第162話 勧誘と戦闘
「そこの君」
時は昼休み。腹を空かせた生徒たちが教室を出て、食堂に向かっている最中、とある人物に声をかける。
「はい、なんでしょうか?」
「ランス君で合ってるかな?」
「えぇ、スピアード伯爵家が次男、ランス・フォン・スピアードです」
ランスと名乗った男はアセレア学院高等部1-Sに属している。槍聖の称号の持ち主だ。その顔立ちは貴族らしく凛々しキリッとした顔立ち。戦闘時には邪魔になるであろう綺麗な緑色の長髪を一つ結びにして束ねている。
「わざわざありがとう。俺はリュークハルト・フォン・オーランド。近い未来俺に雇われる気はあるかな?」
あの後、高等部騎士科一年の天才達五人を説得したのだが、結局四人しか引き抜けなかった。Cクラスの中の一人に反帝国派がいて、争いに発展しかけたのだが、なんとか収まり、残りの四人を説得した結果四人とも一度家に持ち帰り親と相談するとの事だった。
まぁほぼ貴族の人間だし、跡継ぎの役目がある人間も居るしな。ここまま四人全員残ってくれればいいのだが……。
そして、五人と会話を交わした後、この槍の天才に話を持ちかけた訳だ。ちなみに、
「リュークハルト……。帝国の第三皇子か。オーランドという事は独立したのか。でもごめんね、僕はここに残るよ」
「その心は?」
「僕より強い人と会って、もっと強くなりたい」
なんだ、ただただ強さを求める人間か。ならば何としてもうちに勧誘したいものだ。
「そうかそうか。ならばうちに来ることを強く勧める」
「……その心は?」
「剣之帝 闘之神 槍之王 炎之帝 水之神 風之帝 土之帝 光之神 闇之帝 時空之神 氷之神 雷之神」
「……は?」
「俺の持つ称号だ。お前よりよっぽど強いだろ」
そういえば、光魔法ではアルト・フォン・フラウから光神の座を取り、闘神も会得していた。しかし、グロウスティアからは未だに剣神の座を奪い取れていない。レントも同様に剣帝のままだ。
「な……は? そんなことあるはずない」
「本当のことさ。それに、俺の
「……それは本当に本当のことなのかい?」
「この顔を見てみろ。嘘をついているように見えるか?」
「……嘘つきの顔に見えるよ、、」
ズコーッ
「仕方ないよリュートくん。リュートくんの顔は善人には見えないよ。素の顔なら、別に普通のイケメンなのに、なんか考え始めるとすぐニヤニヤして悪人顔になるんだから」
そうなのか……。
「キリッ」
「いやいや、口で言っちゃまずいんじゃないか? それに君は素の顔の方がいいらしいじゃないか。キリッとする必要はないんじゃないかな?」
「……」
そうなのか? という意を込めてシャルの方をむく。
何も言わずとも伝わっているようで、シャルはゆっくりと首を縦に振った。
「ゴホン。それじゃあランス君は帝国に来て俺に仕えるということでよろしかったかな?」
「強くなるためだ、仕方ないと言えるだろうね。ちなみに君の賜ってる爵位を聞いてもいいかな?」
「……」
俺は無言で人差し指を立てる。
「ん? いち?」
「君のお父上のひとつ上、辺境伯だ。君はこの学院を卒業したら是非とも武官としてウチに来て欲しい」
「辺境伯様の武官か~。夢があるね。いいね、それじゃあ二年後に迎えにしてもらえると助かるよ」
「りょーかい。そんじゃあこのこと、忘れんなよ。二年後、アセレア学院卒業と共にうちの領地へ案内する」
「わかったよ。よろしくね」
「あぁ」
ランスとはがっしりと握手して別れた。
「明日は高等部騎士科二年の教室を周って、明後日は中等部魔法科一年と二年を両方見よう」
「そうね。それよりも、条件の引き下げとかしなくて良いの?」
「もちろん。いざとなったらあそこに行けば多分大量にいるだろうし」
「そっか」
◇
side:
「レント!」
「ッ! 来たか!」
近くにいた兵士やイフリートを放ってから数分。シルフィードも疲れ始めたところで、ワンダー・スターム、アルギメイン、師匠が来た。
「魔族襲来、目測十人。即刻迎撃」
「な、なぜ私が呼ばれたのでしょう……? とりあえずシルフ出てきて」
「魔族ですか……。確か第三殿下が魔王と友好を結んだはずでは……」
「実にわかりやすい説明だレントッ! お前が仕切れ!」
三者三様の返答をいただけたところで作戦を考えなくては。
「……とりあえずあの一番ヤバそうなのはオレが受け持つ。ディアナのノルマは三体。シルフィードと師匠は二体。師匠は遊んでないでとっとと弱いの片付けた後、キツそうな所へ。アルギメイン大将とワンダー並びに精霊シルフで3人で二体。全員で十人分。散開ッ!」
帝城上空までやってきた魔族らを迎え撃つべく、作戦を伝える。
『了解!』
全員がバラバラに散る。まずはオレから。
「フッ」
身体強化を掛け、ジャンプ一番、魔族たちよりも上空へ飛ぶ。
「「インフェルノハリケーン!!」」
シルフィードとの合体技で魔族らを地面に落とす。
「貴様の相手はオレだ。裏切り魔族野郎」
「はっ。人間如きが。調子に乗るなよ」
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