第16話 高い買い物

これはどういうことなんだ?

 と、唖然している亮に、クラウスが呼び出す。


「何をしている。お前も来るんだ!亮!」

「え、あ、はい!」


 そう言い、亮はすぐに立ち上がり、クラウスの後ろに付いて行く。

 一度店を退店し、秋葉原電気街に出る。そして、徒歩で5分ぐらい歩き出すと、どデカいパソコンショップに到着する。エスカレーターに乗り、パソコンコーナーに向かった。そこに、ペンタブコーナーに行くと、ずらっと、ペンタブが並んでいる。

 すると、クラウスは亮にこう呼びかける。


「この中から一つ選べ」

「…………すいません。ペンタブ初心者なので、どれがどれだかわかりません」


 クラウスは、うーん、困ったな、と手を顎に当てて考えだしてから、こう尋ねる。


「お前はどれがタイプだ?」

「えっと、タイプとは?」

「板タブ、液タブ。主に二つのタイプが存在する。板タイプは見た通り、板になっている。パソコンとは線か無線で繋げる。絵を描くときには板の上に絵を描く。すると、描いた文字は画面に表示される。描画の技術が必要になる。常に正しい位置を頭の中になければならない」


 そういうと、クラウスは展示されている板タブに◯を描く。その◯は繋いでいるパソコンに表示される。

 なるほど、パソコンを見ながら描くんだ。手元は黒い板だから、見てもわからない。

 と、亮がそう考えていると、クラウスが亮を呼び出す。


「お前も使ってみろ」

「あ、はい」


 亮も同じく◯を描く。これは凄い。自分が書いたものが、画面に写る。デジタルの世界はこのように描くのか。

 だが、少し不便も感じる。手元ではなく、常に画面を見て、感覚で掴む。これは確かに描画の能力を使う。


「じゃあ、次は液タブだ」


 クラウスは近くにある見本の液タブを差し出す。

 今度は液晶画面がついているタブレット。それに直接描けるようになっている。試しに◯を描いてみた。

 問題なく、◯が描かれる。これは板タブより便利だ。液晶画面に直接かけるため、絵画と同じ感覚で絵が描ける。


「液晶タブは言うまでもない、液晶をそのまま描けるんだ。便利で使いやすい。俺のおすすめだ」


 試しに落書きをしてみる。魔法少女アイリをS D化を描いてみる。

 問題なく描けた。

 これは凄い。

 と、亮はおもちゃを遊ぶように笑うと、こう答える。


「僕は液晶タイプの方が好きですね」

「よし、液晶タブで決定だな。だが、液晶タブもいっぱいある。ペンタブの滑らかさと液晶の硬さが違うだ。お前に一番合ったものを探せ。ここの中で試してみろ」

「は、はい」


 亮はここ一体を見回す。ここはペンタブだらけだ。この中で一番しっくり探すのも一苦労だ。けど、一台一台試していくしかない。

 そう思いながらも、亮はここにある数台の一台を試しに描いてみる。

 数台試したところ、亮は一つの台を試してみる。

 16.5インチの台に気に入った。


「これですね……え!?」


 値段を見た亮はびっくりする。

 価格は18万円。いいパソコンを一台買える価格だった。そんなものをサークル代表に買わせるのは、亮は気が引けた。


「あ、安いやつで……」

「何遠慮している。それぐらいの金は出してやるさ。お前が描ける環境ならばな」

「う、なんだか申し訳ないです」

「気にするな、神絵師からの贈り物だ」


 クラウスはなんとも無い様子で手を振る。

 大きな借りができてしまった。本来では自分で買うべきものを先輩に買わせるなんて、これは大切に扱わなければ。

 と、亮はクラウスへの感謝の気持ちでいっぱいだ。

 レジにて、取り扱い方法の説明を聞く亮。

 店員はマニュアルに従えば、特に問題なく、パソコンに繋げられると説明を受ける。

 そのペンタブの他にも描くためのソフトが必要と言われ、ソフトウェアを購入する。それもかなり高額なもの。

 無論、クラウスは全額を支払ってくれた。

 

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