第86話 in上海in中国ー2
「ささ、こちらにお座りください。灰様」
俺はハオさんに案内されてその円卓の一番端に座ろうとした。
周りには30人近いS級全員が俺を見る、その威圧感はまさしく世界最強のギルドの構成員。
闘う神と書いて、闘神ギルド。
そして、その闘神とはたった一人を差す。
それが救国の大英雄こと、二つ名を『闘神』。
かの『暴君』と同列の存在、超越者 王偉(ワンウェイ) 。
俺はそのステータスを見た。
そして理解した、噂は本当だったんだと。
この目の前に座る優しそうな青年は、本当にあのアーノルドとタイマンできるほどの化け物じみたステータスを持っている。
S級の鬼達を蹴散らして世界を救うほどの力を持つ。
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名前:王偉(ワン・ウェイ)
状態:良好
職業:神仙(真・覚醒)
スキル:如意棒召喚、疾風迅雷、斉天大聖
魔 力:1654000
攻撃力:反映率▶70%=1157800
防御力:反映率▶80%=1323200
素早さ:反映率▶50%=827000
知 力:反映率▶50%=827000
装備
・なし
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(すごいな……本当にアーノルドとも真っ向から勝負できる。やっぱり魔力100万を超えている人は真・覚醒という職業になるのかな……レイナもそうだし)
『ん? どうした? 灰君。座らないのか?』
「灰さん! 王さんがお座りくださいと」
「え? あ、あぁ! すみません」
俺が促されたまま席に座ろうとすると、一人の男が声を上げる。
『ちょっと待ってください、王さん。ここは闘神ギルドのメンバーだけが座れる円卓ですよ? この日本人が見学にくるのは聞いています。入団されるのなら許しましょう。でもそうじゃないなら座らせるのは俺は反対です』
『俺はそのつもりだけど? まぁまだOKもらってないから入るかどうかわからないが。相変わらず、細かいねー。リンは』
『王さんが大雑把なんです。ルールを絶対守れとはいいませんが、守れるだけは守るべきです。そもそも試験もまだでしょ? この人。そういうところはしっかりしてほしいです』
なにやらリンと呼ばれる中国らしき男が何やら揉めている。
年は大学生ぐらいだろうか、とても若く見えるが眼鏡をかけてアニメとかに出てくる生徒会の委員長のようだ。
ルールにとても厳しそう、まじめを絵にかいたような。
『へいへい、代表なのにいまいち俺に権力ないんだよな。じゃあやる? リンが。灰君の戦闘試験。いらねぇと思うけどな……』
『わかりました。魔力は25万ほどなんですよね? なら俺で十分です。胸を貸しましょう』
『一応協会がS級として認めた時は登録はその数値だって。一応測定するか、一階にあったよな? 測定器。んじゃいこうぜ!』
「え? ハオさん。なんか皆さん立ち上がりましたけど?」
「えーっとですね。すみません、灰さん。どうやら今から灰さんの実力を見たいそうです、そちらにいるリンさんとの模擬戦闘で。すみません、こんなことになるなんて。一応見学だけと言っているので止めてきましょうか?」
「あー、そういうことですか。わかりました。いいですよ」
俺はそのリンという委員長を見る。
その眼鏡越しに目があった。
品定めするような目、好意的ではないが、別に敵意があるわけでもない。
ただルールを守れと俺を見る。
「俺もS級と一度は戦ってみたかったんです。俺がトップギルドのS級相手にどこまで戦えるのかを」
俺の対人戦の経験は少ない。
殆どが滅神教しか人としては戦ってこなかった。
だが彼らは、プロではない。
攻略者のように戦闘のプロではない。
だから世界トップギルドの攻略者がどの程度強いのか俺は知りたかった。
(……というのは建前か)
だが、本音を言うと俺は少しワクワクした。
こういうところは相変わらず攻略者なのかもしれない。
戦いは好きだ、痛いのは嫌だし死ぬのはもっと嫌だが、それでも手に汗握る戦いは好きだし冒険も好きだ。
みんなだって、格闘ゲームが好きだろ? 俺にとってはそんな感じ。
しかも今日は命がけではなく、腕試し。
ワクワクするなと言うほうが無理だった。
だから俺は通じない言葉でリンさんに伝え頭を下げる。
「対戦お願いします、リンさん」
おそらく俺の意思を感じ取ったであろうリンさんは俺を一瞥する。
『対戦になればな』
…
「灰さん、訓練場が実はこのビルの地下にあります。相当頑丈に作られていてS級の戦闘にも耐えられる設計になってますんで。あと一階で魔力測定もしましょうか」
「了解です」
その後俺の魔力測定を一階ロビーで行い、魔力測定を済ませた。
正直必要ないのだが、神の眼を持っているからと言うわけにもいかないので、甘んじて受ける。
魔力石を使って作られた魔力測定器をはめ込んで、魔力測定を行った。
俺の魔力はステータスと同じ25万という数値が表示される。
魔力測定器は久しぶりにつかったが、やはり全く同じ数値を叩きだす。
ちなみにこの測定器、S級の魔力石も使うので数十億する超高級品だ、それを一つのギルドが持つあたり闘神ギルドの金持ち具合が伺える。
「じゃあ地下に行きましょうか! 中々広くて驚きますよ!!」
ハオさん達に連れられて俺達は一階からさらにエレベーターで下りて地下の戦闘訓練施設へと向かった。
なんだろう、漫画とかでよくありそうな戦闘訓練用の施設と言う感じ。
全面を鉄プレートで囲まれた巨大な部屋、形だけでみるなら神の試練を少し思い出すが広さはさらに大きい。
これは確かに頑丈そうだ、アーノルドぐらいの力がないと壊せないだろう。
「では、灰さん。ここにはS級のヒーラーもいらっしゃいますので、ご安心ください! 死ななければ全快します。一応武器はなしで素手でお願いできますか? 殺さないでくださいね? あと死なないでください」
「はは、了解です」
他のS級達は邪魔にならないように階段を上って少し上に作られた観客席のような場所から見ている。
俺とリンさんは素手で戦うようだ、といっても殺し合いするわけではないので組手のようなもの。
『ハオさん、伝えてもらえますか? 私は魔力50万、あなたの二倍近く強いので胸を貸します。ベストを尽くせ、でなければケガをさせてしまうと』
『あーはは。了解しました』「えーっと。灰さん、リンさんは実力が見たいのでベストを尽くしてほしいとのことです!」
ハオさんが少し言いづらそうに翻訳している。
通訳は意図を理解して、適切な言葉に言い換えなくてはならない大変な仕事だ。
どうやら、リンさんは全力で戦ってほしいとのことなので俺はその通り実行することにする。
「わかりました」
ハオさんがそれだけ伝えるとその場を去っていく。
そして俺とリンさんだけがその場に残ることになる。
リンさんは構えた。
まるでカンフー、いや、中国なので当たり前かもしれない。
偏見だが中国人は全員カンフーが使えると思ってた、外人が日本人は全員カラテができると思っているように。
だが、リンさんの構えは映画でみるカンフーの達人その者だった。
攻略者として正しく戦闘訓練を積んできたのだろう、その構えに隙は無い。
『二人とも準備はいいか! えーっとAre you ready? 灰!!』
観客席から、ワンさんの声がする。
拙い英語で、俺に準備はいいかと聞いてくる。
俺は剣をしまって、素手で構える。
リンさんも同様に構えて俺達の視線が交差する。
そして二人は同時に叫ぶ。
『いつでもどうぞ!』
「OK!!」
その返事を聞いたワンさんが叫ぶ。
『GO!!』
戦いの合図を。
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