第30話 目が覚めて

気がつくと、そこは白い部屋だった。

体が動かない。

動かそうとすると、あちこちに強い痛みを感じる。

「あぁ、あぁ」と声が出る。

僕の家族と麻美が近づいてくるのが見える。

僕は「あゆみは?・・・」と言いかけて再び意識を失った。


再び、目が覚めた時、事故から2ヶ月後が経っていた。


そして、その事故で、石川さんは亡くなった。

僕が殺したようなものだった。


僕は毎日、心が張り裂けそうで、苦しくて、辛かった。

心の奥底から、不安と恐怖が湧き上がってくる。

胸の奥から湧き上がる黒い、黒い感情に飲まれ続けた。

体は回復しても、大切なものは戻らない。


そして、僕は学校に行かなくなった。

毎日、家でぼうと過ごす。

まるで壊れた人形みたいだっただろう。

石川さんの家族に謝らなければと思いながら、会うのがどうしても怖かった。

麻美が何度か家に来たみたいだが、僕は一度も会わなかった。


悲しみや後悔や恐怖が強すぎて、たまに体の震えがとまらない。

僕は、自分の心を紙にたとえ、くしゃくしゃに丸めて、意識の外側に置いておくイメージを何度も思い浮かべた。

そうするうちに、本当に何も感じなくなっていった。

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