二章 その①
「おおー! これは──」
ムーシカ王国の王都を出発してから五日。約一千キロメートル北上して辿り着いたのは、大陸の南北を分断するアコルデオン連峰のほぼ真ん中。東西約一千キロメートルに渡って大陸を横断するこの連峰にできた僅かな隙間、その幅凡そ二百メートル。その隙間をピタリと埋めるように造られた巨大な壁。高さはどうだろう……。百か二百はありそうだけど、遠くから見ると比較対象がデカ過ぎて、むしろ小さく見える。
左右の山は、山というより岩の壁だ。頂上は雲の上で、見上げても見る事は出来ない。
こここそが、例の北の砦、アコルデオン砦だ。アコルデオン要塞、アコルデオンの壁などとも呼ばれている。らしい。
ここの事は、王都を出発する前にざっくりとは王様に聞いて来ている。アコルデオン砦の歴史を記したっていう本も一冊借り受けて来ている。ここまでの移動の最中に少し読んでみたが、うん。何というか良く寝れました。
このムー大陸は地球で言うと、オーストラリア大陸を九十度回転させて、一回り小さくしたような感じだ。そのほぼ中央に巨大山脈がある。山脈の形状からすると、二つの大陸がぶつかって出来たのが今のムー大陸ではないだろうか。僕は専門の学者じゃないから、本当の所はわからないが。
つまりは縦の移動距離が長い。遠い。
地球の様に自動車か鉄道でもあればそうでもないんだけど、このムーシカ王国にはそんな気の利いた物は存在しない。何なら馬すら居ないせいで、馬車すらない! じゃあ普段長距離を移動するときはどうしてるのか疑問に思って聞いたら、「祈法で強化して走る」んだそうだ。馬鹿かな?
と思ったら、普通の祈法衛士であれば、北の砦まで丸一日掛からないそうだ。
一千キロ以上あるんだけど……。
速度も凄いが、そこまで体力が持つのも凄い。祈法恐るべし。
因みに一般の方々はどうなのかと聞いてみると、徒歩で十日程という回答だった。祈法は祈力があれば誰でも使えるという訳ではないようで、祈法屋とも言うべき商売をしている祈法士に頼んで身体強化の祈法を掛けてもらうそうだ。
今回も、クインは普通に走って行く
「流石にそれはない」
と僕が断ると、
「そうですか……」
クインは何故だろうかと不思議そうな顔をしていた。
そのくらい走って行くのが当たり前だって事か……。
僕だって『魔法』を使えばそのくらいは難しくはない。難しくはないが、疲れる。一千キロともなれば、相当疲れるのは間違いない。だから却下だ。相手がクインとはいえ、これには首を縦には振れないな。まあ? ぎゅっと手を握られながら上目遣いでお願いなんかされたら……。うふふふふ。って違う違う。兎に角、もう少し時間が掛かっても出来る限り楽な方法で移動したいという事だ。
そこで牛──に近そうな見た事ない動物だ──車用の車体が城内にあったので、王様に頼んで一つ貰い受けた。
「分かりました。これを私が押して走ればいい訳ですね」
「全く違う」
クインには僕が相棒を馬車馬扱いするような人間に見えているのだろうか? いや、この国には馬が居ないから、人力車スタイルは案外普通なのか?
「こうするんだよ」
僕が車体に『魔法』を掛けると、独りでに前に進み始める。
「凄い! 勝手に動いていますよ!」
車体は少し前進して停止する。『魔法』を掛け続けないと直ぐ止まってしまうのだ。
「という訳で、コレで目的地まで移動する。いいね?」
「でも、走った方が速いですよ?」
「これで! 移動! します!」
「はい!」
とまあそんなこんなで五日掛けて北上して来た。
本当はもっと早く着く予定だったんだけど、初日に調子に乗ってスピードを出し過ぎて車軸が折れるという大惨事に。車軸を直す技術なんて僕にもクインにもなかったので、近くの町まで押して行く羽目になった。立ち寄った町で無事車軸を交換出来たのは、王都を出発してから丸二日経った頃だった。それからはスピードを抑えて走らせ、何とか三日で目的地である北の砦に辿り着いた。
クインには、「やっぱり走った方が良かったんじゃ……」と言われたけど、いいんだ。コレの方が楽なのは間違いないんだから。
そして今、僕たちは目的地であった北の砦を見上げていると言う訳だ。
「確かにコレは……凄いな」
「私もここに来るのは初めてですが、本当に壁ですね……」
「だなぁ……」
クインは祈法と剣の実力の高さは評価されているものの、その若さからまだ前線には一度も出された事はなく、魔軍兵との戦闘経験自体はあるものの戦場は初陣になるそうだ。それも今回は最前線の激戦区だ。あまり気負っていなければいいけど。
そういえば歳は聞いてなかったなと思い道中聞いてみたところ、今年で十八だそうだ。僕も同い年である事を告げると、「奇遇ですね」と驚きながらも少し嬉しそうにしていた。僕も何か特別な事のような気がして嬉しくなった。
ただ、よくよく考えてみたら、この星の十八年と、僕があちこちの世界で過ごして来た合計十八年は果たして同じなのだろうかという疑問が。まあ細かい事は気にしないでおこう。
そんな訳で、伝聞と書物からの知識しかなかったクインも、僕と同じく初めて目の当たりにする北の砦の威容に、二人して圧倒されていたのだった。
「北の」とは言っても、寒風吹きすさぶ極寒地帯という訳ではなく、普通に暖かい。なんか想像と違うなと思ったが、元々単に王都の北側にあるだけで、単なる僕のイメージだった。なので門番も普通に外に立っている。
砦の南側入り口は大きな荷物が運び入れられるように、かなり大きく作られている。それも幾つも。ただ、砦の全体がデカ過ぎるので、どうしても小さく見えてしまう。
どこから入れば良いのかと迷う暇もなく、門番の方からこっちへ来いと声が掛かる。
「貴様らここに何の用だ。ここは今、魔軍との戦いの最前線だぞ。ガキはさっさと家に帰って家族と一緒に居ろ」
愛想がないようで、割と良い人な感じが隠しきれていない門番に、クインが応対する。
「私は祈法衛士クイン・エスメラルダ。こちらは異世界の戦士、日ノ守結希様です。陛下たっての願いをお聞き入れ下さり、こうして魔軍との戦の御助力に参りました。こちらの総指揮官である将軍閣下に御目通り願います」
「確かに貴様は祈法衛士の様だが……」
門番は胡散臭そうに僕の方を見る。品定めするような視線に晒されるが、むしろ受けて立つ。僕の実力を見極められるかどうか、逆に門番を品定めしてやる。
「ふ……む……。確かに、何か得体のしれないものを感じるな。相当に出来る奴だというのは認めよう」
ほう。この門番、中々見る目があるじゃないか。
「では──」
「それとこれは話が別だ。あからさまに怪しい貴様らを、はいそうですかと閣下に会わせる訳があるか。公式の書面か何かがあるのなら話は別だが」
うん。まあそうなるか。
強そうだからって、何でもホイホイ通してくれるワケないよね。
公的な立場を証明する物を、王様から貰っとくのすっかり忘れてたんだよね。気付いたのが砦に着いてからっていう。何というか、大々的に式典なんかやって周知したもんだから、もう関係各所には知れ渡っている物だと思い込んでいたのが失敗だった。
ネットも電話もテレビも無いかわりに、祈法による長距離通信の道具──
だけどクインは「問題ありません」と笑顔で言い切り、こうして門番に掛け合っているのだ。
「私と結希様がその証明です。遠珠を扱える方にお取次ぎ下さい」
「その必要はない。さっさと帰れガキ共」
「帰りません。さあ、早くお取次ぎを。あなたの将来にも関わって来ますよ」
「何と言われようと知った事か。帰った帰った」
取り付く島もない感じの門番相手に一歩も引く様子のないクイン。されど相手も
「どうしてもお取次ぎ頂けないというのですね?」
「ああそうだ。分かったらとっとと帰りな」
「分かりました。そういう事でしたら、こちらにも考えがあります」
ん? クインの雰囲気が変わった? これは……。
クインの気配が変わった事に門番も直ぐ気付いたようで、素早く腰の剣に手を掛ける。が、まだ抜かない。冷静だ。
クインの雰囲気が変わったのはほんの束の間。一分にも満たない時間だったけど、門番の警戒度は完全にMAXまで跳ね上がっただろう。クインは一体何をしたんだろう。
その疑問は、少し時間が経つと自然と判明した。
バタバタと急ぐ足音が聞こえたかと思ったら、入り口の扉が内側から勢いよく開けられたからだ。
「申し訳ありません! 結希様! お待たせいたしました!」
ゼェハァと息を乱しながら、クインと似た服を着た人が低姿勢で詫びている。多分この人も祈法士なのだろう。祈法を使っている気配がしたからもしかしてとは思っていたけど、砦の中の祈法士に直接呼び掛けたのだろう。恐らくは遠珠を通して。
「全く。門番は何をしていたのだ。結希様達が来られたら直ぐにお通しする用に伝えておいただろうに!」
「済まんな。全然悪いとは思ってないが、俺だ」
砦の祈法士が声に振り返ると、顔に驚きの表情を浮かべた。
「ク……クラビス様! こんな所で何を!」
「見ての通り門番だが?」
「そんな事は見れば分かります!」
「なら聞くなよ」
「そうではなく! なぜクラビス様が門番などしているのかとお尋ねしているのです!」
「あーうっせーなぁ。いいだろ別に。俺がどこでなにしてようが」
「聞きましたよ! 結希様を追い返そうとしていたと! 何をお考えですか!」
「何だ。知ってんじゃねぇか。だったら猶更しょうもねぇ事聞くんじゃねぇよ」
ガキに戦争なんかさせてんじゃねぇよ。
門番のおっさんことクラビスさんの漏らした呟きを、僕は聞き逃さなかった。そんな気はしてたけど、やっぱり悪い人じゃないな。
まだ祈法士の人は何やら言い足り無さそうだったけど、突如砦を振り返って動かなくなった。祈法の気配がする。何かの呼び出しだろうか。
「大変申し訳ございません結希様。至急の案件が入りました。案内はここに居るクラビスにさせますので御安心下さい」
「え。嫌だけど」
「既にモニカ様には報告済みです。結希様御到着と」
「チッ。手回しの良いこって」
「という訳ですので、御安心下さい。それでもごねる様でしたら殴り倒していただいても結構ですので」
「おい。上官に向かってそれはどうなんだ?」
「そうして欲しいのでしたら、普段からそれなりの振舞いをする事ですね」
祈法士の反論に、クラビスさんは返す言葉もない様子。自覚はあるんだ。
「それでは失礼致します。クラビス様。くれぐれもよろしくお願いしますよ!」
再度念を押していく祈法士に、「へいへい分かりましたよ」とクラビスさんも諦めた様子で、さっさと行けとばかりに手を振ってる。
祈法士が慌ただしく駆けて行くのを見送ると、クラビスさんが僕たちを面倒臭そうに振り返る。本当に嫌そうな顔をするなあ。
「チッ。しゃーねぇな。ホレ、行くぞ。付いて来い。いや。付いて来なくていいぞ」
と、こっちの返事も聞かずにさっさと歩き出している。
僕たちは勿論、クラビスさんに付いて行った。
「ようこそ! 地獄の玄関口、アコルデオン砦へ!」
クラビスさんに付いて行った先に居たのは、僕たちよりも年下にしか見えない少女だった。年の頃は十代半ば。一日の大半が山の陰に隠れているためか、彼女の肌はとても白い。金色の髪が良く映えている。
そんな彼女がふてぶてしい笑顔と共に僕たちを迎えてくれた。
「私がこのアコルデオン砦の総司令を務めるアルモニカ・エーレヒアだ。異世界よりの救世主、日ノ守結希殿とその従者クイン・エスメラルダ。両名を歓迎する」
クインを従者扱いしたことに少しカチンと来たが、クインは何とも思っていない様だ。公式の立場としてはそれで間違っていない訳だから、これで僕が怒るのはお門違いというものだ。ここは我慢、我慢。
クラビスさんは……しれっとアルモニカの後ろに立っている。祈法士さんの態度から割とお偉いさんなんだろうとは思っていたが、割とどころか、かなりのお偉いさんかもしれない。
「クラビス。ここまでの案内御苦労──と、言いたい所だが……」
アルモニカが後ろに立つクラビスを振り返ると、パアン! と大きな音を立ててその横っ面叩いていた。
「結希殿達を追い返そうとしたな? 間違いないか?」
「ああ。間違いないぜ」
パアン! と再び平手が。今度は逆の頬だ。
いたそーと思いながら二人の遣り取りを見守る。クインはビックリして目を丸くしてる。
叩かれている当のクラビスは微動だにせず叩かれているし、堪えた様子もない。こうなる事は分かっていたような感じだ。誤魔化そうともしなかったな。
「命令違反の罰はこれで済ませてやる」
「ありがとよ」
「毎度毎度叩くこちらの身になれ。こっちの手が馬鹿になる」
「じゃあ叩かなけりゃいいんじゃねぇか?」
「副官の貴様が命令違反などしなければ良いのだ! この馬鹿者がっ!」
総司令官である将軍様の副官殿でしたか。つまりはNO.2だ。アルモニカの年齢を考えれば、実権を握っているのはクラビスさんという事になるのかな。
「失礼した。こいつは先代からの副官でな。少々勝手が過ぎるところがある。実力はある男だから、私の制御下にある内は好きにさせているのだが、両名には迷惑を掛けたな。この大馬鹿者に代わって私が謝罪しよう」
アルモニカが僕たち──いや、僕に向かって頭を下げた。クインは同じ軍部の、命令系統が違うとはいえ階級的に随分下だ。眼中にないのかもしれない。
「はっは。この通り謝っているわけだから許してやってくれや」
まったく謝ってないクラビスさんが何か言ってるわ。
そんな調子乗ってたら……あ、今度は脛を蹴られてる。
流石にこれは本気で痛かったのか、足を抱えて飛び跳ねてた。まあ、自業自得だね。
「ところで、結希殿はここの砦についてどんな風に聞かされている?」
「一言で言えば、陥落間近だと」
「やはりそうか」
「へっ。王都の奴ら。勝手な事抜かしやがって」
「貴君らにも見て分かる通り、私はまだ十代も半ばの若輩者、しかも女と来ている。王都の連中からすれば不安を抱くのも致し方ない。そこに今までに倍する敵戦力がもうそこまで迫っている。具体的には明後日にも敵の大攻勢があるだろう」
「ハッ! 今までどれだけの敵をぶっ殺して来てやったと思ってんだ。倍どころか十倍だって蹴散らしてやる」
「威勢が良いのは結構だが、副官がいい加減な事を言うべきではないな」
アルモニカは僕を手招きして、外が良く見えるよう床まであるカーテンを開け、外を指し示している。砦の北側は山脈に挟まれた細い道──とは言っても百メートルくらいはある──が蛇行しながら数十キロに渡って続いている。
「まだ敵の姿は見えないが、ここから見えるあの道が敵で埋め尽くされる事になるだろう」
「良い的では?」
「フ。まあ確かにな。しかし、どんなに良い的でも、数が多すぎれば全て撃ち抜く事は出来なくなる。しかもその的はこちらに攻撃までして来るのだから始末が悪い」
ふぅ。とアルモニカは一つ溜息を吐いた。何か言い難い事があるような態度だ。
「今から私は司令官にあるまじき発言をする。今からの私の言葉は他言無用で願う」
僕がコクリと頷くとアルモニカも頷き返し、意を決して口を開く。クラビスさんやクインには問うまでもないという事か。
「次の魔軍の攻勢でこの砦は陥落する。私も含め、最後の一兵に至るまで敵を一匹でも多く道連れにしてやる
クラビスさんはアルモニカの言葉を苦々し気な表情を浮かべながらも、黙って聞いている。口ではあんな事言っていても、やっぱりちゃんと現状は把握しているんだな。
「前回の大攻勢で遂に、我が砦の戦力は往時の半分にまで減らされた。当時司令官を務めていた私の父も戦死なされた。本当ならば、あの時この砦は落とされていてもおかしくはなかったのだ」
「でも、こうしてまだこの砦は健在ですよね」
「お嬢のお陰だ」
「お嬢?」
「お嬢は止めろと言っているだろ。今の私は将軍、もしくは司令官のアルモニカだ。貴様もそう呼べといつも言っているだろう」
「周囲に示しがつかんとか言ってな。皆頭ん中ではお嬢って呼んでるのによ」
「将軍の座を継いだ私としてのケジメだ。だというのに、こいつと来たらいつまで経ってもお嬢お嬢と……!」
「そりゃあ俺達はお嬢の為に命張ってんだからな。国の為なんかじゃあねぇ。お嬢。あんた唯一人の為に、俺達砦の兵士達は全員、ここでお嬢と運命を共にする覚悟なんだからよう。お嬢はいつまで経ったって俺達の『お嬢』さ」
軽い調子で、
「御覧の通り、この砦には馬鹿しかおらん。私も含めてな。今のうちに元居た世界に帰られる事をお薦めする。先程も言った通り、この砦には馬鹿しかおらん。誰も結希殿が来た事など覚えてはおらんからな」
あの副官にしてこの司令官ありというか、良く似ている。
アルモニカの有難い御言葉に、僕は首を横に振る。
「気持ちだけ受け取っておくよ。僕には僕の目的があるから」
「そうか。聞いても?」
まあそう来るよね。うーん。言い辛い……。
「何だよ。何かやましい事でもあんのか? さっさと言っちまえよ」
僕がもじもじして中々言わないもんだから、クラビスさんが少しイライラしてらっしゃる。
仕方がない……。
ソソソ。っとアルモニカに近付いて耳打ちする。クインに聞かれるのは恥ずかしい。
「クインを守ってあげたいんだ」
クインを守るために、魔軍を倒す。それが僕の目的だ。結果的には国を救うことにもなるんだから問題ない。ないったらない。
僕の態度とその言葉で、ピンと来るものがあったようで、アルモニカは年相応の少女らしく、好奇心に満ちた笑顔を浮かべていた。
「それは実に興味深い。あ奴は従者兼見張りという訳ではないのか?」
アルモニカも僕に合わせて、こしょこしょと耳打ちで返してくれる。
「そういう面もあるだろうね。王都の人達にとっては。ただ、僕はクインの事を相棒にするって言ったし、クインもその心算で居てくれていると思ってる」
「一目惚れか?」
「う……。まあ……、そんな感じ……かな?」
「救世主殿も、人の子という訳か」
「がっかりした?」
「いや。むしろ安心した。それに、結希殿の事が好きになった」
「僕もアルモニカの事は好きだよ」
「おや。惚気たと思ったら早速浮気か?」
「クインには秘密だよ? 魔軍なんかより恐ろしい物を敵に回す事になるからね」
「おお! それは怖いな」
そう小声で言いながらアルモニカが肩を震わせ始めたせいで、それが僕にも伝染してしまった。
「うふふふふふ……」「あははははは……」
「「はーっはっはっはっはっはっはー!」」
ごにょごにょと内緒話をしていた二人が、突如大声で笑いだすものだから、クインとクラビスさんがギョッとした顔で僕たちを見てる! めっちゃ見てる! それがまた何だか可笑しくて可笑しくて、アルモニカと二人して、驚いている二人を指さしてお腹を抱えて笑ってしまった。
ふぅ──。あー笑った笑った。目の前のアルモニカもすっきりした表情をしている。やっぱり笑うのは大事だ。まあクインとクラビスさんの二人は、呆れた顔をしてたいけど。
よし。この空気なら言える。
「僕に一つ、策がある」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます