第22話 スキー教室
スキー教室の当日。
学校に集合した生徒は、バスで、スキー場へと移動する。
バスの割り当てはクラスごとだ。
スキー場に着くまでは、バスの中でカラオケなんかをして楽しんだ。
平日のスキー場は人が少なく、ゲレンデは、白一色で慣れるまでは目が痛かった。
ここから、クラスから、上級、中級、初級にメンバーが分かれる。
それぞれのグループは、各クラスのメンバーも、ごちゃ混ぜでだった。
僕は石川さん、若目田さん、桜木、郡司くんと一緒に初級に分けられる。
みんな初級グループだった。もちろん、他の同級生もたくさんいた。
まずは傾斜の緩い初級者コースを、10人くらいづつ、先生がチームに分けて教え始める。
僕は、石川さんとは別のチームになってしまったが、若目田さんとは一緒だった。
「残念だったね」
若目田さんが言う。石川さんと別チームになったことだろう。
「うん。残念だよ」
「前よりも自分のことをはっきり言うようになったね」
「そうかな」
「うん。前はもっと、もじもじしてた」
「そうだったかな」
「いいことだと思うよ」
「うーん。ありがとう」
とりあえず、褒められたようなようなので、お礼を言う。
しかし、若目田さんには僕の気持ちはもうバレているんだな、と思った。
やがて、それぞれのチームで練習が始まった。
あっち、こっちでチームになった生徒と先生が練習を初めている。
同じコースのちょっと遠いところで、石川さんのチームも練習をしていた。
午後にはみんな少しづつ滑れるようになってきて、初心者でも少し傾斜や曲がりのあるコースに挑戦し始める。
僕のチームと石川さんのチームも、最初よりちょっと難易度の上がったコースで練習していた。
僕のチームは、ある生徒の上達が良くなく、みんなそれに合わせてハの字でゆっくりと滑っていた。
その時、石川さんが自分のチームから外れて勢いよく飛び出していくのが見えた。
コントルールができていない滑りかただった。
危ないと思った僕は、先生が気づく前に彼女に向かって行った。
石川さんのスキーは、スピードが出過ぎている。
ただし、止まりかたがわからず、出過ぎたスピードに怖がっている感じだ。
僕は、すぐに追いつくと、ちょっと距離を置いた横から「体ごと倒れて!」と大声で叫ぶ。
石川さんは、体を横に倒れ、スピードは弱まったがそのまま体こと滑り続けて、コースから外れた葉っぱのない木の中に入っていった。
僕も、そこまで追いつく。
スキー板を外し、彼女のとこまで急ぐ。
彼女は、コースを外れた木の中で、窪んだ箇所に倒れていた。
木にあたった様子はない。
「大丈夫?」僕は叫ぶ。
石井さんは、スティックを持った右手を上げ、横に振って答えた。
板のついた状態で、くぼみに頭を下にして転んでいるから、動けないのだろう。
顔の近くまで行って聞く?
「怪我はしてない?」
「大丈夫。板、外してくれない?」
「わかった」
僕は彼女の足に移動して、両足のスキー履から板を外す。
「ふぅう」
彼女は大きく息を吐く。
「怖かった」ちょっと涙目で僕を見てくる。
「こっちも見てて怖かった」
「助けてくれてありがとう」
「いいよ。本当に怪我はない?」
その時、彼女は、突然に僕に抱きついてきた。
「大丈夫」
彼女が、小さな声でいう。
「本当によかった」
僕もいう。
「おーーい」
「大丈夫か?」
先生たちがやってくる気配がする。
僕らは慌てて離れた。
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