第18話 金魚すくい
3人でお祭りの出店を見て回る。
綿菓子を食べ、りんごあめを食べ、焼きそばを食べた。
お面屋さんやおもちゃっぽいものを売ってるお店を冷やかして歩く。
たまに、同級生とすれ違ったけど、みんな親しい相手ではなかった。
そろそろ、辺りも暗くなり始めていた。
「金魚すくいしよう!」
金魚すくいの店を見つけると、麻美がまた僕らの手を引っ張って連れていく。
先にいた子連れの家族が、ちょうど終わって別のお店に行くところだった。
それとは別に小さい子どもたちが、僕らの間に入ってきた。
僕らは、子ども、麻美、子ども、子ども、石川さん、僕。の順番で並んだ。
「ちょっと割り込まないの!」と言う母親らしい女性の声がする。
僕らは、それぞれお金を払い、薄い紙が貼られたすくい棒とお椀をもらう。
広い屋台だが、子どもが6人も並べば窮屈だ。
僕は、小さい子どもたちと一緒に座り込んで、金魚すくいを始める。
石川さんと僕は、腕や足がくっつきそうな距離にいた。
この距離感は、あの時以来だな、と考える。
よし、やるぞと水にすくい棒を入れると、隣の石川さんがどんって押してきた。
びちゃん。
「あ」
僕のすくい棒の紙がダメになる。
「え? そんなことする?」
僕が石川さんに言う。
彼女は笑顔で、ベーってしてきた。
そして楽しそうに笑う。
この、ベーも久しぶりだった。
僕はあきらめて立ち上がるが、すぐにしゃがんだ。
「どうしたの?」
石川さんが聞いてくる。
「あ、ちょっと、僕は向こうに行ってるよ」
立ち上がった時に、見えた人影に見覚えがあった。
それは、前に高井くんが絡まれた3年生だった。
うちの3年は怖い。
僕は、今日、絡まれたら、この二人も目をつけられるんじゃないか、そう思った。
金魚すくい中の二人を置いて、僕は人混みを離れた。
「え? ちょっと」
「なにー?」
二人の声が背中から聞こえる。
僕は人混みをかき分けて、人通りの少ない路地裏に出た。
ちょっと離れただけで、祭りの音が遠くに聞こえる。
自販機があったので、とりあえず水を買って飲む。
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