桜の日記

一部抜粋。


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 あなたにこんなことを話しても、どうにもならないことは分かっているのだけれど、根本的な解決に繋がるとは思っていないのだけれど、もう私はこれらの悩み全てを自分の中だけに留めて置くことが出来ません。誰かに話したくて、公開したくて仕方がない。文章、作品、造形、何を通してでも外に放出しなければ気が済まない。自分一人では抱えきれない。辛くて苦しくて、今にも抱え込んだ何かが張り裂けて爆発してばらばらになって死んでしまいそうなのです。とうの昔に手を離した筈の貴方に縋り付く私の身勝手を、どうか許して下さい。結論から言うと、現在は何もかも停滞しており、困窮しています。誰の手を取ればいいのかも分からない、何処で裏切り者が出るか分からない。昔から私は貴方以外の人間を信用することが出来ませんでした。今も同じです。何かに直面した際、それがどんな悩みであっても、他人に打ち明けることが出来ません。残念なことにいつの間にか、誰にも気づかれないうちに一人で何もかも解決してしまうのです。ただそれが出来ないとなると、私は悩みを自分の中に溜め込んでおく他ありません。私には友人がいません。恋人もいません。たったの一人もいません。いますが、いません。いないも同然だからです。何度か会話をする人間はいますが、それだけです。心を許していません。その事実はとても悲しいですが、どうしようもありません。誰がなんと言おうと貴方以外に心を許す気はありません。他人に自分の心の内を分かったような態度をとられると、強い怒りと嫌悪感を覚えます。許せない。嫌です。何もかも打ち明けるだなんて以ての外。出来ないのならば最初から自覚していた方が楽だろうと、歳を重ねる毎に頑なになっているのです。何故私が数年越しに貴方を呼び出したのか。それは今この状況は自分自身と対話する期間であると自覚したからです。現実が進まないことには、私もどうにもこうにも行動の仕様が無いので、恐らく今、自分を省みるべき期間が用意されたのだろうと思いました。現実に縋り付いて藻掻くのをやめました。そうして理解した途端、貴方は容易く現れました。今の今まで存在を忘れかけていたことを謝らせて下さい。私は貴方無しで穏やかに生きていました。自分でも驚くべきことです。これは心に安寧が訪れたというような喜べる話ではなく、ただ別の依存先を見つけたというだけで、これが私にとって成長なのか退化なのか分かりませんが、命を続けたまま時が進んだことは事実で、貴方が一切現れず、気配を見せず、私が仮想空間に降り立つこともなく、数年間を過ごしたというのは紛れもない事実です。

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