第157話 特定
「先程はお見苦しい所をお見せして申し訳ございません」
「別に構わん。申し訳ないと思っているのならこちらの質問には答えて貰うが」
「ッ。仕方ありませんね。私の落ち度ですので、ちゃんと質問には答えさせていただきます」
どうやらこのギルマスは話がわかる人間らしい。
「いい心構えだ。それと、そこの女」
「は、はい!」
「邪魔だ。出ろ」
「し、しかし……」
ギルマスと真昼間から盛っていた女はここから出ることを渋る。
「しかし、なんだ?」
「い、いえ。失礼します」
そう言って女は部屋を出ていった。あの女は部屋を出たあたくさんの視線に晒されることだろう。ギルド内にいた人間は、俺とシャル、受付嬢が応接間に行っているのを見たがあの女のことは見ていない。
しかし、全く知らない女が出てきたら誰もが察するのは当たり前だろう。
「さて、ギルマスさん。
「は、はい」
「ではまず、ココ最近色々と開発している人物を知っているか?」
「……」
……おいおい、初手から黙りかよ。
「知っているようだな。ではそいつの居場所を教えろ」
「しゅ、守秘義務がございます」
「おい、命あっての物種という事を忘れるなよ? その人物が貴様ら商業ギルドにどれだけ莫大な利益をもたらしているとしても、自分が死んでら金すら使えずに死ぬぞ?」
「い、言ってしまえばその利益すら発生せずギルドの収入が減ってしまいます」
……こいつ本当に商業ギルドのギルドマスターか? それともギルドマスターが悩むほどに転生者は莫大な利益をもたらしているのか?
と、なると今は俺も前世の知識を活かして父上の知り合いの商人と提携して組んで色々やっているが独立した方がいいのか?
「そうか。言う気はないんだな」
「は、はい! わかってくれましたか!」
「いや? 何一つわからん。こちらの質問には答えると言ったよな。じゃあ《全て答えろ》」
「彼の名はボウフナー・ヒダカ。住まいは―――」
◇
「結構簡単に聞き出せたね」
「まぁ、言魂を使えば一発だからな」
「ふぅん」
シャルは、じゃあなんで最初から使わなかったの? なんで野暮なことは聞かないし、言わなくても多分理解している。
ちなみに、その後ギルマスには闇魔法で俺たちと会った記憶を消しておいた。気がついたら女との交尾も終わっていて、大口の契約者いなくなってしまう可哀想なギルマスだ。
「それで、あの人はどうするの?」
「あいつはそのままだな。あいつがギルマスである限りアセレアの経済は
真に恐るべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である。とは裏を返せば敵が無能であればこちらも色々とやりやすいと言う意味だ。
「っと、ここだな」
ボウフナー・ヒダカが住んでいると教えられて来たのは、首都の中でも端っこの方。貧民街の方までは行かないが、一般的な平民が暮らすような家だ。かなり金を受け取っているらしいから貴族街の近くに家でもあるのかと思っていたが、こんなところにあるなんて驚きだ。
「随分と新しい家ね。壁が真っ白よ」
「入った金で新しく建てたのかもな。まぁとりあえず呼ぶか」
魔導帝国らしく、魔道具で作られた呼び鈴を使う。「ピンポーン」なんて音ではなく、高音で「チリリリン」って音がなった時は一瞬ビビった。
「はーい!」
出てきたのは20歳前半であろう女の人。整った顔立ちに綺麗な水色の長髪を結わずに下ろしている。
◇
名前:エデルガルト・アウヘンバッハ
年齢:23
種族:人族
称号:元・子爵令嬢
◇
どうやらボウフナーでもないし、ヒダカと言う苗字でもないらしい。なんなら元貴族ではないか。
「どちら様ですか?」
「ボウフナー・ヒダカという人物は知っているか?」
「知らないわ? 有名な方なのかしら?」
人差し指を顎に当てて首を傾げるエデルガルト。
「そうか。つかぬ事を聞くがご子息はいるか?」
「ホーちゃんのお友達かしら? 今呼ぶから待っていてね」
当たりらしい。どうやらボウフナー・ヒダカというのは偽名のようだ。
エデルガルトがホーちゃんとやらを呼びに行って約一分。再びドアが開き、小さな子供が出てくる。
「初めまして。ボウフナー・ヒダカで合ってるか?」
「僕の名前はホフナー・アウヘンバッハです」
◇
名前:ホフナー・アウヘンバッハ
年齢:5
種族:人族
称号:転生者 偽名使い 開発者 億万長者
武術
剣術 C
槍術 C
弓術 C
格闘術 C
魔法
火 C
水 C
風 C
土 C
光 F
闇 F
時 F
空間 F
無 C
錬金 F
生産
錬金 F
鍛治 C
資質
統率 C
武勇 C
政治 C
知略 C+
◇
ビンゴ。才能の方はThe凡人。魔法は基本となる四属性以外は全く使えないらしい。
『こんにちはあるいはこんばんは。君、日本人で合ってる?』
「――ッッ!」
「ごめんねぇ? うちの子共通語しかしゃれられなくて。エルフや他の種族の言葉は理解出来ないの」
母親は申し訳なさそうに言うが、ホフナーはちゃんと理解しているらしい。
『反応を見るに日本語を理解し、元ネタもわかってあるようだが。どちらの言葉で喋っても構わないよ』
「こ、こっちでお願いするよ」
「そうか。では単刀直入に言うと、この国を出て帝国に来ないか?」
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