第21話 フォーク村で、その2
歌の聞こえる方に歩いて行くと。
【兎追いしかの山~、小鮒釣りしかの川~、夢は今もめぐりて~、忘れがたき故郷~】
聞こえて来た歌は驚く事に前世の日本の童謡で故郷だった。
トムは懐かしさの余りその場に立ち止まり最後まで聞き歌い手を見ると、あの孤児の1番年長の少女だった。
少女に近づき。
「今、歌っていた歌は誰かに習ったの?」
「歌を聞いていたのですか?恥ずかしい。歌は私が生まれた故郷の歌です。此の世界の歌ではないのですが・・・・・・・・」
トムは此の少女は自分と同じ日本からの転生者では無いかと思い切って。
「君の故郷は、もしかして日本?」
少女は驚きの余り目を見開き。
「な、何で! ・・・・何故?・・・・・・日本を知っているの?・・・・・・もしかして・・・・トム様も・・・・・・」
「やっぱりか! そうだよ。俺も日本人で、転生者だよ。君もそうだろう」
少女は涙を流して泣きながらトムに抱き着き。
「ウワーン、ワーン、ワーン、 寂しかった! 寂しかった!・・・・・・ワーン・・・・」
トムも涙を流して優しく少女を抱きしめて頭を撫でながら。
「もう大丈夫だよ、此れからは俺が一緒だから、君を守るから安心しなさい。所で君の名前を教えてくれないか」
少女は落ち着いたのか、真っ赤な顔をしてトムから離れ。
「ナナリーナです。前世の名は田口美沙です」
泉の畔のベンチに座りナナリーナの話を聞くと、彼女は此の世界では14歳で12歳の時に両親が流行り病で死んで孤児院に引き取られて暮らしていた。
前世では大きな建設会社の娘で父親の仕事を手伝う為に大学は建築科を卒業して1級建築士の免許を取り、父親の会社で働いていたが。
26歳の時に自分の設計したビルの建築現場で上から釣り上げていた鉄板が外れて落ちてきて前を歩いていた老女が危ないので突き飛ばして助けたが自分は鉄板の下敷きになり死んだらしい。
トムも自分の前世を話すとナナリーナは。
「前世の年は3歳しか違わないのね。でも2人とも他人を助けて死んだのは似ているわ」
色々話したがナナリーナのスキルが気になり鑑定の目を持っている事を話して彼女のステータスを見て見ると。
名前 ナナリーナ
人族 女 14歳
称号 建築士
レベル・・3(最大10)
生命力・・50(最大100)
魔力量・・500(最大1,000)
スキル
創造の魔法
見た内容を教えるとナナリーナは目を輝かして喜び。
「称号が建築士なのは前世で建築士だったお蔭かしら、それに私、魔法を使えるのね。嬉しいわ。トム様、魔法を教えてくださいね」
「うん、良いよ、うーん、前世が同じ年くらいの人に様を付けられると嫌だな」
「ウッフフフ、そうね、お互い両方の年を合わせるとおじさんとおばさんですものね、じゃぁ2人だけの時はトムさんと呼ぶわ」
「うん、そうしてくれ。それと俺はこの村を小さくとも国にして、異種族が平和に暮らせる国にしたいと思っている。建築の経験を生かして手伝ってくれないか」
「こちらからお願いしたいくらいだわ。この村に来て今まではゴブリンやオーガは邪悪な魔物と思っていたけど、ブソンさんやドガさんを見て人間にも悪人と善人がいるように魔物や魔獣にも悪人と善人がいる事が分かって良かったです。だからトムさんの言うような国作りを是非手伝わせて下さい」
「ありがとう、前世の知識を持っているナナリーナが手伝ってくれるのは心強いよ」
前世が同じ日本人で転生者だと分かりトムはナナリーナを妹のように感じて必ず幸せにしてあげようと思ったのです。
昼からの話し合いにはナナリーナも参加させる事にして集会場に行くと名前持ちの6人が集まっていて、村長のブソンが発言して。
「人口が増えすぎて、この場所は神木のある神聖な場所なのでここに、これ以上建物を増やす訳にはいかない。此の近くに村を移転してはどうだろう」
ブソンの意見に皆が賛成したが問題は移転する適当な場所があるかだ。ラガーが少し考えてから。
「此処より少し奥にあるにはあるが、チョット不思議な事にその場所だけ森の中にあるのに
荒れ地なんじゃよ」
どんな所なのか見に行く事にして翌日に村を出て目的地に歩き始めたが人が入った事のない未開地なので道も無いジャングルで神獣(白銀狼)ゼッが辺りを警戒しながら先導し、オーガキングのドガが斧で木の枝などを切り落とし2時間くらい掛かって歩くと、突然前方の視界が開けた。
視界が良いはずだ、何と50メータ位の断崖絶壁でその先は何故か所々に草が生えているが岩だらけの荒野だったのだ。
ナナリーナが荒野を見て。
「まるでグランドキャニオンみたい」
ナナリーナが言った通り荒野は目算だが周囲10km四方はある森の中に荒れ地で不思議な場所だった。
瞬間移動で荒れ地の中央付近に移動すると水の流れる「ゴウゴウ」とした音が聞こえ音のする谷の方に歩くと、谷底は幅100メータ位の河で大量の水が音を立てて流れていた。
深淵の森の主であるラガーが驚いて。
「まさかこの森の中に荒れ地があるのは知っていたが、荒れ地がこんな場所で河が流れているとは・・・・・・・・」
皆も深淵の森の中にある荒野の谷底を流れる大きな河に驚き見入っていたのである。
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