ep12 皮シまさん
止まない痛みが、
焼いたイガグリを腹に詰め込んでシェイクされる感じだ――私は悶絶しながらごろごろとカーペットを巻き込んで回転、端まで行ったら逆回転し、元の地点に戻って再度回転して遊んでいた。
「全然楽にならねえ。何だこれ?」
きっと何かの毒物――それも洛臓に対してのみ働くような、私と落夢をピンポイントに狙ったものだ。飲食はしていないので毒ガスか?
それ自体はまあ、さほど驚かない。
このコンテスト自体、ビックリ人間を排除するための催しなのだから、それ以上の脅威である私たちを抹殺するのは筋が通る。
だが――それほどまで入念に危惧をしながら、なぜ彼らは
というか、ビックリ人間のストッパーとなる私にいきなり毒を撒く理由も分からない。何かがおかしい。
「なんか……色々と見逃してる気がするぞ」
「私もそう思うよ。名探偵さん」
いつの間にか暗室のイスに女が座っていた。カーペット
「どこから来た?」
「ドアから。夢中で回ってる時に」
ガリッ。
女は澄ました顔でカツオ節を齧る。その所作に見覚えがあった。
「Dr.アドレナリン……」
「そ。白衣は捨てたけど」
白いブラウスだったはずの着衣は、ベタベタと乾いた液質にまみれ見る影もない。全身に血も滲んでいた。
煙草が欲しそうな顔をしているので投げてやる。
「うげ、まずい……ありがとう。さっき見つけたものをあげるよ」
「タバコを齧るな」
彼女は閉め切られたVIPルームに明かりをつけ、天井を指さす。
ちょうど私の頭上、高天井に座すシャンデリアに、何かが引っ掛かっている。
「…………服? 坊さんが着るような」
「サイズも随分大きいね」
「どうにか落としてくれ、近くで見たい」
「いいよ」
女医はポケットからおもむろに大口径拳銃を取り出してシャンデリアを二回撃った。悲鳴めいた破裂音が聞こえ、百キロを超す鉄塊が私に落ちてくる。
「みぎゃーーーーーーーーっ!!」
「死んだ?」
絶対に殺すという気合で私は目覚め、シャンデリアに引っかかった服を手に取る。
裏地に触れた指の先に、妙な感触があった。
ざらざらと、魚の干物を撫でつけるかのような。
思いきって翻してみると、真っ黒な僧服の裏側に、茶色くて長い、かんぴょうみたいな薄い物体がへばりついている。
「……?」
襟首の辺り、かんぴょうの一部が裏地からはみ出て、くにゃりと折れている部分がある。
何気なく、その倒れた部分を引き起こして、私は絶句した。五つの穴が空いたそれは、中身を抜かれてクタクタになった人間の頭部だったからである。
このかんぴょうは、皮だけを残し水分を引き抜かれた人体だ……!
「うへぇぁっ!」
思わず投げ捨てたそれは、異様なほどに軽かった。
足元でグニャリと
「これは……
「冗談だろ……」
責任者一同を殺したはずの殺人鬼が、なぜこのような姿で死んでいるのか? 辻褄が合わん。
私がここに来る前に、ピュアマンがこれを為していた可能性は?
――ありえない。
人に出来る殺し方じゃない。
「……逃げた方がいいぞ、今の私は戦力外だ」
「うーん。実はもう、トリップしすぎて体が動かない。代わりに、今考えた最悪のシナリオを教えようか」
ズ、ズ……と、廊下から何かを引きずる音が聞こえはじめる。近づいてきたというよりかは、今そこに生じたような唐突さだ。
「前提として、このコンテストは出来レース……1人だけが生き残るように仕組まれている。それでもまあ、表向きにはコンテストだから、何かの競技を行うはずなんだ。なら一泡吹かせようと思ってね」
ズ、ズズ、ズ。
人声。「か。か。」
「情報が欲しくて、私は朝から色んな部屋を回ったけど、特に何もなかったんだ。残るはここらVIPルームだけ……警備兵が居なかったから、さっきウキウキで忍び込んだよ」
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「これがあった」
Dr.アドレナリンは、一辺が5cmほどのキューブを取り出した。図図図図図図図図図図図図図図図図図図図それが何の材質かは分からない。キューブ全面に、執拗なまでに図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図おふだ図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図が貼られているからだ。その立方体は、中心を貫く真っ黒い棒で破壊されている。
「きっとこの中に”何か”が居るんだ。それをどうにかして倒す競技だったんじゃないかなあって。ま、私には無理だね……」
図図図図図図図図図図図
皮シまです
声が聞こえる。
それは、図図図図図図もうへ図図図やのなかに図図図図いて図
「聞いてくれてありがとう」
図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図
気づいた時には、Dr.アドレナリンだった物が床の敷物になって落ちていて、私はシャンデリアの下でただ一人、生き残ってしまった。
「上等じゃねえか……」
握り込んだ拳で、シャンデリアを殴りつける。がらんがらんと鉄塊が揺れた。
洛臓は使えない――だがそうであっても、あの程度の怪異に舐められるのは『なんでも屋』の名が廃る。
「ただじゃ置かねえぞ、川島ァ!」
怒号と共に、私は
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