると思います。早く魔法を教えて下さい」
空間移転魔法で村に帰り早速トムはナナリーナに魔法の使い方を教え始めて、魔法とは自然現象を人工的に起こす事で、風なら竜巻、暴風、真空、気流、火なら火炎、熱光線、水なら飲み水、雨、水を凍らせて氷結、土なら畑、壁、建物、木なら作物、植物など、魔法とは想像力が大事でいかに正確に想像して魔法を発動させるかが大事かを教えたのです。
トム自身創造の魔法のスキルがあるが、まだ本格的に使った事が無くナナリーナに教えながら自分も勉強になったのです。
ナナリーナは呑み込みが早く天才だった。トムが教え始めて1月後には殆どの魔法を使えるようになってトムが教える事が無くなり、特に土魔法と木の魔法に拘り、魔法で建築物を建てる練習をしていた。
ナナリーナは風魔法で空を飛べるようになると街を作る予定の荒れ地に飛んで行きたいと言い出して最初はトムも一緒に行ったが、余りに頻繁に行くので護衛に鳥人のバースを同行させた。
孤児たちはジエルが面倒を見て読み書きや計算などを教えていたのですが、孤児に交じって仲良く村長ブソンとオークキングのドガが勉強している姿は微笑ましくトムは心が温まったのです。
国を興すに当たって深淵の森がどんな状態で地形なのか調べる事にして幸い風魔法で空を飛べるので、空から調べ始めた。
10日程かけて調べた結果、深淵の森の奥には凶悪な魔獣が住んでいてどうやらドラゴンもいるらしい。
フォーク村は深淵の森の中央にあるのが分かった。
北側には山脈が連なり山脈を超えるとバロン帝国、東は海、西にはエルフ族の国、獣人族の国、ドワーフ族の国、他にも少数民族の村があるみたいだ。
トムが深淵の森を調べ終わり簡単な地図を作っているとナナリーナが来て。
「トム様、荒野の整地が終わったので見てください」
と言われて移転して見に行くと荒れ地だった荒野は見違えるほど綺麗に整地されて草木の生えた平野になっていたのだ。
ナナリーナが自慢げに。
「どうですか?土魔法とラガーさんに手伝って貰って荒れ地を緑のある土地に変えて見ました。谷底を流れていた河も変えました」
谷底を流れていた河は緑の大地を流れる河になって、所々に支流が運河のように流れて荒れ地だった荒野を潤していたのだ。
ナナリーナの説明によると河は北にある山脈から湧き出る大量の水が荒野を削って谷を作り流れていたらしい、は深淵の森の東側を流れてダビデ街の近くまで続いて海に流れている。
ナナリーナがトムに難題を言い。
「トム様は創造の魔法が使えるから、河の流れを変えて船が安全に通れるようにして船を作ってくれませんか、そうするとダビデ街まで物資を運べて人の往来も出来るからお願いします」
「ええー! 俺がするのか。自信ないよ」
「あら! 前世では天才科学者だったのでしょう。物理学者でしたから魔法を使えば簡単でしょう」
「参ったなー! 可愛い妹の頼みだ。頑張ってみるよ」
「妹ですか?・・・・・まぁ、今は良いか・・・・・・そのうちに・・・・・・」
「ん? 何か言った?」
「何でも無いです。じゃ、河と船をお願いしますね」
付いてきたジエルがポツリと。
「やっぱりトム様は女心が分からない朴念仁だわ」
と呟いた言葉は荒れ地から変わった草原の風に流されて消えたのです。
ナナリーナが整地した場所に土魔法で家を建ててそこで寝泊まりをして街作りを始め、もしもに備えてドガとゼットと配下の白銀狼10匹をナナリーナの護衛に付けたのだ。
トムは河を見て回り、船が通れない場所は土魔法で川底を深くして、急流の場所は緩やかに流れるように変えて大きな船が行き来出来るようにしたのです。
次に船を作り始めて最初は1メータの模型船を作ったが本体は上手く出来るが、エンジン部分が出来ずに簡単な蒸気機関にして、蒸気は魔石を石炭の代わりに燃やすとたった1個で30時間は蒸気を作る事に成功して。
【やったー!】
叫んで喜んでいると見ていたジエルが笑って。
「ウッフフ、トム様まるで子供みたい」
「何とでも言え・・・・俺は天才科学者だからこんなの朝飯前だ」
天才のわりには時間が掛かったトムでした。
模型で成功したので船を運行する河の側に創造の魔法で造船所?(大きな小屋)を建てて本格的に造船して、何回も失敗して1月後に完成させたのだ。
船は木造船だが外側は鉄板で覆い、川幅に合わせて長さ40メータ、幅20メータの結構大型船が出来上がり、今日は皆の見守る中で進水式だ。
船の止めてある台から船を滑らせて船着き場に浮かべると見ていた皆が歓声を上げて拍手をして喜び、トムとナナリーナに名前持ちの6人が乗って試験運行すると蒸気機関の音がして動き始め河の流れに逆らって上流に進み始めるとナナリーナが。
「トム様、やったわね! 成功よ! 流石に天才科学者トムね」
「その呼び名は止めろよ。本当は落ちこぼれの科学者だから」
船に乗っていた皆が笑い周りの景色を見ながらトムは良い仲間に巡り会えて良かったと実感したのだった。
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