第21話 冬の帰り道
季節は変わり、冬。
学校の制服もすっかり、冬服に変わる。
たまに雪が降り、10〜30cmくらい積もった。
自転車で通学するには少し危ない。
3人の部活の帰り道。
冬だから、夏よりもずっと暗い。深い闇の中で、電灯のあかりだけが僕らをほっとさせる。
僕は、雪の積もった田んぼに道から大の字でダイブして、足跡を残さず道にジャンプで戻る。
そして、その辺に落ちている木の棒で大きく、SOSって書いて遊んだ。
石川さんと、麻美からは何してるの?って、苦笑いされる。
でも、2人も寒いながらも冬の雪を楽しんでいた。
石川さんは、雪に猫みたいな跡をつけている。
麻美は、小さな雪だるまを作っている。
田んぼには、SOSと書かれた人型の跡と、隣に猫の足跡、その横に小型の雪だるまという変な3点セットができあがる。
今日の夜は雪は降りそうにないから、明日まで残るだろう。
明日の朝の通学で、小中学生や高校生が見た時に、なんだこれ?
となる姿を思い浮かべて、僕たちは楽しんだ。
うちの中学は、スキー場がある山が近くにあったから、スキー教室があった。
スキーのうまさを、自己申告で上級、中級、初級に分かれる。
僕は小さい頃から、ほぼ毎年、親にスキーに連れて行ってもらっていたので、スポーツが苦手な僕でもスキーにはそれなりに自信があった。
「君は、どれにするの?」石川さんが聞いてくる。
「石川さんは?」
「私は初級。ほとんどやったことないから」
「じゃ、僕も初級」
「じゃあ?」
「なんで、ダメ」
「いいけど、それはもっとうまいってことじゃない?」
「そうだけど。でも、一緒に滑りたいから」
「う。そっか、そっか」
石川さんは、恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうだった。
僕らのやりとりを麻美は、静かに聞いていた。
3人が呼吸するたびに、白い息が空に舞っていく。
暗い空の下、僕は心が温かかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます