第39話 お嬢様とおデートですー2

「これがアーティファクト……」

 

 俺はその宝石の一つ、緑色の球を見る。


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属性:アイテム(アーティファクト)

名称:緑龍の魔力石

入手難易度:S

効果:防御力の魔力反映率25%上昇

  :素早さの魔力反映率10%上昇

説明

緑龍の魔石を、アーティファクトと化したアイテム。


適合者:龍園寺彩

適合者以外が触れると、崩壊します。

崩壊まで:00:00:10

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「え!? 適合者!? 崩壊!?  ちょっ!」


「失礼します」


 そう言って彩は俺の手からその緑の球を受け取った。


「では今はどう見えますか?」


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属性:アイテム(アーティファクト)

名称:緑龍の魔力石

入手難易度:S

効果:防御力の魔力反映率25%上昇

  :素早さの魔力反映率10%上昇

説明

緑龍の魔石を、アーティファクトと化したアイテム。


適合者:龍園寺彩

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「さっきの表示が消えたよ。適合者は彩になってる。ちなみにこのアーティファクトは防御力と素早さの反映率を上昇させるみたいだ。だけど……俺に効果がなかった」


「……そうですか。やはりですね」


「何か知ってるみたいだな」


「一週間おじいちゃんとたくさん検証させてもらいました。まずいくつかわかったことをお伝えします」


「いいのか?」


 その秘密は彩にとって生命線だ。

俺に教えていいのかと尋ねる。


「灰さんなら……信じてます」


「わかった」


 彩はこくりと頷き説明を始めた。

まずアーティファクトの元となる魔力石だが、A級以上でなければだめだそうだ。

B級以下ではすぐに壊れてしまうとのこと。


 そしてアーティファクトは複数もっても効果が生まれない場合がある。

これに関しては要検討だといっていたが、おそらく知力を100%上げるアーティファクトを二つ持っても200%にはならないということだろう。

もしそれができるなら、何十個もアーティファクトを持てばそれこそ無敵となる。


 彩の検討の結果だが、おそらく重複することはないのだという。

例えば二つのアーティファクトがあり、片方は10%、もう片方は15%上昇だとするのなら二つもっても25%上昇ではなく、15%上昇となる。


 だが知力と攻撃力を上げるアーティファクトならそれぞれ持てるようだ。

試しに彩が三つのアーティファクトをもって見せる、そしてそのステータスを見た俺は絶句した。


「化物かよ……」


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名前:龍園寺彩

状態:良好

職業:アーティファクター【覚醒】

スキル:アーティファクト製造Lv2

魔 力:325040

攻撃力:反映率▶ 25%=81260

防御力:反映率▶ 25%=81260

素早さ:反映率▶ 25%=81260

知 力:反映率▶200%=650080


装備

・緑龍の防=攻撃力反映率25%上昇、防御力反映率10%上昇

・黒龍の力=防御力反映率25%上昇、素早さ反映率10%上昇

・黄龍の早=素早さ反映率25%上昇、攻撃力反映率10%上昇

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「これで守ってもらわなくても大丈夫ですね、S級の攻略者に比べれば経験は浅いですが十分戦える力です」


「十分すぎるな……普通に俺より強いよ」


 そして先ほどの彩の仮設通りに、能力は重複しない。

各能力値には最大の値が反映されているようで、合計ではないようだ。


「灰さんならすぐに私を超えるでしょう。それで先ほどのアーティファクトの崩壊……ですが、私以外が持つと壊れるようです。おじいちゃんに持たせると10秒ほどで壊れてしまいました。しかも効果なしで」


「まじか……」


 俺は落胆する。

アーティファクトの力をあてにしていたが10秒で壊れるなら使えないとはいかなくてもあまり効果は薄いだろう。

時にソロ攻略を主軸にしている俺では、ダンジョンに持ち込むことはできない。


「ですが、私以外がもっても壊れない方法があります……」


「え!?」


 俺は少し大きな声を出して立ち上がる。


「……その前にまず説明しますね。これはA級キューブのボスからとれた魔石です。ちなみに値段は5億円。おじいちゃんの現役時代の戦利品の一つです」


「おっふ……」


 俺はその想像もできない額に思わず声が漏れる。

5億? バカでは? 宝くじかよ。

でもA級の魔石とはそのレベルの値段で取引される。

特にボスの魔石は大きく相当な値段であり、これ一つで東京の電力を一週間は賄えると考えればその力がわかるだろう。


 こんなに手のひらに収まるほどの小さな石が、東京中のエネルギーを賄える。

それを思うと変な気分になる。 


「あの日のこと、覚えてますか? 私が初めてアーティファクトの作成に成功した日のことを」


「忘れられないよ、さすがに。死にかけたんだから……」


「はい……あの日、灰さんが私をかばってくれて血を流した時。あなたの血が確かに私の口に少し入りました。記憶は薄いですが、血の味を確かに覚えています。そして、その後私の血が魔力石に触れた瞬間……アーティファクトができたんです」


「そうか、確かにそうだ。俺も覚えてるよ。ってことは血なのか?」


「……考察した結果……アーティファクトを作成するには……私の……ほにゃほにゃ……が必要です」


「ほにゃほにゃ?」


 とたんにはぐらかすように、彩の声が小さくなる。

今なんて言った? よく聞き取れなかったが。


「……液」


「えき?」


「……体液です」


「え?」


「体液なんです! わ、私の体液が必要みたいなんです。血だったり……よ、よだれだったり……その種類と量によって成功率が上がります。A級の魔力石は高価なのであまり試せていませんが……」


「あぁ……体液が必要なのか……じゃあこの三つのアーティファクトには彩のよだれが──」


「ち、ちがいます! 血です!! その三つは血! 涎じゃないです! 汗でも、とにかく汚くないですから! そんな目で見ないでください!!」


 冷静だったのに、とたんに顔を真っ赤にして否定する。

どうやらこのアーティファクトはすべて彩の血で作られたようだ、涎だと思うと少しだけエロいなとおもったのに。

もしかしたら体液って他にも……いや、それ以上はやめておこう。


「そ、それでですね。おそらくなんですが……」


「ん?」


「……灰さんの体液を私が口から摂取して、すぐにアーティファクトを作成すれば、おそらく灰さん用のアーティファクトができるんです……」


「……俺の? 俺の体液を口から? それって……エッチな感じですか?」


「へ、へんにゃこと言わないでください! セ、セクハラです! もうほんと……なんでこんな力なの……」


 彩が慌てて怒り出す、ごめん、確かに今のはセクハラだった。


「ご、ごめん……じゃあ俺の血とかってこと?」


「おそらく。でなければ灰さんがあの時アーティファクトを使えた理由がわかりません。だから……」


「だから?」


 彩が下を向きながら、声を絞るように震えていった。


「血を……少しだけ飲ませてください……できれば……直接……」


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