第83話 S級認定と追放ー4
◇アヴァロン 田中の部屋。
「会長! 一体なにが!!」
景虎は決議の後、アヴァロンへと向かっていた。
先ほど会見を部屋で見た田中がすぐに景虎のもとへ向かおうとしたところ、景虎がこちらへ向かっているとのことだった。
灰にも連絡したが連絡がつかなかったため、先に景虎会長に事情を聞くことにした。
灰のスマホは画面がバキバキに割れてしまったので修理中である。
「久しぶりにきたのぉ、アヴァロン。さすが民間。めちゃくちゃ豪華じゃ、金持っとるの」
「会長! 悠長なことを言っている場合ですか!!」
「落ち着きなさい、田中君。あと会長は止めたので景虎さん、もしくはお爺ちゃんでもよいぞ」
「何を冗談を言っているですか、会長。落ち着いていられませんよ。なぜ灰君が資格はく奪されて、会長が辞さねばならぬのですか!!」
「それがな……」
景虎は事の顛末をすべて田中に話す。
灰が単独でキューブを攻略したことがばれたこと。
そして悪沢が米国と話をつけて灰の資格を剥奪することでアーノルドに対する攻撃の罪を帳消しにしてもらったこと。
ただし証拠はないので、アヴァロンには何の影響もないということも。
「……そうですか。確かにアーノルドの件は痛手でした。世界中に放送されて、隠すことはできない。米国がそれを望んだというのなら……」
「いや、あのアーノルドが灰君の資格はく奪を望んだとも思えん。そういう事をするタイプではない、何か裏があるやもしれんな」
「剥奪することが狙いだと?」
「その可能性も多いにある。何か別の力が働いていると儂の直感が告げておる。灰君をこの国から外に目を向けさせようとする力が。悪沢はあれでこの国を守ろうと思っているからな、手段は褒められたものではないし、大国に従属することが日本の未来のためだと思っておる。それが間違ってるとは言わんがあまり儂とは考えがあわん……おそらく今回の件も外交上の取引があったと思っておる、灰君をこの国から追放し、外に目を向けさせろとな」
「……」
「……」
田中と景虎が向かい合う。
そして二人は何かに気づいたようにうなづいた。
「私も今、二つの国が思い浮かびました。彼の力を欲しているであろう大国の力が」
「そうじゃな、良くも悪くも彼の力は世界中が知ってしまった。その特異性も、あの眼のことは別としてもな。理解できていないのはこの国の国民達ぐらいかもしれん、悲しいことに」
「なんて馬鹿なんだと憤りを感じています。彼を手放すことがどれほど国益を損なうのか理解できていない、ネットでは灰君叩きが始まっているのですよ、ありえない。なぜこの国は成功しようとしている若者をつぶしたがるのか、大きな目で見れば自分達の利益になるというのに」
「それすらも情報操作をしているものがおるのかもしれんな。そういったことはこの国は疎いからの……もしかしたら本当にただの嫉妬だけかもしれんが」
景虎と田中はため息を吐いて今度について話し合う。
とりあえず景虎はしばらく様子を見て、田中は情報を集めるという方向で決定した。
「では、私は今から灰君の家にいって事情を説明してきます、今後考えられるかの国からのアプローチに関しても聞かないようにと」
「いや、田中君。儂は灰君がその申し出を受けてもいいと思っておる」
「な!? それは灰君が他国に言ってもいいという事ですか!? それはだめでしょう!!」
「いや、違う。力を他の国で蓄えてもいいということだ。文字通りキューブの数も桁が違うし、この国より随分と自由にできる。日本にはA級キューブですらたった三つしかないのじゃからな、だから力を蓄え、そしてこの国に帰ってきてもらう。大丈夫、彼が金で転ぶような男ではないと知っているじゃろ、ここには彩とレイナがいる。そして何より凪ちゃんもな。灰君にとって守りたい存在がたくさんこの国にはいる。何かあれば必ず手を貸してくれるじゃろう」
「……確かにそうですね。灰君ならこの国の危機を必ず救ってくれる。だが強くなければ何も為せない、ならば強くなってもらいましょう。青臭い思いを貫けるほどには」
「しかも瞬間移動、別にどの国にいようが問題ないじゃろう、呼べばすぐくるんじゃから! ガハハ!!」
「ははは! それはその通りだ。今や彼に距離という概念はないのでした、ならばどこで過ごそうが問題ない、電話一本で来てくれるのですから、稲妻の速さで」
「うむ、じゃから灰君には受けるように促してくれるか? かならず一回り大きくなって帰ってくる。いや彼なら十回りは大きくなるかもしれんな」
「わかりました、彼ならばさらに強く、もしかしたらアーノルドにも届きうると私は思っています」
「儂もじゃよ」
田中と景虎は再度笑い合う。
そうして田中は一度景虎と解散し、灰の家へと向かった。
◇一方 灰の家
「闘神ギルドをですか?」
「はい! 我がギルドマスターも大変に灰さんを気に入っておりまして、是非逢いたいと熱望しておられます。どうでしょう、一度旅行がでら来ていただくのは。最高のおもてなしをさせていただきますよ。それはもうVIPの中のVIP対応ですよ、旅費から何からこちらでご準備させていただきます!!」
「それは……すごいですね」
「お兄ちゃん、旅行? ワクワク!」
凪が少しワクワクして俺を見る。
旅行という言葉に弱いお年頃、沖縄の時と同じ反応だ。
しかも今回は海外なのだからなおさらだろう。
(見に行くだけなら……いいかもしれないな)
「灰さんが望まれるなら明日でもいけますとも、我がギルドは実は中国政府直属の組織でもあるのです、ですから多少の融通は何でも通りますよ!」
そしてハオさんが小さな声で耳打ちをする。
「中国の女性は綺麗ですよ? 灰さんほどの力と、その容姿なら全員望まれます、何がとはいいませんがね。ふふふ。綺麗どころ用意してます」
(え? それはエッチな感じですか!?)
俺は少しだけ期待に股間、失礼胸を膨らませる。
そういう接待は確かにあるのだろう。
だが残念ながら俺は未成年、でもそろそろ童貞を……って違う!
「ゴホン!! それは非情に残念ですが、今は大丈夫です。ですがそうですね……凪もつれて言ってもいいでしょうか?」
「それはもちろん!!」
(まぁ見るだけだし行ってみるか。海外って言ったことないんだよな……田中さんと会長に相談して入るかどうかは決めよう)
「わかりました、前向きに検討します。明日には連絡するので連絡先を頂けますか?」
「了解いたしました、良い返事をお待ちしております。あ、そうそう、最後になりますが米国よりは必ず待遇をよくしてみせますのでよろしくお願いしますね!」
そういってハオさんは資料をいくつか残して帰っていった。
その最後の言葉を理解できなかった俺は、すぐに気づく。
ピーンポーン
「あれ? ハオさん忘れ物かな? はーい」
「あ、初めまして。天地灰様。私アメリカのギルド『USA』のスカウトのものですが!」
そして全く同じような話が始まった。
あとがき
しばらくは許して。
新連載はじめました。
★キリがいいところまで楽しんで欲しいので21話一挙公開★
トワイライト・オフライン~デスゲームの続きは異世界で~
https://kakuyomu.jp/works/16817330650725203938
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