第2話 はじめての告白
中学1年のはじめ、石川さんと麻美は、別のクラスでそれぞれ違うグループにいた。
彼女たちが一緒にいるところは見たことがない。
仲が悪いグループということじゃない。
単純に中学校の1学年の人数が多かったから、僕も名前だけ知っていて接点がない生徒はたくさんいた。
だから、彼女たちの接点は、最初、僕しかなかった。
彼女たちが接点を持ったのは、僕が告白された時だった。
ややこしいけど、彼女たちのどちらかから、告白を受けたわけじゃない。
麻美の同じクラスの女子からだった。
その子と僕には接点はないが、なぜか僕を好きになってくれたみたいだった。
僕は、顔を知っている程度で名前さえ知らなかった。
誤解しないでほしいのは、僕はモテるタイプではない。
小柄でお調子者だったから、母性をくすぐられる的な感じで興味を持ってくれる人だったのかもしれない。
まず、授業の休憩時間に、麻美が僕のクラスに来た。
僕のことを呼んでいると、声をかけてきたのが石川さんだった。
僕は一瞬、状況が分からなかった。
僕の好きな人が、僕の幼馴染が呼んでいると言っている。
どういう状況?
よく分からずに、廊下にいる麻美のもとに行くと、ちょっと来てほしいと呼ばれて、人通りの少ない廊下のほうへ連れて行かれた。
そこに、顔だけ知っている女子がいて、もじもじしていた。
麻美も、彼女を残して一度消える。
その子は、僕に手紙を渡して読んでほしいと言った。
手紙を受け取って、はじめて告白だと気づいた。
手紙には、告白と一緒にこのことは誰にも言わないでほしいと書いてあった。
手紙を受け取り、僕が呼んだことがわかると、もう一度麻美が出てきて、ちょっと考えてみてと言って、帰って言った。
僕がクラス近くの廊下に戻ると、面白半分についてきた同級生が、手紙を見せろ見せろと騒いだ。
僕は、自分に起こったことがまだよく分からなく、ちょっとぼうとしていた。
人生で初めての告白を受けたのだから。
中学になってからは、麻美とは少し疎遠だったので、久しぶりに話したな、とか考えていた。
いつの間にか、手紙が僕の手から奪われて、同級生が勝手に読んで騒いでいた。
誰にも言わないでと書かれた一文が、心に引っかかっていたが、中学生の僕には、彼女を持つとか、付き合うとかは、全然ピンときていなかった。告白されたこと自体が恥ずかしかった。
だから、「やめろ」「返せ」とふざけ半分で、のっていった。
少しだけ心が痛んだが、恥ずかしさの方が上で、照れかくしが大袈裟になってしまった。
その子には本当に申し訳ないと思うけど、それだけ中学生の僕は子どもだった。
そんな一連の僕らの行動から、石川さんも事態を把握している感じだった。
僕は、彼女のことが気になって、チラチラ見ながら、騒いでいた。
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