絆を繋ごう
「俺らに届けてくれるみんなの声が、もちろんいつも嬉しいんだけど。
でもこういうことがあって、より改めて、みんなの、俺らを応援してくれる温かい声がこんなにありがたいものだって感じたよ。本当にありがとう」
騒動から一週間と少し。『あろ〜ん』は、『彼』を除いた七人で生配信を始めた。個人や何人かのコラボ放送はあったけれど、全員が集まる配信はあれ以来初めてで、一人ひとり今の気持ちをファンに伝えるところから始まっていた。
「やっぱり、相方のゆーくんがいないのは、寂しいです。ずっと二人で歌も企画もやってきて、深い話もしたし、馬鹿みたいな思い出もたっくさんあります。
だけど、いま、君を楽しませ続けることが、俺たちの使命で、幸せだから。一人でも俺らを応援してくれる子がいる限り、俺らは君を絶対、絶対に笑顔にし続けるから」
七人の中で一番傷ついているはずの、『彼』の相方であるメンバーが、まだ安定しない声ではあるけれどファンに思いを力強く伝えている。すでに話し終わったメンバーも、いつもの茶化すようなムードを前面には押し出さず、話しやすいような雰囲気を作ろうと丁寧に相槌を打っていた。
「と、いうことでですね。これからも俺たち七人で、活動全力で頑張っていくので! 『あろ〜ん』を応援し続けてくれたら、嬉しいです!」
「いえーい!」
「やっちゃおー‼︎」
最年長のメンバーがそう締めくくり、いつものようなテンションとまではいかずとも明るい雰囲気を取り戻しつつある。
『伝えてくれてありがとう!』
『みんなの気持ちは伝わったよ』
『無理しないで』
『ずっとずっと応援します!』
なだれのように溢れては消えていく、同じような、だけど一つひとつに、強い、優しい思いが載せられたコメントの数々。
心の奥で燻っていた憤りがすっと引いて、違う何かが内側から込み上げてくるのを感じた。
──きっとまだ、大丈夫だ。
こんなにたくさんのファンから温かい言葉をもらって、メンバーが協力して頑張って、その後ろで先鋭の心強いスタッフさんたちがバックアップしてくれて。それでやっていけなかったら、もう嘘だ。
不思議と、目に溜まった涙は流れなかった。
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