間章 その③

「ゆーしゃさまつよい……! カッコイイ!」

 長男のカントが勇者達の活躍に大喜びです。

 アルモニアは逆に不満気な表情。どうしたのでしょうか。

「おばーちゃん! いつものとちがう! おひめさまはたすけなきゃだめなの!」

 アルモニカを囮にしたのが気に入らなかった様です。

「お姫様は助かったじゃないか。それに、いつも同じじゃあつまらないだろう?」

「おひめさまは、もっとたいせつにしなきゃだめなの!」

「そんなもんかねぇ。どう思いますおじいさん」

「そうだねぇ。お姫様は大切にしなきゃいけないね」

「ほら! おじーちゃんもこういってる!」

 家庭内ヒエラルキーのトップであるおじいさんの言質を得たアルモニカは、鬼の首を獲ったかの様な喜びようです。しかし──

「でもね、お姫様よりもっと大切にしなきゃいけないものもあるって事だよ」

 続くおじいさんの言葉におばあさんがドヤ顔を決めていました。まさかの裏切りにアルモニカは驚愕の表情を浮かべています。

「それにね、優しく守ってあげるだけが愛じゃないんだよ」

「うー……わかんない!」

「かっか! アルモニアにはまだ十年早いよ。ま、その内分かるさ」

「はなえ(れ)ばなえ(れ)でたたかうふたい(り)。らう(ラブ)!」

 ピエッサの琴線には触れたようで、ご満悦です。

「おやおや。ピエッサの方がおねぇちゃんより良く分かってるじゃないか」

「あい!」

 おばあさんに褒められ、ピエッサは元気よく返事をします。

「よしよし。その後どうなったかは知ってるね?」

 おばあさんの問い掛けに、カントが答えます。

「うん! 大陸に攻め込んで来てた魔軍の兵は、このアコルディオンの戦いで八割以上もやられちゃったんだ。これを機に、大反抗に出たムーシカ軍が、僅か一ヵ月で魔軍の残党を蹴散らして大陸を再び取り戻したんだ!」

「それが勇者様達の狙いだったって事だねぇ。正に計画通りって奴だ」

「本当に勇者様達はすごい!」

「でも知ってるかい? 魔軍との戦いはまだ終わっちゃいなかったんだよ」

「え?」

 カントが読んだ事のある幾つかの本でも、魔軍との戦争はここで終わっていました。これは初めての展開です。カントの表情には驚きと困惑、そして期待がないまぜになっています。

「あたらしいおはなしだ!」

 対してアルモニアは、聞いた事のない話に素直に喰い付きました。

「ここからのお話は、殆どの人達には知られていない、密かに行われていた勇者様達と魔軍との戦いのお話だよ」

「わくわく」「どきどき」「あい?」

「あ、それは僕も聞いた事ないな。母さんもどうだい?」

「洗い物も片付きましたし、私も興味あります。いいですか?」

「ああ。構わないよ。それじゃあ話の続きと行こうかね」

 全員が着席したのを確認して、おばあさんは続きを語り始めました。

「再び大陸をその手に取り戻したムーシカ王国。だが、魔軍に蹂躙された北の地はそれはそれは酷い有様だった。先行きの見通しは明るくなかったが、それでも大陸全土を魔軍の魔の手から解放する事が出来た。これからの未来、北の復興と発展、そして勇者様達の勝利を祝す祭りが行われる事になった──」

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