第82話 S級認定と追放ー3
「さすがですね! 素晴らしいお住まいです! いやーよかった。灰様がスカウト受付を自由にされていて。上位の攻略者の方は基本的に協会経由か、不可にされていますので」
俺はハオさんを家に上げていた。
ステータスを見るに、D級であり特段危険だとは思わなかったからだ。
それに、正直気になる。
世界最強を争うギルドが俺に何の用事なのか。
俺とハオさんは机をはさんで向かい合う。
凪がソファから顔を出してこちらを伺っているが、猫みたいで可愛い。
「まずはこの度は資格はく奪、大変心を痛まれているかと思います。そのような状況でお話を聞いてくださりありがとうございます」
ハオさんが立ち上がって、これでもかというほどの深々と頭を下げる。
「事情の詳細まではわかっておりませんが、灰様なりの正義があったと私この目で見て感じました。心の強さとでもいうのでしょうか、私年甲斐もなく震えました。あの世界最強の暴君に真っ向から立ち向かうなど、我が中華の大英雄ぐらいのものと思っておりましたので」
そういうハオさんは年は40ぐらいだろうか、優しいおっちゃんという感じ。
多分スカウトはこういう親しみやすい人の方が向いているのだろう、バリバリエリートマンよりは営業はむいているのかもしれない。
そして大英雄、おそらく闘神ギルドのマスターのことを言っているのだろう。
彼は中華の歴史上最大の大英雄と呼ばれているのだから。
「いえ、その軽率な行動がこの結果ですから」
「違いますよ灰さん。相手があのアーノルドだからこの結果なのです。強い方に正義が傾く。これが逆なら灰さんは全くのお咎めなしでしょう。だから灰さんが悪かったなどとは私達は思っておりません。すでに無力化されているのに皆殺しを強行したアーノルドにも非があるのだというのが我々の見解です。そしてあの女性は……銀野レイナ様の肉親であったことも調べがついております。アーノルドに傷つけられたものは彼が解除しない限りは治癒で回復できないこともね」
「……そうですか、全部知られているんですね。はい。少し前が見えてませんでした」
俺はその言葉に少しだけ救われる。
先ほどの記者会見の後ではネットでは俺が悪いと叩かれている。
SNSでは心無い言葉も投げられていたからだ。
『これもう滅神教のスパイだろ』
『【悲報】自己中のイキッた少年、日本を危うく滅ぼす』
『こんな奴がS級とは世も末、剥奪は妥当。むしろ投獄するべき』
俺は仕方ないとは思いながらもそういった言葉に少しだけ心を傷つけていた。
こういうものは見ない方がいいのだろうが、気になってしまうのは仕方ない。
彼らは事情を何も知らないので、俺がやったことだけを切り取れば完全に俺が悪だし批判されるのも仕方ない。
いや、事情を知ってても同じか。
そもそも俺の自己満でアーノルドをぶん殴ったのは事実だからだ。
「悪くないですか……少し……嬉しいです」
「お兄ちゃんは何も悪くないよ!! だってレイナさんのお母さんを助けようとしただけだもん!!」
横で凪がソファから顔を出して抗議してくる。
万の批判も凪のこの言葉一つで何とも思わなくなるのだから妹とは不思議だ。
「我々のマスターもそう思っておりますよ、灰さん。それでですね、話を本題に戻します」
「あ、はい」
「まず残念ですが剥奪はもう決定しております、日本ダンジョン協会が発行する攻略者資格がです。その結果どうなるかというと日本ダンジョン協会に所属しているギルドには在籍することができません。つまりはアヴァロンにということです」
「そうなんですね……あまり仕組みには詳しくなくて……」
「ご説明させていただきますね。そもそもダンジョン協会の組織図をご存じでしょうか」
そういうとハオさんは鞄からタブレットを取り出して何か資料を見せてくれる。
「ダンジョン協会とは各国に存在する世界的組織です。そのトップがダンジョン協会本部、これはアメリカのNYにあります。これが実質のトップとなりアメリカのダンジョン協会でもあります。かの合衆国はやはり世界的に影響が大きく中心だというのは昔から変わりませんね」
日本のダンジョン協会は、日本ダンジョン協会と呼ばれる。
中国なら、中国ダンジョン協会、ドイツならドイツダンジョン協会と大国にはそれぞれダンジョン協会がある。
その統括のようなものが、NYにあるダンジョン協会本部となる。
通称『世界ダンジョン協会』とも呼ばれるそうだ。
そっちのほうがわかりやすいので俺はそう呼ぶことにする。
「各国の協会にそれぞれ攻略者の管理は委任しております、いうなれば巨大なフランチャイズとでもいいましょうか」
聞き慣れない言葉だが、たとえばコンビニのようなものらしい。
某大手コンビニチェーンは、本部があるが、全国各地に支店のようにコンビニが立ち並ぶ。
それぞれのコンビニについては、契約しているオーナーに一任するという形だ。
そのコンビニのオーナが会長で、アルバイト達が、いうなれば攻略者や職員なのだろう。
「そういう形なんですね。で、それがどういうことなのでしょう」
「はい、ここからが本題なのですが我が国は、そして我が闘神ギルドはあなたを仲間として迎える用意があります。灰様とアーノルド殿のことはありますが……まぁ我が国はあの国と仲良しこよしというわけでもありませんので。それに我らが大英雄ぐらいでしょう、あのアーノルドの武力、いや暴力に対抗できるのは」
「え? それって……スカウトということですか?」
「はい!! 灰様に限り、我が国の協会で攻略者資格を再発行できるということです。これは我が国の政府も認めていて特例中の特例なんです、有能な覚醒者をお招きするために。中国籍は欲しいと思ったときで結構です。詳細はまたおいおい話すとして、我々が灰様に提供できる最も有益冶なものとすれば、我が国の管理するキューブに限り闘神ギルドのメンバーは自由に入る権利を持ちます、ただしS級キューブ以外ですがね。どうでしょうか」
「それは日本を捨てるという事ですか?」
俺がその発言は、日本を離れろと言うことなのかとハオさんに怪訝な顔で問う。
すると慌てたように、訂正するハオさん。
「いやいや、そんなことはありません。なんなら日本に住んでいただいても結構。ただし在籍していただきますと、我が国の有事の際はそのお力をお借りしたい、特に月に一度ですが我が国で今だ崩壊しているS級キューブから現れる魔物の対処です。色々と制約はあるのですが焦る必要はございません。まずはどうでしょう」
そしてにっこり笑ってハオさんは俺に提案する。
「我が国の闘神ギルドを見に来られては。我らが英雄『王』さんもあなたに心から会いたがっておりますよ」
外国に渡るという提案を。
あとがき
しばらくは許して。
新連載はじめました。
★キリがいいところまで楽しんで欲しいので21話一挙公開★
トワイライト・オフライン~デスゲームの続きは異世界で~
https://kakuyomu.jp/works/16817330650725203938
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