第161話 魔族襲来


 side:Zymymarジミマイ


「忌まわしき人族め……。我が四天王になったからには滅亡させてくれる……」


「ジミマイ様、整いましたぜぃ」


「そうか。では手始めに帝国とやらを潰すとするか」


 つい先日、子飼いの商人が人族の、それも帝国の人間に捕らえられたと報告を受けた。

 だが嬉しい情報もあった。子飼いの商人を捕らえたのはリュークハルトと言う者らしい。魔王様と対等に話し合い、協力関係にある男。


 そやつが不在の帝国ならば簡単に落とせるだろうな。


「けっけっけ。ジミマイ様、充分な戦力の無い辺境から攻めますかい?」


「黙れネビロス。今回の作戦は魔王様にすら通していない話しだ。一気に帝都を攻めるぞ」


「クケケッ。それもそうですなぁ! では魔王様に気付かれないよう、少数精鋭で国盗りですなぁ!」


 煩い配下を持つとストレスが溜まるな。まぁ、これでも我が配下の中でも随一の実力者なのだから咎めるに咎められん。


「御託はいい。早く準備しろ」


「……ですから、もう整ってますぜぃ」


「……チッ。少数精鋭とか言ってたな。何人程度で向かうんだ?」


「えーっと、確かジミマイ様を入れて十人ですな」


 十人!? 我の軍隊は数万規模だぞ? 十人というのは些か少ない気がするな。


「本当にそれでいいんだな?」


「えぇ。魔王様は鋭いお方ですぜぃ。数百数千人もの軍人を移動させただけで勘づかれてしまいます。十人でも本当は多いくらいなんですぜぃ。ワイら七賢も動かすのに八王からも夢幻閥ドリームクラウンと、火蜥蜴サラマンダーの二人が来るらしい」


 ほぅ。まさに少数精鋭と言ったところだな。幻夢閥に関しては純粋な戦力として考えていいのか分からんが。


「それでは参るとするか。転移魔法を使っては魔王様に悟られる。魔都から少し離れたところで使用しよう」


 ◇


 side: Leonhardレオンハルト Vonフォン Starkスターク


「いいか? アニキは目眩しの後、転移で死角に移動する癖がある。目眩しされたら死角を警戒しろ」


 アニキが魔導帝国に向かってから数日。オレとディアナはアニキ対策と称してアニキの戦い方を学び手札を必死に増やしている。


「でも、それを読まれて、死角を突いた時に出来た死角を狙われたらどうするんスか?」


「それすらも読めばいい。ただ言えることは、アニキは死角を探す時に目を動かす。そこに注目するべきだ」


「なるほど……。参考になッ――」


「――シルフィードッ!!」


 ――ドォォォーン!!


 音がした方を見ると、帝都上空に煙が舞っていた。恐らくシルフィードの魔法防壁によって防がれた攻撃魔法だろう。


「――ッ」


 眩しくてよく見えないが、十人か? 人の形をした何かが宙に浮かんでいた。


「クソっ。そこの兵士! 至急グロウスティア、アルギメイン、アルを呼べ!」


「「「は、ハハッ」」」


 現状あのバケモンみたいなやつ対抗し得る戦力はオレ、シルフィード、ディアナ、グロウスティア、アル。アルギメインはイケるか?

 俺たち五人が二人ずつ相手するとして、アルギメインにはそのサポートに回ってもらうのが一番か?


「あ~、クッソ。なんでこんな時に居ねぇんだよ、アニキの野郎」


「レオンハルト様。ちょっともう持たないかもです」


「くそっ。マジかよ。他にも戦力に成りうる存在……」


 誰だ? 他に誰かいたか?


「我をお呼びか? 主よ」


 一瞬、炎が舞ったかと思えばイフリートが顕現した。


「イフリート! いや、お前は元々戦力として考えていた」


 イフリート? 精霊……。確か、第三魔法師団長ドライも確かイフリートと同じく上位精霊を使役していた気がする。名前は確か……エルフのワンダー・スタームと、シルフとか言う精霊。


「イフリート。シルフという精霊とその主をここに呼んでくれ」


「承知!」


 これでなんとか応戦は可能か……?


 ◇

 side:Ryukhardtリュークハルト vonフォン Arlandoオーランド


「なんかシャル、顔色悪くない?」


「そうかしら? なんでもないの。本当に平気」


「そうか? 俺は顔色悪くないか? としか聞いてないんだけど」


「あっ」


「まぁ、別に無理して言うことじゃない。悪い夢でも見たのか? ま、言いたくなったら言ってくれ」


「分かったわ」


 よし、そんじゃあ今日は騎士科高等部に行くか


 中等部の三年は既に卒業してるし、就職も決まってる。


 故に、次に行くのは騎士科高等部。


 確か、中等部も高等部も校舎自体は同じなんだよな。使ってるフロアが違うだけで。


 そんでもって制服は白ではなく黒を基調とした物に変わっている。ショルダーラインで学年を分けるのは変わっていないようだが。


 高等部に上がれば実践訓練なども増えるらしいし、白い制服だと一々汚れを気にしてしまうだろうし、そういう配慮もあって黒なのだろう。


 ちなみにショルダーラインは一年からオレンジ、金、白らしい。意図は分からない。

 金の前は普通銀だろ。


 そんでまぁ今日も今日とて見た目を偽装する。高等部に紛れ込むのだから、身長も偽装対象だ。それに合わせて少し顔立ちも変える。


「おぉー、リュートくんカッコよくなった!」


「そうか? シャルも充分可愛いぞ」


 顔立ちを変えたとは言ったが、今の自分の顔をベースに15才とかならこんなもんだろって感じで顔をいじったのだ。


「それじゃあ、一年の教室から見ていくか」


 そして四階フロアにある高等部一年の教室。

 1-D


「ちっ、不作かよ」


「やっぱり中等部の一年がおかしかったのかなぁ?」


「どうだろうな。乱数調整かもな。どっかで大当たりのクラスを引き当てるかもしれない」


 続いて1-C


「ほーら、言ったろ? 昨日から続いてた不作は乱数調整だったのかもしれないぞ。まさかの五枚抜き」


 二十人いるクラスからまさかの五人選出!

 激アツすぎる展開だな。


「全員応じてくれれば、の話だけどね」


「そういうこというなよ。せっかくテンション上がってんだから」


 続く1-B、1-Aはと言うと……


「まぁ、そうなるわよね」


「二クラス連続で収穫なしかよぉ」


「今のところ五人よ。次のクラスにいなくても割合的には一クラスに一人の計算。別に悪くないじゃない」


「そうは言うけどさぁ」


 ――ガラガラガラ


鑑定かんてー。おっほ」


「え? どうかしたの?」


 ◇

 名前:ランス・フォン・スピアード

 年齢:15

 種族:人族

 称号:スピアード伯爵家次男 槍之聖

 ◇


「槍聖がいる」


 齢十五にして聖位だと!?

 天才じゃないか!


 槍の才能値はまさかのA-。相当努力してんなぁ。


「武官として雇うの有りじゃね?」


「有りね」


 ◇

 ※あとがき

 覚えていない人のために。レント編の方に出てきた人は第155話の最後に出てきた人と同じです。

 ワンダー・スタームは58、68話にて登場。

 アルギメインは初期キャラ。

 グロウスティアは54話~少し登場済みです。

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