第54話 S級へー1

 あれから4日が経った。

凪の買い物や、引っ越しなどをしていたらあっという間。

空いた時間は俺は相変わらずB級キューブを攻略している。

他県にも足を延ばしならが日に二つの攻略をし、俺はついに今日B級キューブを合計10個攻略した。


「これで10個か……結構早かったな」


 つまり、今の俺のステータスは。


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名前:天地灰

状態:良好

職業:初級騎士(光)【下級】

スキル:神の眼、アクセス権限Lv2、神の眼

魔 力:121185

攻撃力:反映率▶50(+20)%=84829

防御力:反映率▶25(+20)%=54533

素早さ:反映率▶25(+20)%=54533

知 力:反映率▶50(+20)%=84829


装備

・鬼王の宝剣=全反映率+20%

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「S級……か、遂に」


 俺は今S級へと至っていた。

といってもS級の最下位ではあるギリギリではあるのだが。

魔力10万越え、日本で6番目に強い存在。


 アヴァロン所属、ギルドマスターで日本最強、天道龍之介。

ダンジョン協会会長、龍園寺景虎。

そして孫の龍園寺彩。

後俺は面識はないが、天野弓一という人がいる。

アヴァロンではないが、日本で二番目に強く大きいギルド『トリスタン』のギルドマスターだ。


 そして最後の一人は、銀野レイナ。

世界最強の女性と呼ばれる日本屈指、いや世界屈指の女騎士。

俺の憧れでもある。


「……クラスアップチケットか……」


 俺はキューブの中で拾ったチケットを見る。

このチケットは10枚集めると、あの騎士昇格試験のようなダンジョンにいけるのだろう。

ならすぐに使うべきなのか、それとももう少し強くなってからいくべきなのか。


「前は死にかけたしな……でもこの説明見る限りいつ行こうがあんまり関係ないんだろうな……」


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属性:アイテム

名称:クラスアップチケット(上級)(1/10)

入手難易度:A

効果:上級の昇格試験が開始される。

説明

10枚集めることで使用できる。

使用時のステータスによって難易度は変化する。

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「とりあえず、今日は会長に呼ばれているから向かうか」


 俺がS級になったことを昨日伝えた時、会長の景虎さんが今日の午後から話したいというから俺は会長宅へ向かうことにした。


「にしてもエクストラボスも正直もう相手にならないな……ステータスの暴力って感じだ」


 あれから毎日B級キューブを攻略し、エクストラボスを倒したが狼王あたりから相手にならなくなった。

この目の力もだいぶ慣れて、そう簡単には攻撃は食らわない。

油断はしてはいけないが、これならA級キューブも視野に入れてもいいかもしれないな。


 俺はそのまま会長宅へと向かう。

相変わらずの豪邸で、巨大な門の前に立つ。


ピーンポーン


「…………あれ?」


ピーンポーン


 チャイムを鳴らすが誰も出てこなかった。


「おかしいな……電話するか」


 俺は会長に電話することにした。

午後には向かうといったが、確かに今は11時。

少し早く来てしまったか?


「あ、会長ですか? 今家まできたんですけど……」


「灰君か、はやかったのぉ。すまんが、会議が伸びておってな。入って待っててくれるか? では、すまんがそういうことで」


プツ……ツーツーツー


 電話ごしに何かしらの会議の声が聞こえたので、忙しいのだろう。


 そのときだった。

鳴らしたが誰もでなかったインターホンから声が聞こえた。

透き通った声だった、どこかで聞いたような綺麗な声。


「どちら様ですか?」


「ん? あ、天地灰です。すみません、景虎会長から中で待っていてと言われましたので」


「そうですか……はい」


 すると門がガチャという音と共に扉が開く。

いつも彩が出迎えてくれるから知らなかったが、自動ゲートのようだ。


「今の声誰だろう、聞いたことある気がするけど……お手伝いさんかな?」


 俺はそのまま門を進んで、家の扉の前へ向かう。

ガチャという音がしたので、扉の鍵を誰かが開けてくれたのだろう。


 俺はそのまま扉を開いた。


 普通はそうするだろう。

誰かがインターホンで出て、扉が開いたのなら入ってくれという事だと思う。

それに家主である会長から中で待っててくれと言われたんだ、普通は何も疑わずにはいる。


 だから俺は、悪くない。


「ぎ、ぎ、ぎ、銀野さん!? ふ、ふ、服が!!」


 不可抗力なんだ。


「……鍵が閉まってるから……困ると思って……」


 目の前にはタオル一枚の銀野レイナさんが立っていた。

お風呂に入っていたのだろう、髪は濡れて体は濡れて、タオルは少し濡れて体のラインも見えている。


「いや、そ、それは助かったんですけど!! お、お風呂に入ってたのなら言ってくれれば!!」

 

 俺は慌てて手で顔を隠す。

でも指の間から少しだけ様子を見てしまう。

銀色の髪が濡れて肩にかかっている、一枚のタオルから見える胸の谷間に自然と目が行ってしまう。


「じゃあ……戻る」


「は、はい……」


 そういって何事もないかのように銀野さんはお風呂に戻っていってしまった。


「う、うわぁぁぁ……」


 俺はただそのモデルのように歩いていく後ろ姿を見つめてしまう。

タオル一枚、なのに絵になるほどにスタイルがいい。

顔が真っ赤に火がでそうになるが、それは逆では? とツッコミをいれそうになる。


 俺がそこで立ち尽くしていると。


「灰さん?」


「え?」


 直後後ろから声を掛けられる俺。

そこには、彩が買い物から帰ってきていた。


「もう来られたんですね! いってくれれば、一緒に買い物行きたかったのに……あ! 灰さん食べられるかなってお昼の準備しようと思って買い物にいってたんです!」


 両手の買い物袋を掲げ、笑顔で微笑む彩はとてもうれしそう。

あれからアーティファクトの力によりS級にふさわしい力を得た彩はある程度は戦えるため遠出はできないがスーパーぐらいには買い物にいけるようだ。

ずっと家にこもっているわけにもいかないので、景虎会長も苦渋の決断といったところ。


「灰さん……ここ濡れてますけど……もしかして」


「あぁ……銀野さんがお風呂から出てきて……鍵を開けてくれて」


「……も、もしかしてあの子裸で……」


「い、いや! タオル巻いてたよ? ちゃんと!!」


「もう! それでもあの子はほんとに!! すみません、レイナはちょっとその辺の感覚がおかしくて」


「そ、そうみたいだね……」


「灰さん……顔が真っ赤……ちょっとぐっときちゃった感じですか? 裸体にちょっとぐっと来ちゃった感じなんですか!?」


「ら、裸体って……そ、そりゃちょっとびっくりしたというか、ドキドキしたというか……」


「はぁ……今度私も仕掛けてみようかな」


「何を?」


「何でもないです! とりあえずお昼まだですよね? 前の応接室で待っててください、作りますんで」


「ってそれよりなんで銀野さんが?」


「レイナはずっと昔からここに住んでます、だからこの前おじいちゃんが迎えに行ったんですよ」


「あ、そうなんだ……知らなかった」


「そうですね、協会内では有名ですが別に公表されているわけではありませんから。では、ちょっとお待ちください」


 そういって彩は料理に行ってしまった。

そうか、銀野さんはここに住んでいるんだ……それにしてもすごいものを見てしまった。


 応接室で待つ俺、しばらく待っていると銀野さんが今度はしっかりと服を着て現れる。

ラフな格好だが、こういう服装は結構ぐっと来てしまう。

短パンと半袖のルームウェアというかスポーティな服。

銀色の濡れた髪はシャンプーの匂いでぐっと来てしまう。


「あ、銀野さん! さっきはすみませんでした!」


 俺は出会いがしらに頭を下げる。

裸体を見てしまったのだ一発殴ってください、お願いします、むしろご褒美ですんで。

すると銀野さんはきょとんとした顔で、首をひねる。


「……何が?」


「え? あぁ……はは。なんでもないです」


「そういえば……レイナって呼んで」


「え!?」


「私も灰って呼ぶから。戦闘中は敬称不要、今から慣れて。それに敬語もいらない。仲良くする」


「い、いいんですか?」


 そういうと銀野さんはコクリと頷く。


「じゃ、じゃあ……レイナ?」


 俺は恐る恐る銀野さんを下の名前で呼んでみる。

違和感がすごいが慣れていかなければならない、確かに戦闘中に敬称は不要。

命が懸かっているのだから。


 そして返す言葉は、もちろん。


「よろしく。……灰」


 俺は手で顔を覆いながら一人悶えた。


「バキッ!!」


 彩のいるキッチンでか何かが壊れた音がした。


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