第101話 AMS治療方法発表ー1
黒と白のキューブ事件として、今日の事件は世界中を駆け巡った。
歴史を調べると同様のことが過去に世界で起きたことが判明する。
キューブ攻略を行うための大部隊が忽然と姿を消したとされているケースはもしかしたらこれが原因だったのではないかと議論された。
今では30名を超えるような大部隊は編制されることなどないが、今後このようなことがない様にダンジョンには20名という規定が作られることとなる。
「凪……よかった。痛いとこは? 傷残ってないか?」
自宅に帰った俺は凪を抱きしめながら頭をなで続けた。
しつこいぐらいになで続けた。
よしよし、うーん、凪は可愛いな。
「さすがにもういいかな。はい、時間ですんで、終わりです。先にシャワー浴びてきますね」
そういって凪が俺の腕から離れて行ってしまう。
これがお兄ちゃん離れなのか、さっきまでデレデレしてたのに、急に温度が下がったな。
お兄ちゃん、温度差で風邪ひくかと思ったぞ。
あの騒動の後、俺は事情だけ説明し解放され、今は自宅に凪と一緒に帰った。
一応他国からの援軍であるということになり、その辺は細かいことは分からないが偉兄やハオさん、そして悪沢会長がうまくやったとのこと。
彩達とも別れ、凪もつかれているだろうということで今日は一旦家に帰った。
「じゃあ、凪。しっかり休むんだぞ」
「はーい」
凪がお風呂に入って休むというので、俺は俺で自分の部屋に戻り久しぶりのゆっくりした時間を過ごす。
俺も少し考えたいこともあるし。
「さてと……」
俺は自分のステータスを再度確認する。
あれからA級キューブを7回攻略した俺のステータスは。
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名前:天地灰
状態:良好
職業:覚醒騎士【覚醒】
スキル:神の眼、アクセス権限Lv2、ミラージュ、ライトニング
魔 力:951185
攻撃力:反映率▶75(+30)%=998744
防御力:反映率▶25(+30)%=523151
素早さ:反映率▶50(+30)%=760948
知 力:反映率▶50(+30)%=760948
装備
・龍王短剣=全反映率+30%
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「次でおそらく100万越え、超越者。今までの経験からすると多分真・覚醒になるための何かが起こると思うんだよな……」
それは勘でしかない。
でも今までの経験上、いきなり飛ばされたりするのだから覚悟したほうがいいだろう。
といっても何ができるのかと言われると食料を持っていくぐらいのものか。
それよりも今悩むことはこの二つ。
「このチケットだよな……」
それはA級ダンジョンを攻略して手に入れたチケット。
特殊スキル獲得チケット、二つ目からはもらえなかったので一枚しかない。
淡く白光を輝かせる真っ白なチケット。
このチケットのステータスは。
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属性:アイテム
名称:特殊スキル獲得チケット
入手難易度:S
効果:破ることで使用可能。
特殊なスキルを一つ獲得する。
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「特殊なスキルかぁ……」
それはスキルがもらえるという破格の性能のアイテムだった。
例えば隠密や、挑発、ファイアーボールなんかがもらえるということだろうか。
正直滅茶苦茶美味しい、それに特殊! もしかしたらライトニング並みのすごいスキルがもらえるのだろうか。
「悩んでても仕方ないか……」
俺はチケットを握りながら、眼を閉じる。
鬼が出るか蛇が出るか、スキルが増えるんだ、損するということはないだろう。
「おりゃ!!」
俺はその白いチケットを思いっきり破り捨てる。
白色の光が粒子となって俺の体にまとわりつき吸い込まれていく。
「……終わりか?」
俺は自信のステータスを見た。
特に変わったことがないが、スキル欄に一つだけ見たことのないスキルが追加されていた。
「心会話?」
それは心会話と書かれたスキル。
俺はステータスの詳細を見る。
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属性:スキル
名称:心会話
入手難易度:S
効果:言葉ではなく、心で会話できるようになる。
魔力を持つ対象のみ使用可能。
このスキルを発動させて描かれた文字は、触れるだけで理解できる。
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「……おぉ!? これって!!」
俺が思い出すのは、あの石碑と脳に直接響くあの声。
神の試練と覚醒ダンジョンにあった石碑には全く読めない文字が掘られていた。
しかし触れた瞬間理解できた、おそらくこのスキルで書かれたものなのだろう。
そして、いつも無機質で脳に直接響き理解させられるあの声も、そしてあの黒い種族が話す言葉も。
「あれってこのスキルなのか? ちょ、ちょっと試すか!」
俺は急いで凪の部屋に走っていく。
勢いよく扉を開けてしまった俺、思春期の妹に対する行動としては最低だった。
「凪! ちょっといい──」
「うーん、少し下着きつくなってき……!?」
そこにはどうやら胸が大きくなってきて下着が入らなくなった妹がいた。
小学生のころからそういえば下着買いなおしてないもんな、うん、今度買ってあげよう。
欲しい者なんでも買ってあげよう、お兄ちゃんは金持ちだからな。
さて、いくら払えば許してもらえるか。
とりあえず、大きくなったな、凪。
「あ、あ、あ……」
プルプルと震える凪、前かがみで後ろ手で下着を外したポーズで固まる。
真っ赤な顔で、ア、アと言葉にならない言語を話す。
「まて、えーっと? おぉ、確かに凪の感情が言葉に乗って飛んでくる! 今の凪が言いたいことは」
「アホーー!!!」
「ぶへぇ!!」
俺は思いっきり殴られて、部屋を後にした。
A級の凪の一撃は俺じゃなきゃ首が折れてたな。
…
「はい、二度とノックせずに乙女の部屋に侵入しません。大変申し訳ございませんでした」
その後リビングで正座しながら、凪に精一杯謝った。
昔は一緒のお風呂にも入っていたような気がするが、さすがに中学生の妹にすることではない。
凪が俺の前で腰に手を当ててプンプンと怒っている。
怒っていても可愛いんだからやはり俺の妹は最高だな。
「もう、お兄ちゃん! 私は攻略対象じゃないんだから、そういうラッキースケベは彩さんとレイナさんにやってよね!」
「そうか、凪は対象じゃないのか。実は義理の妹設定が隠されている可能性は」
「残念ながらありません! こんなに目元が似てるのに……で? 何か用事があったんじゃ」
「そうそう、えーっとな」
俺はペンと紙を取り出し、絵を描く。
日本語とは呼べない落書きだが、スキルを発動させて魔力を込める。
その絵には俺の伝えたいものを込めて。
「なにそれ、牛?」
「ち、ちがうわ。この絵触ってみてくれ」
俺はその絵を凪に触らせる。
おそらくこのスキルの力なら理解できるはず。
「う、うそ!? これって……」
「あぁ! わかったか!」
「嘘でしょ……これで、猫?」
「…………」
どうやらスキルは正しく効果があったようだ。
俺の心は若干傷ついたが心の試練を超えた俺はこの程度では揺るがない。
「これわざと分からないように書いたんだよね?」
「ガハッ!!」
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