第29話 事故にあう

でも、幸せは長くは続かなかった。


僕らの町には、国道が通っていて片側一車線の狭い道だが、交通量が多い。

自転車で、石川さんを後ろに乗せて、2人で夜道を走っている時、僕らはそこでトラックにぶつかった。


すごい衝撃を受け、吹き飛ばされる。

一瞬の後には、アスファルトに倒れてた。


目の前には石川さんが、真っ赤な血の中に倒れていた。

顔はこちらを向き、血だらけだった。

こちらを見ている彼女は、人形みたいに固まっている。


石川さんのところに行きたいが、僕は体が動かせない。

いつかの金縛りみたいだ、なんて呑気なことが浮かぶ。

あの時と違うのは、どうやっても動けない。

そういえば、あの時の体験はまだ彼女に話せてない。


なぜか、体があったかくなってくると、それが自分の血の暖かさだと気づく。


意識がぼうとなって目の前が暗くなっていく。

石川さんの瞳は、僕をずっと見つめていた。

「あゆみ・・・」僕は声が出ていただろうか。


そして僕は意識を失った。

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