第4話 神帝が為
「こんな時だと言うのに美しいものだな」
どっと2色に燃え上がる雪山ノ剣城を正面に構える小高い丘の上。
何もかも見透かしたかのような声が、そのがしゃがしゃとした鎧から湧き出た。
「朱の双刃では相手にならない領分ですかな」
「右派から借り出しておいて何を言う。貴様は青血に処理させたかっただけだろう?」
かっかっか、という何とも嗄れて気楽な声が鎧から漏れた。
いや、そう形容するには余りにも覇気を纏っている、老骨と自らを称した彼は、見てるだけでも煩いその漆黒の鉄甲を揺する。
反対に、針金のようにぴんと脇に立つ影のような男が畏まり佇んでいた。
「果たしてそうでしょうか。バレトロノ様の考えは私程度では読めませんよ」
「息を吐くように嘘をつくな。膨れ上がった、制御できない力は国盗りのついでに、か…。なんとも枢機卿の貴様ららしい発想だ」
またも笑う。
腰掛けた簡易な椅子の上、赤に閉ざされるメレス皇国の首都を見下ろして。
彼らに言わせれば、帝国の悪しき軍勢。その将。
喧騒と紅蓮に噛まれたこの国を落とした、その影の元凶であり、逆から見れば光に照らされた英雄。
蒼が、城に這う。
「……使うか?やはり朱の双刃程度じゃ奴には適わまい。最初から見越していただろう?」
「えぇ。全力の彼女が3秒後に私の喉元へ刃を突きつけていてもおかしくはありませんから」
「星の軌道の力か。あの炎さえも副次的な特異脳に過ぎないとな?」
「ですから、神帝はこれを使う許可を下さった」
見世物を眺める瞳で、彼らは落ちゆく城を俯瞰する。
手にした、禍々しい表紙の革本に視線を落とす。
「許可を」
「やれ。全ては我らが神帝が為」
「神帝が為」
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