第51話 出会いー2

 おはよう、世界。

今私は横浜に来ております。


「といっても観光じゃないけどな……」


 翌日、俺は田中さんに報告した後にB級キューブに向かおうとしていた。


 田中さんには、AMSの治療ができたこと、エクストラボスのこと、色々一気に話した。

案の定、『また君は平然と世界が変わるようなことを……』と頭を抱えていたが、後は頭の良い皆さんにぶん投げよう。


 今俺が向かっているB級キューブ、このレベルとなるとそこら中にあるわけではない。


 日本でも各県に3つあればいい方だろうか。

ということで俺は東京周辺に三つあるB級キューブの一つ、神奈川県の横浜みなとみらいに来ている。

ちなみに、横浜の人は出身どこと聞かれると横浜と答えるらしい。

 

 大阪の人は大阪、東京の人も東京なのに、横浜と名古屋は都市名を答えると聞いたことがある。

本当にどうでもいい豆知識だが、それはきっと誇りなのだろう。


 キューブもこんな都会に降ってこなくてもと思ったが、協会が管理しているんでみんな安心しきって観光している。


「今日は午前中にB級、いけそうならもう一つ。体力的にしんどそうなら攻略はやめて新居を探して、凪のお見舞いかな」


 周りを見渡せば観光客だらけ、カップル、カップル、一つ飛んでバカップル。

イチャイチャしやがって、俺も彼女が欲しいし、食べ歩きとかしたい。


 心の中で叫ぶが、彼女はできたことはないのでいつか誰かと来ようと目に焼き付ける。

おいそこ、公衆の面前でイチャイチャ……キスしやがった! あいつらやりやがった!!


 赤いレンガの倉庫の周りでいちゃつくカップルたちを恨めしそうに見つめながら、俺は真っすぐ目的地へと向かった。


「ここが横浜のキューブか……人めっちゃ多いけど……ミラージュ」


 俺はミラージュを使用して、隔離されているキューブへと近づいた。


 そして見る。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

残存魔力:8500/10000(+100/24h)

攻略難易度:B級


◆報酬

初回攻略報酬(済):魔力+5000

・条件1 一度もクリアされていない状態でボスを討伐する。


完全攻略報酬(未):魔力+10000、クラスアップチケット(上級)

・条件1 ソロで攻略する。

・条件2 ボス部屋まで一体も撃破しない。

・条件3 ボスを5分以内に討伐。

・条件4 条件1~3達成後解放(エクストラボスを討伐する。)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「へぇ……一体も撃破しないか。あんまり今までの傾向とは違うな。でも俺は結構相性よさそうだ。それと案の定エクストラか……でも前より俺も強くなったし。大丈夫だろう……多分」


 そして報酬を見る。

クラスアップチケット(上級)、これはきっと上級の職業を得られるダンジョンにいけるんだろうか。


「10枚集める時はちゃんと準備しないとな、またいきなり飛ばされるのは勘弁だ」


 前回で一枚入手している、なので合計9枚集まれば俺は上級職へといけるのだろう。


 当分はこの上級職になることを目標にしようかな。


 俺はそのままエメラルド色に光るキューブへと足を踏み入れた。

凛とした音と共にいつも通りダンジョンへ、そこは雪山だった。


「雪山か……うん……退却」


 俺は秒でキューブを出た。


「いや、寒いわ。外夏だぞ」


 夏も終わりごろとはいえ、まだまだ残暑。

動きやすい服で薄着の俺はこのままでは雪山は攻略できないと思い先に服を買うことにした。


 近くのショッピングモールで、俺はモコモコのスキーウェアを購入する。

さすがに季節が違うのでセール中、いつかスキーにいくときにでも使おう。


「ありがとございましたーー」


 さて……リトライだ。


 急な予定変更により、今日は二つ攻略は無理そうだ。

時刻はすでにお昼に近い。

俺はミラージュを発動し、キューブの中へ、そしてスキーウェアに着替える。


「うーん、雪だな。ほんとキューブの中って不思議だ」


 洞窟、神殿のような人工物、森、そして雪山。

あらゆるステージが用意されているが、ここはいったいどこなんだろう。


「雪が降るってことは、自然現象?……あいつらを閉じ込めておくためなのか」


 だとするのなら、魔物達は原住民なのだろうか。

いや、どちらかというとここに閉じ込められているという感じもする。


「感情を持っているかどうかも怪しいけどな……」


 俺はそのままミラージュを発動し、進んでいく。

道行くなかで出会うのは雪と同じぐらい白い狼や熊もいた。


「これミラージュなしで、倒さず進むってのは中々厳しいだろうな……」


 俺は無人の野を行くがごとく進んでいく。


「魔物同士で殺し合いをしてるし……いったいどんな世界なんだよ」


 ミラージュを発動しながら魔物達の生態を見ていた。

奴らは人間を真っ先に襲うのだが、仲間ではないのか?

共通の敵が現れたら味方になるとかそういうのなんだろうか。


「考えてもわからないな」


 疑問は尽きないが、特に何も起きずに俺はボス部屋まで来た。

躊躇せずにボスの扉を開いた先には、巨大な白熊がいた。


「ジャイアントホワイトベアー……まんまだな。五分以内か……ステータスは……問題ないな」


 俺はステータスを確認し、自分の相手ではないことを確認した。


 ミラージュを発動し、一閃で首を刎ねる、真っ白な毛皮が血で染まる。

高級服に使われていると聞いたことがあるが、確かにこの毛皮は相当に高く売れそうだ。

セレブの家に毛皮が絨毯とかで敷かれてそう。


「ふぅ……さてこっからが本番だ」


 俺が先ほどまでの遠足のような気分を変えて、肺に冷たい空気を入れる。


『条件1,2,3の達成を確認。条件4を解放します』


 その無機質な音声と共に、ボス部屋の頭上が黒く塗りつぶされる。


「きた……やっぱりこれがエクストラ……」


 まるで宇宙のように、どこまでも広がっていそうな漆黒の黒。


 そこから降ってきたのは狼だった。


『条件4 エクストラボスを討伐せよ』


 巨大な狼、まるで神話のフェンリルだ。

だが、そこまでの存在ではないだろう、それこそS級に相当する魔物になってしまう。

真っ白な色に、凶悪な牙、涎を垂らしてこちらを見るその狼はトラック並みに大きかった。


 俺はステータスを見た。


「鬼王の次は……狼王か。……ウルフ系の王」


 それはウルフ種の最上位種。

俺の武器の素材だったハイウルフを超えた先にいるレッド種を除けばウルフ種の頂点。

魔物達の王、いわゆる王種。


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名前:狼王

魔力:30000

スキル:隠密、超嗅覚

攻撃力:反映率▶75%=22500

防御力:反映率▶25%=7500

素早さ:反映率▶75%=22500

知 力:反映率▶25%=7500


装備

・なし

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 俺はそのステータスを見る。

狼らしい優秀な二つのスキル。

隠密は、自身より知力よりが低い相手に認識されずらいというスキルのようだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

属性:スキル

名称:隠密

入手難易度:A

効果:自身より知力が低い相手には認識されない

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 それは正直めちゃくちゃ優秀なスキル。

だが神の眼を持ってる俺には隠密は効かないようだ。

それにそもそも、知力は俺のほうが高いので効果は薄い。


 そして超嗅覚? 俺はその詳細を神の目で見た。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

属性:スキル

名称:超嗅覚

入手難易度:A

効果:ウルフ種が持つスキル。

   嗅覚により、視界に頼らずに敵位置を捕捉可能

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「……ミラージュ看破されるじゃん」


 そのスキルはミラージュの天敵のようなスキルだった。

視界から消える俺のミラージュは、光の反射によって見えなくなるだけ。

なら超嗅覚により看破され俺の位置は常に捕捉されていると見たほうがいいだろう。


「……なんか鬼王倒せたから余裕もっていけるかなと思ったけど……」


 俺は自分のステータスと見比べる。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前:天地灰

状態:良好

職業:初級騎士(光)【下級】

スキル:神の眼、アクセス権限Lv2、ミラージュ

魔 力:31185

攻撃力:反映率▶50(+20)%=21829

防御力:反映率▶25(+20)%=14033

素早さ:反映率▶25(+20)%=14033

知 力:反映率▶50(+20)%=21829


装備

・鬼王の宝剣=全反映率+20%

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「……普通に強くねぇ?」


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